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略歴

リュ・シウォン

コラム① リュ・シウォン その存在が周りを癒すプリンス

『美しき日々』でイ・ビョンホンの義理の弟役で、一人の女性を巡って火花を散らすソンジェを演じた。育ちがよさそうな優しそうな青年で、しかも母親思いなところに、見ていくうちに「この人いいわあ」とじわじわとファンになった人が多いのでは。
第一印象は、すっきりとは言い難い厚ぼったい顔のお兄さん。でも韓国ではとっても人気があると聞かされて「どうして?」と思った人の一人であるが、やはり見誤りであった。歌手、俳優、MCと何でもこなすオールラウンドプレーヤーで、ただ黙って歌っているときにはそれほどの魅力を発揮しているとは思えなかったが、この人はしゃべり出すと人なつこい微笑みとともに何とも言えない良い雰囲気が滲み出るのだ。やはり、目尻の下がり具合がチャームポイントだろう。年を経るごとに下がっていってるような気がするが、その目尻にしわをいっぱい寄せて微笑まれると「全て許す!」といった感じになる。鼻にかかったような低音の甘い声も魅力に拍車をかけている。

1994年KBSドラマ『フィーリング』でデビューして以降ずっと、感じの良い心優しい男性を演じ続けてきた。時には金持ちの2世だったり、また時には貧しい孤児だったりと背景は異なっていてもリュ・シウォンのソフトな温かさはいつも健在だ。2000年初めを50%突破という高視聴率で飾ったMBCドラマ『真実』でも彼のそんな魅力は炸裂していた。『真実』での役は国内でも10本の指に入る大財閥の御曹司。しかしそんなことを鼻にかけることもなく誠実で、チェ・ジウ演じる貧しい家の娘と恋に落ち、周りの反対も何のその、何があっても彼女を愛し続けるという男性なのだ。だいたい既に27歳(満で)だというのに大学生の役をやっても何の違和感もないというのはすごすぎる。

98年にヒットした『この世の果てまで』でも、孤児のキム・ヒソンを何があっても見守り続け、彼女が不治の病になっても結婚するという女性にとっての理想の男性を演じていた。こういう役を、「この人ならそうしそうだよね」と説得力を持って演じられる人はそういない。タフガイのヒーローというわけでなく普通っぽいところが親近感を抱かせる。ひと頃の織田裕二がこんな感じだった。ちなみに『真実』では当初事故で死ぬことになっていたのに視聴者からの「死なせないで」という強い希望で生き続けることになった。

99年のKBS『折り鶴』でも、カーレーサー役の彼はレース中に死ぬはずだったがこれも「死んじゃいや」の声多く、死なずに済んだという。リュ・シウォンは何度も視聴者によって命拾いをしているタレントなのだ。

レーサーといえばリュ・シウォンは8年のキャリアを持つカーレーサーでもある。96年の初めに国際カーレーシングライセンスを取得し正式なレースにも何度か出場しているという。とにかく車が大好きでドラマの撮影に行くにもマネージャーでなく、自ら運転して行くこともあるらしい。だから『折り鶴』はまさに自分のためのドラマと思ったそうで、リュ・シウォンのりりしいレーサー姿とドライビングテクニックが楽しめる。

彼の実家は安東にある由緒ある名家だそうで、イギリスのエリザベス女王が韓国に来たときには彼の実家のある名門地域を代表してリュ・シウォンがホスト役に抜擢されたという。華やかな王子様風のデザインで有名なファッションデザイナー、アンドレ・キム氏の衣装を着て接待に務めるリュ・シウォンの姿は彼のお料理ブックの中で見ることが出来る。ちなみにこのお料理本はリュ・シウォンの小さい頃の写真なども載っていてファンは必見だ。

リュ・シウォン体面記
●2000年5月
最初にインタビューしたのがこの年。『真実』が大ヒットに終わって次回作ドラマの準備中というころだった。
場所はアックジョンドンのトサン公園前のおしゃれなカフェ『パパス』(注:今はもうないです)。我々が先について待っているとリュ・シウォン氏が登場。少し遅れたのを気にして息せき切ってお辞儀しながら入ってきた。バイクで来たらしく皮のドライバーズ手袋をして、目出し帽をかぶり、これからジョギングにでも行くかのようなスポーツパンツにトレーナー姿。何気ない格好なんだけど背が高くて顔が小さいからすらっとかっこいい!ドラマ『真実』では後半ちょっとぷっくりしている感じも受けたが実物は全然太ってない。スマートだ。チョと安心(笑)。入って座るなり、「君たちは何を頼みますか?」といって自らてきぱきとウェイターにオーダーしてくれた。結構仕切り屋である。しかも「これからこんなようなことを聞いていきますね」とインタビューの前説明をし始めた段階で、もう答え始めるし、「おいおい、まだ聞いてないんだってば…」。かなりのせっかちでもある(笑)。

