ドラマ解説

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タイトル 夜を歩く士(ソンビ)
韓国放送年 2015年 全20話
演出 イ・ソンジュン
脚本 チャン・ヒョンジュ
出演 イ・ジュンギ イ・スヒョク イ・ユビ チャンミン キム・ソウン

【 ドラマ紹介 】

イ・ジュンギが、美しきヴァンパイアに扮したファンタジー・ロマンス時代劇。

人気ウェブマンガを、『奇皇后ーふたつの愛 涙の誓い』のイ・ソンジュン監督と『パラダイス牧場』を手がけた脚本家チャン・ヒョンジュがドラマ化。宮廷に君臨し、歴代の王をも意のままに操ってきた吸血鬼と、望まざるうちに自らも吸血鬼になってしまった男が王の孫と共に闘っていくドラマです。

ヴァンパイアのクィ(イ・スヒョク)が力をふるう“架空の”朝鮮時代、ソンヨル(イ・ジュンギ)は、世子の右腕として仕えていましたが、クィの師匠から「お前が唯一クィに対抗できる男だ」と使命を託され、ヴァンパイアとなります。そうして、クィのせいで命を奪われた世子(イ・ヒョヌ)や婚約者(キム・ソウン)の敵をとらなければいけないという恨みを背負って120年間生きてきましたが、幼いころの記憶がなく、物心ついた時から男装しているヒロイン(イ・ユビ)に出会って、何かと助けていくうちに惹かれ合っていきます。

吸血鬼といえば、女、首すじ、血、といったエロチシズム漂う要素をどう美しく描けるかがポイントになってくるわけですが、このドラマではヴァンパイア役のふたりが、とにかく妖しく美しい! 「その魔性の美しさに魅入られてください」という感じです。

元々、しゅっとした目が特徴的なイ・ジュンギが、流し目のような眼差し全開で、色っぽく艶っぽい。初めて彼を見たヒロインも「女の人よりも美しい。このソンビ様」と驚きます。120年も生きているから、いろいろ冷めていて、ツンツンで、物事に動じないのですが、亡き恋人にそっくりな女性に出会ってからは愛の感情にボロボロになる。そのギャップもいいですね。

もう一人のヴァンパイア役のイ・スヒョクは、妖しい美しさを見せ、この世のものとは思えません。ちょっとくぐもった低い声も妖しさをかきたてていて、まさに魔性の美。イ・スヒョクは、モデル出身ということもあってか、どうもアンドロイドっぽくて、人間味を感じないなと思っていたのですが、『ナイショの恋していいですか!?』、『一理ある愛』とを見ながら「いいな」と思い始め、本作で止めを刺されました。夜の帝王のカリスマ性が光っていて、彼の本来もっているであろうSっぽさも全開です。

そんなヴァンパイア同士の対決に世孫も加わっていくのですが、世孫役のチャンミンは、髭を生やしているので最初「あれ? 誰?」と思ったくらい、役に溶け込んでいます。ドラマを見た彼の友達も気づかなかったほどだそう(笑)。表向きは遊び人を装いながら心根は確固たる貴人という役どころで、表に出す顔と隠し持つ本心、状況に応じて変わる心情など、多面的な演技を好演しています。

ドラマの前半は、ソンヨルとヒロインとのキュンとくる様子が描かれファンタジー・ロマンスの雰囲気が強いですが、その後はクィを倒すための秘策が記されている「チョンヒョン世子備忘録」という書物の中身が徐々に解き明かされていきます。

士(ソンビ)というのは文学を好む学者のことで、ドラマのタイトルは、吸血鬼なので昼間が苦手なソンヨルのことを示しています。


ちなみにドラマの裏設定?も楽しめる

架空の王が治める朝鮮時代という設定なんですが、これまで韓国の歴史ドラマを見てきた人なら「絶対この人をモチーフにしている!」というのがわかるところがおもしろいです。東方神起のチャンミン演じる世孫イ・ユンは、父親が非業の死を遂げているところから、おなじみのイ・サンこと、22代王・正祖がモデル。おまけにドラマ『イ・サン』で21代王・英祖を演じていたイ・スンジェが、ユンの祖父である“ヒョン祖”役なので、「裏『イ・サン』か?」と思ってしまうくらいの気の利いたキャスティングです。

ドラマの冒頭で描かれる120年前は16代王・仁祖の時代。主人公ソンヨル(イ・ジュンギ)が仕えるチョンヒョン世子のモデルは、父である仁祖に殺されたのではないかと言われている悲運のソヒョン世子で、朝鮮王朝史上の“二大悲運の世子”がモデルになっていると見ることができます。

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