スター列伝・スターコラム

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略歴

クォン・サンウ

コラム① 素晴らしいのは身体だけじゃない!

若手ナンバーワン人気のモムチャン(=最高の身体つき)代表選手。鍛えられた筋肉隆々の体つきは思わず、「おおー」と歓声が上がってしまう。それでいて顔立ちはすっきりしており、特に頬からあごにかけてのラインが美しい。口元もきゅっと引き締まっていて清潔感に溢れている。モデル出身だけに立ち姿も美しく、そのりりしさは既に演技デビュー作の『火山高』のときから溢れていた。出番は少なかったが、このいい感じの生徒会長は誰?としっかり目が行った。

演技へのコンプレックスを身体を鍛えることで解消しようと努力したとインタビューなどで語っており、まるでそれだけが売りかのごとく彼の出演作では脱ぐシーンが出てくるのだが、彼の魅力は身体だけじゃない。なんといってもいいのは、優しさがにじみ出てしまう、情に溢れる眼差しだと思う。瞳が熱っぽいというか、ふっとこぼれるその優しい眼差しでググッと来てしまうのだ。

父親を亡くし、母親一人の手で育ってきた幼少時代。かなり苦労した青少年時代だったことも彼の優しさと無関係ではないだろう。だから大切なものをちゃんと大切にしそうな暖かな雰囲気がにじむのだ。

ドラマではコミカル路線が多く、『ただいま恋愛中』でチェリム演じるヒロインの弟役だったが、勉強嫌いだが、顔だけはいいというちょっとちゃらんぽらんなところのある男を、コミカルに、ふてぶてしく、憎めない愛嬌のある男性に演じて、一気に注目されるようになった。

その当時から‘花美男’といわれていたものの、彼の場合コメディー演技をやると三角眉になって美青年とはちょっと言いがたい印象になるので、私の中では実は「微妙だなあ」と思っていたのだが、‘微妙’‘微妙’と様々な彼を見続けているうちにすっかり「素敵!」とはまってしまった。

特にドラマの『太陽に向かって』がつぼだった。海軍の将校役だけに海軍の制服姿が凛々しく、おまけに一目ぼれした女性に向かって不器用なまでに実直に愛に突き進む姿が好ましかった。生き方に対しても、恋に対しても真っ直ぐに向かう姿勢や、幼い頃に両親を亡くし、親代わりとなって妹を育てたという妹思いの好青年ぶりが、表情のふしぶしからものすごく伝わってきた。仕事をさせればタフで頼りになるけれど、情に厚く、もろい部分がとっても人間味に溢れていて、かわいくて、応援してあげたくなる人だなあと母性本能が刺激されるのだった。

そして『同い年の家庭教師』はふてぶてしさ全開のやんちゃなキャラで、大成功。成熟した大人の男性というより、まだどこか、かすかに青い、未成熟な男の魅力とでもいおうか。また笑うと目の下の頬の筋肉がふっくらと膨らむのがこの人の特徴。どんなにふてぶてしい役をやろうと、このシャイな感じがにじみ出るクォン・サンウな笑顔にやられてしまうのだ。

そんな彼も御曹司を演じる日がこようとは…。『天国の階段』では大企業の御曹司で、海外留学をし、ピアノなども弾いてしまう、ハイソなお坊ちゃま役。愛する女性を追いかけてひたすら走り、求め、激しくその愛を貫いていく。微熱を帯びたような瞳をしているので、愛にのめりこむ演技をさせたらきっといいだろうなあとおもっていたら、やはり抜群にいい!40%を超える視聴率も彼の魅力ゆえと言われ、「クォン・サンウのためのドラマ」と呼ばれたほどだった。

同時期に公開された『マルチュク通り残酷史』は、恋もけんかも奥手な初心な高校生が苦い経験を通して成長していく様子を描いた青春物。背中を丸め、いかにもちょっと気弱な高校生になりきっていて、その演技力はやっぱりモムチャンだけではないと思わせるに十分だった。

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より
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コラム② シャイな茶目っ気王子 クォン・サンウ

