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カン・ジファン  

コラム① 掘れば掘るほど面白い人

カン・ジファンという人は愛すべきキャラクターの持ち主である。
彼に接したことのある人ならみんなそう思うに違いない。
そもそも彼をいいなと思ったのは、ドラマ『がんばれ!クムスン』(05年)だった。
情のかけらもなさそうな医者がシングルマザーに出会って恋するかわいい男性になり、やがて、人間としても大きく成長していく姿は、面白くてせつなくて、実に魅力がいっぱいだった。
ドラマ自体も、なんていいドラマなんだろうと、終わったあとにテレビに向かって拍手してしまったくらいに感動した。それで、仕事でかかわりの多い衛星劇場に「ぜひ、放映してください」とお勧めし、そのころから、ゆくゆくはカン・ジファンのファンミーティングを企画できたらいいなと思っていた。
そして一年後、それが実現したのである。
彼は、初めて日本のファンに会うのでいろいろ準備をしたかったらしいが、ちょうどドラマ『京城スキャンダル』(07年)の撮影中だったために「超」が付くほど多忙で、あちらの事務所のファンミ担当者も、「われわれもなかなか彼と話ができない状況なんです」と言うほどで、ファンミの打ち合わせも、カン・ジファンが撮影現場に移動中、ジファンと担当者の双方が高速道路の路肩に車を止めて、そこでようやく数分話ができたというくらいだったそう。
来日当日も朝方三時半まで撮影し、そのまま空港に来た。
着いてすぐに午後はずっと取材攻め。疲れるだろうからと広報担当者が休憩を入れながら進めていたが、「取材者の時間が短すぎて申し訳ない。僕は休憩しなくていいから、その分の時間をあげてください」と自ら申し出る一幕もあった。
率直で飾らない面白いトークができる人だとは思っていたが、ファンミ当日は更にテンションが上がっていて、ノリノリのエンターティナーぶりを発揮。
ミュージカル出身だけあってステージ上で客との呼吸をとるのが上手で、こちらもびっくりするくらいのテンションで、最高に盛り上げてくれた。

ファンミ開始直前の記者会見のときも、彼が「カメラマンの皆様にお願いがあります。あのー、フラッシュなんですけど……」と言い出すので、てっきり、「あぁ、登場のときにあまりフラッシュ焚くと目がパチパチして見にくいから焚かないでくれということなのかな」と一瞬誰もが思ったところ、
「バシバシ焚いてくださーい。気分がいいですから!」
というので、取材陣は一堂大爆笑。
冒頭から両手を広げて満面の笑みで登場するし、派手なパフォーマンスをしたかと思えば、えっ、そこまで? と思うような率直なトークをしてくれたり、‘かっこいいのになぜか笑える’というちょっと他の韓流スターには見られない独自の個性が炸裂していて、その巧まざるユーモアぶりが最高だった。
かといって、決して‘オレがオレが’と前にでてくる人ではなく、謙虚で、そのへんのバランスがいい。
とにかく、掘れば掘るほど面白い人で、もうずーっと話を聞いていたかったくらいだ。この人は人間が好きなのだ、と思った。
彼に会うと、みんなが彼の味方になってしまうだろう。
前日までは、「いろいろ準備してきたかったけど、撮影中でまったく時間がとれず、申し訳なくて心配だ」とこぼしていたのだが、なんのなんの、十分ですというか、これ以上何をしてくるつもりだったんだと突っ込みを入れたくなるほどの歌の楽しいステージは圧巻だった。
もっとも彼は役にかなり入り込んでしまうタイプらしく、そのときちょうどプレイボーイの役を演じていたので、その影響を大きく受けていたかもしれない。
そして特筆すべきは、カン・ジファン事務所がお客様全員に、彼が出演したドラマのポスターを四枚組みでプレゼントしたことだ。韓国からデータでポスター写真をもらい、日本で印刷し、そしてきちんと筒に入れて差しあげたいという先方の希望に沿って、日本で筒を人数分調達した。
加えて、筒の上に貼るカン・ジファンの名前のロゴ入りのシールもちゃんと先方が用意してきた。もちろんこれに関わる料金は全部韓国持ち。手間もお金もかけたファンへのプレゼントだったので、やるなあと感心した。
こういう部分を見ても、カン・ジファンは、彼自身の人柄もいいが、心あるスタッフに恵まれているのだなあと思った。

※2009年1月発行「恋する韓流」(朝日新聞出版)より
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コラム② 素直なぶっちゃけ屋さん カン・ジファン

俳優にはそれぞれの美学があって、つらさやしんどさを自分の中におさめてファンには微塵もそんなことを感じさせないのを良しとする人がいるかと思えば、その時々の心情を素直にぶっちゃけていく人もいる。『がんばれ!クムスン』で日本でも大人気となったカン・ジファンは、わりと自分の弱さも見せてファンと感情を共有するタイプの人である。

例えば、彼が日本を巡る旅番組の中で、「実は決まっていたドラマに出られなくなって、今気持ちがとても沈んでいます」…ということをカメラの前でしゃべったり、昨年初めに、所属事務所を辞めたことで問題になった時も、自分の今の心境をファンに伝えるために、お酒を飲んで泣きながら自分の苦悩する心情を吐露して、それをVTRに収録してファンミーティングで見せていた。常日頃から、「今、若いスターたちが大人気で僕も大変です」とか、「ほかの俳優を好きにならないでね」「僕だけを見て!」などなど、冗談めかしてはいるが、かなり本音でお願いしているのが感じられたりして、実に素直なぶっちゃけぶりなのである。また昨年の10月から11月にかけて日本で「カフェ・イン」という韓国の創作ミュージカルを上演して23回公演を演じきったのだが、記者たちを前にしたゲネプロでは、顔がこわばり、ありありと見て取れる緊張ぶりで、見ているこちらも緊張してしまうほど。この時も、その後の囲み会見で「みなさん拍手も笑いもないので恥ずかしくて死にそうでした…」とこぼしていました。

彼くらいの人気スターともなれば、ファンにしてみれば本来は手の届かない人なのだろうけど、この、まるで家族のように弱音を吐いたり悩みごとを言って、それを聞いてあげる…という関係性があるので、みんなきっと彼のことを身近な青年のように感じていることと思う。そうして、また彼のファンが増えていくのである。

 

※2011年2月号「私の時間」(ヒロ・コミュニケーションズ)より
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