スター列伝・スターコラム

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略歴

イ・ビョンホン体面記

2000年5月

最初にイ・ビョンホンにインタビューしたのがこの時期。兵役を終え、ちょうど『JSA』の撮影に入っている頃だった。

指定の場所は韓国でも指折りの最高級ホテル、リッツカールトンホテルのカフェ。落ち着いた雰囲気の場所で今日はこのあと、通っている大学院の卒業論文を提出する前の資格試験があるということで、我々に与えられた時間は2時半から3時20分まで。しかし時間になってもビョンホン氏は来ない。そこへマネージャー登場。「今本人が渋滞に巻き込まれてるようで少し遅れます。ごめんなさい」とのこと。しばらくして早足で颯爽と現れたイ・ビョンホン氏。浅黒く焼けた肌にがっしりと太い腕周り。着やせする方かも。開口一番「遅く来た上に時間がないということまで言ってほんとにごめんなさい」と恐縮していた。そんな雰囲気の中でインタビューは始まった。

このときは俳優になったきっかけから、演技者としての自分のスタイルを模索している話などと共に、撮影中の『JSA』がシナリオが素晴らしいので自分の中で一番大きく残る映画になるだろうと今から感じていると熱く語ってくれた。

そうしているうちに時間は既に3時25分を過ぎた。そこでビョンホンさんは「僕ほんとにもう行かなきゃければいけなんですが、本当に申し訳ないから、(と、マネージャーの方を見て)15年来の付き合いの友だちだから僕の代わりに僕のこと答えてくれるかもしれないからまだ続きの質問があったら彼に聞いて下さい」と振ると、マネージャーさんは「えー俺も予定があるんだよ」と困った表情。ビョンホンさんはマネージャーさんの膝を叩いて「こんなに悪いのにお前、なに忙しい振りしてるんだ」。そこで私が「ほんの10分だけだから」と言うと「じゃあ、まあ10分ぐらいなら」と了解してくれたマネージャーさん。

すかさずビョンホンさんが「いいや、1時間でも大丈夫だから(笑)。じゃあほんとに済みません」と言ってさわやかな風のように去っていったのだった。残された(笑)マネージャーさんによれば今日はインタビューが和気あいあいとしていて彼がすごく楽しんでいたから良かったですと言ってくれた。

 

2001年4月

その後、自ら手ごたえがあると感じていた『JSA』が本人の予想通り大ヒットして、イ・ビョンホンを取り巻く環境は変わった。映画でも興行が保障できるスターとして認知され、続く『バンジージャンプする』、『美しき日々』がヒットして世の中すっかりイ・ビョンホン旋風が吹くことになった。

そして『JSA』のプロモーションでソン・ガンホと共に日本を訪れたのがこのとき。韓国映画ブームが始まったとは言われていたが、トップスター二人を招いているにもかかわらず、オフィスの一室での囲み記者会見だった。つまりその程度で貴社が入ってしまえるほどの規模だったのだ。今から思えばこのようなこじんまりした感じが懐かしくすらある(笑)。ここでのイ・ビョンホンは自信感が漂っていて、身にまとうオーラが違って見えた。

2004年2月

2002年に『純愛中毒』に出演、そして2003年には『オールイン』で視聴率50%近くをたたき出し、ドラマと映画を行き来しながら多彩な魅力を振りまき、大衆的な人気を得て国民スターへの道をひた走っているイ・ビョンホンが、日本のファンとの交流イベントを開いた。

このとき私はイベントの司会役だったので、前日のリハーサルで顔を合わせたのだが、イ・ビョンホンのほうから「アンニョンハセヨ」と気さくな感じで声をかけてくれて、すっと手を差し出し、挨拶をすると、「あっ、前に会ったことが・・・」とおぼろげながらも覚えていてくれた。

本番で歌う歌の音あわせをしていると、カラオケとどうもあわせにくそう。『二等兵の手紙』は十八番の曲だそうだが、いつも歌っているカラオケと違うのでとまどっている感じだった。「日本の人はこの歌知ってるかな」とも質問が。「みんな『JSA』見てるからわかりますよ」との返事に安心した様子。歌い終わって拍手をすると「カムサハムニダ」と茶目っ気たっぷりにお辞儀をしてくれた。

そしてなんとこのリハーサルにはソン・ヘギョも顔を出し、迷惑にならないようにと、遠くのテーブルにマネージャーを伴って座り見守っていた。

ビョンホンは「愛する人が出来ました」というナレーションも読むことになっていてそのリハーサルもしたのだが、そのときに「愛する人が出来ました、ソン・ヘギョという…なーんって!」などと小声でジョークを飛ばし座を沸かせていた。そう言われた当のソン・へギョもそばのマネージャーにからかわれテレながらも嬉しそうだったのがかわいかった。いやあ本当にラブラブなのねと微笑ましい場面であった。

そして本番。スーツ姿で颯爽と現れたビョンホンは昨日までの気さくな雰囲気とは打って変わって全身から‘スター’のオーラが発散され、近づきがたい雰囲気に。うっすらと蓄えたひげがダンディーで、セクシーだった。

そして今回も思ったのが、やはりこの人は頭がいい。質問すると少し間をおいて、あの低音の美声で気の効いたいいことを言うのだ。

 

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より
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