8月5日は『天国の階段』や『悲しき恋歌』などの作品でおなじみのクォン・サンウのお誕生日。ということで、当日はもちろん、誕生日を挟んで東京と神戸で4日間のバースデーイベントが行われた。私はそこで司会をしたのだが、改めてクォン・サンウって本当に愛すべき人だなあと感じたのである。

性格的にせっかちらしく、深く考えるというよりは、その場で思いついたことをさっとやってしまうタイプなのだが、その‘さっと’の内容が光るのである。

その本領が発揮されたのは、抽選で選ばれたファンがカードをひいて、そこに書かれていることをサンウさんと一緒にやるというコーナーだった。内容は事前のアンケートで集まった、ファンがしてほしいことベスト10が入っていたのだが、握手とか、目を見つめ合って10秒とか、ハグとか2ショット写真とか、手をつないで散歩などなど。これを彼は、思いっきりドラマチックに自ら演出してやってくれたのだ。

例えば、ハグの場合、じゃあこれは『天国の階段』風にやろうといって、ファンを後ろ向きに立たせて、そこに駆け寄って腕をとって振り向かせ、「行かないで」と言ってギュッギュッと抱きしめるという感じ。大好きな人にこんなことをされたファンはもう失神寸前で、腰が抜けてへたり込んでしまっていた。こんな感じで、2ショット写真を撮る人とは、普通じゃつまらないからといきなりファンをお姫様抱っこしてポーズを決めて見せたり。持ち上げられたファンも「ええっ!」とビックリ仰天。でも思いっきりやったあとは、自分もやってしまったことに照れながら、ヘナヘナになってしまったファンに「大丈夫でしたか?」という風に礼儀正しくいたわったりして、この強引さとやさしさの緩急が乙女心をわしづかみにしていた。

思ったことをそのまま口にしてしまったり、気持ちが表情に出る正直な人なので、これまでも発言の揚げ足を取られたり、またスキャンダルにもあったりして、ファンにとっては気をもむことも多い人なのだろうが、子供のように無邪気で茶目っ気があり、なおかつシャイに微笑む彼を前にすると、みんなその魅力に抗えなくて、やんちゃな子を見守る母親のように応援に力が入ってしまうのだと思ったのである。

※2010年10月号「私の時間」(ヒロ・コミュニケーションズ)より
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略 歴

クォン・サンウは1976年生まれ。漢南(ハンナム)大学の美術教育学科出身。軍を除隊したあと、モデルを経て、オーディションで『火山高』の役を射止めて演技者デビューしました。当時から見事に鍛え抜かれた体が特徴で、韓国の‘モムチャン’ブームを先導する存在です。
大きな注目を集めるきっかけとなったのは2002年の『ただ今恋愛中』というドラマで、お調子ものの憎めないプレイボーイを演じ、一気に主役級のスターへと昇格しました。2003年、不良高校生に扮した映画『同い年の家庭教師』が大ヒットし、大鐘賞、ペクサン芸術大賞で新人男優賞を受賞しました。続く『マルチュク青春通り』もヒットし、ドラマ『天国の階段』での恋人をいちずに愛しぬく御曹司を演じたのが決定打となり大ブレイクしました。2004年には大鐘賞、ペクサン芸術大賞、青龍賞の3つの大きな賞で人気スター賞を受賞したほどです。
その後も『悲しき恋歌』『美しき野獣』『青春漫画』『宿命』『バッド・ラブ』『シンデレラマン』など、ドラマや映画に精力的に出演する一方、マネージャーに脅迫されていたなどのスキャンダルに見舞われたり、女優のソン・テヨンと結婚したり、また車での当て逃げ事件を起こしたりと良きにつけ悪しきにつけ、大きな話題を振りまいてきました。
今年はBIGBANGのTOPらと共演した学徒兵たちの悲劇を描いた映画『戦火の中へ』が300万人を超えるヒットを記録し来年2月の日本公開を控えています。また10月から女性大統領を作り上げるという人気漫画を原作にした話題のドラマ『大物』に出演中です。(2010年10月)