スター列伝・スターコラム
ユ・オソン
『友へチング』で大ブレイクしたスター。1980年代の釜山を背景に裏街道をさまよった高校時代の同級生たちの友情を描いたノスタルジックノワール映画で、ユ・オソンは情に厚い男気のあるやくざを熱情ほとばしるがごとく演じた。続く『チャンピオン』でも貧しいボクサー役で、どちらかと言えば男性客からの共感を得るスターである。
舞台出身の個性派俳優。眉毛から立派な鼻にかけての表情がものすごく豊かで、ふてぶてしい面構えである。ごつい顔立ちのせいか、チョン・ウソン主演でヒットした青春映画『ビート』の中でのワルの役に代表されるように、チンピラややくざといった社会の非主流派の役が多いが、どこか間が抜けたようなとぼけた味が、暖かさや切なさを表現する強力な強みとなる。主役、助演、剛、軟、何をやらせても男気と熱さが感じられる人だ。
私が最初に見たのがベスト劇場の『ホリディ』という単発ドラマの中の脱獄犯の役で、他を圧倒する強盗犯のカリスマの中に哀しさ、切なさが滲み出るという演技が抜群にうまくて、この人は誰?と大注目してしまった。
92年にミュージカルで舞台デビュー。94年にはチェ・ジンシルがイメージチェンジを図ってノーギャラで出演することが話題になった映画『私は望む、私に禁じられたことを』の新人俳優募集のオーディションに合格して映像にも顔を出すようになった。この映画でユ・オソンが演じたのははチェ・ジンシル扮する怖い女性に盲目的に仕えるしもべ役。いつもチェ・ジンシルの命令に忠実に従うのだが…、最後の、顔をくしゃくしゃにした、無防備な泣き顔は胸がいっぱいになった。この人、一見強面なのに子供みたいな泣き顔になるので、なぜか母性本能をくすぐるのだ。
そしてハン・ソッキュとキム・ヘス主演の『ドクターボン』では、えっこれがユ・オソン?と思えるようなコミカルな演技でさすが芸達者なところを見せている。
ずっと気になる助演の位置にいた人であるが、98年にはテレビドラマ初出演にして初主演を果たした。『明日に向かって撃て』の芸能マネージャー役である。優秀な兄と比べられ厄介者扱いを受けて育った男がひょんなことから歌手のマネージャーになり、人の裏切りや挫折を経験しながら成功していく姿を描いたこのドラマで、踏まれても踏まれても立ち向かっていく男を演じて好評を得た。こういう雑草魂がとても似合うのだ。
実はユ・オソンの主役起用については反対の声があったというが、監督と作家がどうしても彼でと強硬に主張したのだという。
そして映画でも99年の『スパイ リ・チョルジン』では堂々の主役。北のスパイが任務を帯びて南に潜入するが、カルチャーギャップにとまどいながら任務を遂行しようと悪戦苦闘するというヒューマンドラマ。内容的には非常に切ない後味だが、ユ・オソンの一見ハードでどこかコミカルという持ち味が十二分に出ている。
チャン・ジン監督いわく、ユ・オソンはとてもアグレッシブで、こんな演技はどうだ、あんなのはと次から次へとアイデアを出してくるのだそうだ。ここでも最初はユ・オソンを主役にして大丈夫かと反対されたそうだが、チャン・ジン監督が絶対彼でやりたいと言い張った。ユ・オソンは作り手にそこまで思わせる魅力の持ち主なのだ。
続く『アタック・ザ・ガス・ステーション!』でもコミカル担当で、恐いんだけどおかしいというお得意キャラを楽しんで演じていた。やはりあの自由自在に動かせる眉毛演技が秀逸でしょう。笑うとかわいくて、すごくチャーミングな俳優である。
※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より
記事の転載はご遠慮ください
略 歴
現在はドラマで『張吉山』に出演中です。(2004年7月)