スター列伝・スターコラム

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略歴

キム・レウォン 

コラム① 甘え上手のプレーボーイがはまり役

97年の高校1年のときにドラマ『僕』でデビュー、映画『男の香り』では、キム・スンウ演じる主人公の少年時代を演じた。

日本では『プライベートレッスン青い体験』で、初体験相手の女子高生に自殺され、セックスに対して精神的にトラウマを抱え、それを晴らすかのように性行動に走る屈折した青年役でお目見えしている。ここで既にかっこいい青年だなあとは思ったものの、内容が内容だけに生々しくて、そんな青さにちょっと抵抗感があった。

他の役で見かけても、何か気にかかる存在だったのだが、いつもどうも暗くて重々しい、粘着質なムードが取り巻いていたのだが、その後ドラマの世界で徐々にその重苦しさがはがれてくると共に人気もブレイクしてきた。

『順風産婦人科』という当時大人気のシチュエーションコメディーへの出演から認知度が上がってきたが、多くの女性の間で「キム・レウォンっていいじゃない」との評価が出てきたのは『いとしのパッチィ』からだろうか。

女性アイドル歌手チャン・ナラを間に挟んで、キム・ジェウォンと三角関係になる役どころ。最初はチャン・ナラの友人のことが好きなのだが、けんかしていくうちにチャン・ナラが気になる存在になり、でもチャン・ナラはキム・ジェウォンといい関係になりつつあって、それを切なく見つめていく。気持ちとは裏腹に強がったことを言ってしまい、陰で切ない思いに駆られる様子は女心にぐっときた。

次に出たのが『雪だるま』だ。義理の兄に思いを寄せる女性に引かれていく金持ちの坊ちゃん役。路線としては切ない系をひた走っている。髪型を黒いストレートに戻して、実年齢よりもかなり上の成熟した男性を演じた。キム・レウォンは表情に虚無感が感じられるので、物質的には恵まれながらもどこかさめた金持ち息子の役というのがとてもハマるのだ。またこの虚無感が女性をひきつけている大きな魅力だと思う。

そんなキム・レウォンの魅力が爆発したのが、『屋根部屋のネコ』だ。一夜の過ちで同棲することになった若い男女の軽快でコミカルなちょっぴり切ないラブコメディーで、キム・レウォンが演じたのは、厚かましくていい加減なところのある司法試験を目指す大学生で、ずうずうしいけれど、チャーミングな笑顔で女に甘えるのが得意なかわいい男性。「なんてやつだ!」と思っても憎めないキャラだ。タイトルどおり、どこか気まぐれなネコのような男性像。今までの重さを脱ぎ捨て、のびのびと弾けたキャラで、しかし適度に顔に虚無感も残しながら、この上も無く魅力的な青年を体現した。

ゆるくパーマがかかった長めの髪をかきあげるしぐさや、片方の口元を上げてにやりと笑う表情、肩から腰にかけての緩やかなラインなど、しなやかさがとてもセクシー。長身の背中を少し丸めて、「かったりーな」などといいそうな気だるさがあり、それが一層セクシー度を上げている。ランニングシャツにジャージにサンダル姿がこんなに似合う男性もそうそういないだろう。

彼はこの母性本能刺激型の愛すべきキャラクターを見事に消化して、20代、30代の女性から圧倒的な支持を受け、キム・レウォンシンドロームが起きた。

映画でも『…ing』で、『屋根部屋のネコ』の延長線上にあるような、ちょっと遊び人風の大学生役で登場し、こういう適度にいい加減ないまどきの男性像がすっかりハマリ役となった。

経歴が長く、落ち着いた雰囲気があるのでもっと年かと思いきや、まだ弱冠23歳の若さである。俳優として大きくなるためにも2004年内に兵役に行くつもりなのだという。

 

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より
記事の転載はご遠慮ください

 

コラム② キム・レウォン バラ一輪を贈られて……

インタビューを円滑に進めるため、相手が喜びそうなお土産を持っていくことはあるだろうが、スターから逆に何かをもらうということはめったにない。
しかも、それが女心をくすぐる赤いバラ一輪というのは、初めてのことだった。
そのプレゼントの主はキム・レウォン。
ホテルに設定されたインタビュールームで待っていると、部屋の外からスタッフ同士、無線で連絡している声が聞こえて、「女性の記者は一名です」と言っている。
いったいなんだろうと思っていると、キム・レウォン本人が部屋に入ってくるやいなや、「遅れてすみません、どうぞ」と日本語で言いながら、一輪の赤いバラを差し出すではないか。
「おお~」、だから女性の人数を確認したのね、と合点がいき、と同時に、「おぬし、やるなあ~!」と感動した。

