韓流ソムリエ 田代親世の韓国エンタメナビゲート

『逆賊』は、韓国人であれば誰でも知っているほど有名な義賊、
ホン・ギルドンが主人公のドラマです。

ホン・ギルドンといえば、これまでも
『快刀ホン・ギルドン』など、何度かドラマ化されていますが、
それらはホ・ギュンという人の書いた古典小説をベースにしたもの。

『逆賊』はそれとは違い、暴君として知られる燕山君の時代に
「実在した」と言われるホン・ギルドンを主人公としたドラマです。

なので、皆さんになじみのあるギルドン像とは少々異なり、
代々奴婢の家系の子供であり、
また生まれつき人並み外れた怪力の持ち主として、
その力を正しく使わなければ天寿を全うできないという
厄介な運命を背負った人物として描かれます。

この、幼いころから心に憤怒を抱えて生きてきた
青年ギルドンの生きざまや、
人々を苦しめる統治者、燕山君との対比を鮮烈に描いて、
財産ではなく、民の心を奪っていくホン・ギルドンと
その仲間たちの戦いを見せていく人間ドラマになっています。

最初は両親をひどい目に合わせた宿敵への復讐だったものが、
義賊になり、使命に目覚めていくホン・ギルドンの姿と、
ただ泣いて世をはかなんでいただけの庶民たちが、
そんなギルドンのもと、
自ら暴政に立ち向かおうとして行くさまが感動を呼びます。

４話までは子役と父親役のキム・サンジュンがドラマを引っ張り、
５話からこのドラマが初主演となるユン・ギュンサンが
本格的に登場します。

ユン・ギュンサンは大きな体を生かし、
のっそりしたおおらかな雰囲気がよく出ています。
黙っていると陰りをおびた表情なのですが、
笑うとすごく無邪気に見えるというギャップで、
健康的で純朴でかわいいんだけど、
どこか女心を惹きつけるものがあるんですね。

一方燕山君を演じるのは
『また?!オ・ヘヨン〜僕が愛した未来〜』のキム・ジソク。
やつれとおびえでどんどん壊れていく暴君をセクシーに演じています。

また悪女として描かれることの多い王の愛妾チャン・ノクスが
実はギルドンと恋仲だったという設定も入り、興味を引きます。

ギルドンを想い続けるガリョンを演じるチェ・スビンは
ラッコのような小動物系のつぶらな瞳で、
一途で健気な思いを表現していてこの上なくかわいいです。

このドラマ、男たちの織りなすヒーローものでもありますが、
チャン・ノクスとガリョンといった女性たちも
あっぱれな生き方を貫いていくというその描き方が丁寧で秀逸です。

とにかく、序盤のキム・サンジュンから始まって、
それぞれが自身の代表作ともいえるような熱演を繰り広げていて、
その熱演の連鎖にグイグイと引き込まれます。

なにせ、キム・サンジュン、主人公の父親役なのに
MBC演技大賞で大賞を獲ったほどですから。

この作品が気に入った人は…

・復讐から庶民のヒーローへ

『快刀ホン・ギルドン』『イルジメ〔一枝梅〕』

『朝鮮ガンマン』『必殺！最強チル』