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韓国ミュージカル
『あの日々』感想(3/23マチネ)
『あの日々』は
早世した国民的歌手キム・グァンソクの歌った有名な楽曲を
散りばめて創作されたジュークボックス形式の韓国オリジナルミュージカル。
多くの人に知られている楽曲を上手くストーリーの中に溶け込ませて、
青瓦台の警護員たちを主人公に、
過去と現在を行き来しながら、
20年前の「あの日」の謎が浮かび上がってくるという秀作。
2013年の初演から観客からも評論家からも絶賛を浴びた大人気作品です。
2012年と1992年を行き来する構成で、
1992年に青瓦台の警護員として出会ったジョンハクとムヨン。
自由な精神を持つムヨンと、馬鹿正直で大真面目のジョンハクは
2人で「彼女」の警護を命じられるのですが、
「彼女」と交流するうちに恋心が芽生え、
と同時に残酷な状況を知るようになって…。
92年に失踪したムヨンと彼女のことが
ずっと心の傷となっていたジョンハクが
現代で同じような状況に遭遇し、
あの日々のことを思い出していく…という物語です。
既存の有名楽曲を使ってミュージカルを作る
デユークボックスミュージカルって、
楽曲の持つ色合いだったり
本来の歌詞に引っ張られたりして
内容的に成功させるのって難しいなあと常々思っているのですが、
でもこの『あの日々』は
見事な換骨奪胎というか、
本当にまるでこの作品のために曲ができているように思わせる
編曲アレンジがとっても利いています。
時代を行ったり来たりするのが
ちょっとわかりにくいと言えばわかりにくいですが、
ジョンハク役の俳優がメガネをかけたら現代で
メガネをとったら過去というお約束設定がわかっていれば
なんとなくわかるはず。
その2つの時代のシンクロがとっても良くできていて
1幕でさらりと見せたものを
2幕でもう一度その裏側を見せたり、
現代の大統領の娘と警護員の家出を
過去の「彼女」とムヨンの逃亡に重ねてみせたり
舞台ならではの作り込み。
加えて、警護員たちが主人公なので
アンサンブルワークがパワフルで迫力満点で
見応えがあります。
韓国男優は実際に軍隊で訓練受けているから
動きに説得力がありますよね。
オム・ギジュンは今回初役ですが
スーツが似合うクールなオムギジュンが
最初は20代の設定でタンクトップ姿で登場するのですが、
そんな筋肉とか野生味を見せる場面が見慣れないので、
見ていてちょっと気恥ずかしかったです(笑)。
若い頃のムヨンとじゃれ合ったり、
図書司書の女性とくっつけられそうになって抵抗する場面とか、
演技がかわいくて新鮮でした!
そんな堅物だけど心根の温かかったオム・ギジュン演じるジョンハクが
親友に裏切られたと思って心を閉ざし
冷徹な警護部長になってしまうのですが、
最後に20年間の誤解が解けたとき、
幾すじもの涙を流しての熱演で
カーテンコールでも目が腫れたままでした。
ムヨン役のオン・ジュワンは『ニューシーズ』という作品で見た時から
チャーミングさと華があって良いなと思っていましたが、
自由な魂を持つロマンチストのムヨン役もハマってました。
笑うと糸目になるところなんてすっごくキュートです。
オム・ギジュンとも年格好が似合っていて違和感もなかったです(笑)。
この作品で一番盛り上がるのが2幕の中盤、
ムヨンと警護員たちがシャワールームで
筋肉祭りになって歌い踊る楽しい場面。
筋肉隆々の男子たちが上半身裸でムヨンもシャツをはだけると
観客のテンションがわかりやすく上がります。
なぜか人は筋肉に弱いですね(爆)
ラストは、切ないけれど清々しい後味に包まれる作品です。
2019年4月12日執筆