このときは竹島問題など敏感な政治問題が浮上していたときだったせいか、いつになく屈強なボディーガードがついていた。聞けば韓国で、スーパースターのソテジをガードしたこともある人だという。不測の事態に備えてガードにも超一流の布陣を敷いて、万全の体制で日本入りをしたのだそう。
そんなこともあり、事前に質問を提出させられていたのだが、いざインタビューが始まると、スタッフの一人から「質問表の順番通りじゃない」とチェックが入った。
それでもキム・レウォン本人が「大丈夫、かまわないよ」と取りなし、フランクなムードで話が進んだ。

この人は黙っていると、一見、暗いかなと思えるのだが、笑顔がこぼれると、それはそれはかわいい顔になる。
「実年齢よりも大人びて見えますよね」と言うと、「僕はもともと、かわいいって言われるんだけど……」と冗談めかし、その答えにはそばで聞いていたマネージャーが大いに受けて爆笑していた。

 

また通訳が訳している間、覚えた日本語や、英語を繰り返しつぶやいてみたり、そばのスタッフにちょっかいを出したり、茶目っ気がある。
内向的と言われているが、とても若者らしさを感じさせる青年だ。
そしてざっくばらんに、飾ることなく話をしてくれて、特に、
「自分の父親が家庭的な人ではなかったから、自分は、守ることを知っている温かい男性になって、いつも女性を優先して大事にしてあげられるようになりたい」
と断言するのがカッコよかった。
「まるで韓国ドラマの主人公みたいですね」と言うと、「ドラマより僕のほうが素敵……」と言いかけて、それを訳そうとする通訳の口をあわててふさいで「なんでもないです!」と照れる様子がまたかわいかった。
それから数年後、かわいらしい青年だったキム・レウォンは、すっかり大人の落ち着き
と成熟感がアップして素敵な男性になっていた。

この間『ラブストーリー・イン・ハーバード』(04年)『君はどの星から来たの?』(06年)『ミスター・ソクラテス』(05年)『ひまわり』(06年)といった作品に出演していた。特に映画の『ひまわり』では、刑務所帰りの寂しい男が、愛する人を亡くし、復讐のために自分を捨てるというハードな役どころを演じた。これほど深くて濃い演技体験は初めてで、役に入り込みすぎて撮影後もなかなか抜け出せずに苦労したそうだ。
ぐっと深みを増したキム・レウォンを前に、作品が俳優の人間性をも育てていくのだなと感じたのだった。

※2009年1月発行「恋する韓流」(朝日新聞出版)より
転載はご遠慮ください

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コラム記事「スポーツ選手から転身を図った俳優たち」

『屋根部屋のネコ』

『愛していると云って』

『ラブストーリー・イン・ハーバード』

『千日の約束』

『ドクターズ~恋する気持ち』

『マイ・リトル・ブライド』

『MR.ソクラテス』

『ひまわり』

『仁寺洞スキャンダル―神の手を持つ男―』

 

略 歴

1981年生まれ。バスケットボールの選手でしたが、怪我で断念し、バスケのCMにスカウトされたのをきっかけに高校1年のときにドラマでデビューしました。
映画デビュー作は98年の『男の香り』で、2000年には『プライベートレッスン青い体験』で青龍映画祭の新人男優賞を受賞しています。デビューからしばらくは、どちらかといえば暗くて重々しいムードの役柄が多かったのですが、シチュエーションコメディーの『順風産婦人科』への出演からイメージが変わり始め、認知度も上昇しました。大きな転換点となったのが、2003年のドラマ『屋根部屋のネコ』です。この作品で、厚かましいお調子者なのに、チャーミングな笑顔で女性に甘える憎めない男性を魅力いっぱいに演じて、キム・レウォンシンドロームが起きるほど、大ブレイクしました。
これ以降、映画でも『アメノナカノ青空』や『マイ・リトル・ブライド』など、明るくて温かみがある男性像がすっかりハマリ役となりました。
『ラブストーリー・イン・ハーバード』での正義感の強い好青年ぶりや、『君はどの星から来たの』での、田舎娘を相手に無骨な愛を表現していく演技で女性ファンの心を鷲づかみにする一方で、映画では果敢に新しいイメージに挑戦。『Mr.ソクラテス』では、ぬぼっとしながらも黙々と仕事をこなすヤクザ出身の刑事を好演して、新しいキム・レウォンの発見となりました。また『ひまわり』でも、出所して、やり直そうとする元チンピラを熱演しました。
2008年の1月には自分で芸能事務所を立ち上げ、社長業もこなしながら、ドラマ『食客』、映画『仁寺洞スキャンダル』に出演しました。
現在は兵役中で、公益勤務として図書館で仕事をしています。最近は今年8月の除隊に備えて、腹筋を鍛えるためにスポーツジム通いをしているそうです。

(2011年2月執筆)