千日の約束 – 田代親世の韓国エンタメナビゲート

ドラマ解説

タイトル	千日の約束
韓国放送年	2011年　全20話
演出	チョン・ウリョン
脚本	キム・スヒョン
出演	キム・レウォン　スエ　イ・サンウ　チョン・ユミ　パク・ユファン

【ドラマ紹介】

『千日の約束』は、若くしてアルツハイマーを患ってしまった女性と、彼女を愛しぬく男の物語。この、シリアスなテーマが、‘視聴率不敗神話’を誇る脚本家キム・スヒョンの手にかかり、リアルでありながらロマンティックなドラマになっています。

こう聞くといかにも主人公は誠実な男に思うかもしれませんが、最初は二人の女性の間で優柔不断に振る舞っていた、というところが面白いんです。
キム・レウォンは、婚約者（チョン・ユミ）との結婚が決まったため、恋人（スエ）と別れなくてはならない男ジヒョンに扮し、卑怯だと思いながらも恋人のことを忘れられず、かといって昔から家同士の関係で決められていた婚約者を振り切る事もできず……という、どっちつかずの役柄なんですが、恋人の病気を知って決断を迫られます。この、人さまからは‘卑劣な男’といわれても仕方がない状況から愛のために身を投げ打つ献身的な男性になっていくサマが見どころです。

キム・レウォンは、苦しい恋をしているゆえの苦悩、断ち切れない未練ゆえの苦悩、そして、彼女の病を知ってからの葛藤など、ところどころ、幸せな恋人同士だったころの姿が回想で出てくるものの、全般にアンニュイで、重い枷に耐えています。中盤からは、つらさを押し殺して彼女に微笑んでみせるというような別の‘忍耐’が始まるのですが、寡黙な中にも、彼女へのいとおしさと、彼女が変わっていくことへの恐れとがないまぜになった感情がひしひしと伝わってきて、男の決意と覚悟を潜ませた成熟した男の魅力を醸し出し、惹きつけられます。
冒頭から訳ありな恋人たちの逢瀬と激しい口論で幕を開けるのですが、ズバッと核心に入っていくドラマ展開でいきなり引き込まれ、秀麗かつ鋭いセリフで、悲しみ、苦悩、決してきれいごとでは済まされない大人のリアルな感情を、格調高く雰囲気のあるドラマにして魅せてくれます。
これは、決断を迫られた恋人たちを中心に、彼らをとりまく家族が２人をどう受け入れていくのかを丁寧に描いた家族のドラマ。大切な人が同じようになったら？　自分の子供がそういう選択をしたならば？２人の美しい愛に涙しながらも、様々な立場に思いを馳せ、考えさせられます。