俳優になった経緯や新しく計画しているドラマのこと、こだわり屋の完璧主義者なところなど、一つの質問に具体的にたくさん答えてくれるので予定のインタビュー時間はあっという間に過ぎ、ここでもう次のユン・ソナさんのインタビュー時間となってしまった。「あーまだ聞きたいことがあるんだけど…」と時計を見ながらいうと「ソナ?後輩だし親しいからマネージャーに電話して言えば大丈夫だよ」といって実際「タレントのリュ・シウォンです。僕が15分来るのが遅れてしまったので取材時間が伸びてしまってるんですが、待っててくれますか?済みません」と代わって電話に出てくれた。なんていい人なんだ(笑)。

そしてなんて楽しい人なんでしょう。リュ・シウォン氏はたとえ話が上手で、それを臨場感たっぷりに身振り、手振り、表情豊かに話すので、インタビュー現場は笑いが絶えなかった。まさにサービス精神旺盛なエンターティナーだ。でもすごく優しい口調で甘い声なのであれだけしゃべっても決してうるさく感じないのがすごい(笑)。愛と車のことを語らせたら話が止まらなくなるところもご愛敬。目尻を下げて微笑む必殺の笑顔も炸裂。魅力いっぱいの生笑顔を前にしてこちらも思わず顔がにやけてしまいました。「気になることは全部聞けましたか?」と言いながら、最後に、わざわざ人に買いにやらせてくれたという2枚目のアルバムと料理ブックを手渡され、更になんていい人なんだと株が上がりまくりの1時間であった。

 

●2003年11月
その後、インタビューの中で語っていた新ドラマは『秘密』というタイトルで2000年9月から放送された。結局相手役はキム・ハヌル、ハ・ジウォンになっていたが、彼自身のイメージチェンジは正直「うーん???」といったところ。やっぱりリュ・シウォンは好青年が似合ってしまうんだなあ。
そしてソ・ジヨンという歌手の恋人も出きて、思う存分に彼女に優しくしてあげているんだろうなあと密かに思っていた頃、再びインタビューする機会があった。

ちょうど彼がMCを務めている『味対味』という、日本の「どっちの料理ショー」の韓国版の番組だ。その収録スタジオのそばで話を聞いたのだが、3年前にあったときよりもさらにスマートに、かっこよくなっていてびっくり。やはりこの人は実物に会わなければその魅力の半分しかわかったことにならないなと再確認したのであった。

このときはドラマの『秘密』や『美しき日々』について話を聞き、実はもとの設定ではリュ・シウォン演じる男性とチェ・ジウ演じるヒロインが結婚するはずだった…と聞いて驚いたのを覚えている。

インタビューの端々から伝わってくるのは、完ぺき主義なだけになんでも自分でやらないと気がすまないというところ。なので、ホームページの管理も自分でやっているという。自分でしっかりと様々なことを判断し、律せられる人なのだ。

 

●2004年1月
日本でもNHK‐BSで放送されていた『美しき日々』が架橋に入り、リュ・シウォンへの注目度が高まっていた。
2003年の11月には本人も実感があまり無かったようだが、その後取材依頼が急増したそうで、「突然どうしたんだろう」と本人も驚いているほどだった。

 

●2004年4月
So-netチャンネル749(注:現在のアジアドラマチックTV)の主催でリュ・シウォンの日本のファンとの交流イベントが行われ、初の公式来日となった。特に今回は日本のファンを前にして気合が感じられ、一層素敵だった。体全体からにじみ出る柔和なオーラがキラキラ輝きながらふわふわと彼の周りを取り巻いている感じ。韓国では‘プリンス’と呼ばれているが、まさにそうした気品ある立ち居振る舞いで、見ているだけで幸せな気持ちになってくるというか、ちょっといないタイプである。実際にリュ・シウォンの美しさを知れば、それを多くの人に伝えなくてはという使命感にすら駆られてしまう。だってあまりにも画面と違うから・・・(笑)。 そしてトークショー本番でもさすがMCの達人だけあってジョークを交えながら当意即妙の受け答えに会場は大喜び。
率直で、正直に、自然体で話をする姿勢にファンは大喜びだった。

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より 記事の転載はご遠慮ください

コラム②女性の心を離さない貴公子

限定二百五十人。
今やどんな大舞台でも満杯にしてしまうほど日本でも多くのファンを持つリュ・シウォンが二〇〇四年、初の公式来日したときのイベントの人数だ。
このときはスカパー!のSo-netチャンネル749(現在のアジア★ドラマチックチャンネルSo-net)の招聘で来日し、彼の主演ドラマ『その陽射が私に…』(02年)の試写会トークイベントが開かれたのだ。
リュ・シウォンとはそれまでに三度インタビューをしていたのですでに顔なじみだった。
今回はイベントの司会を務めることになり、ご挨拶すると、「いつも取材してくれてありがとう」と泣かせることを言ってくるではないか。
また「何度も会っているのに写真を撮ったことがないから一緒に撮りましょう」なんてリュ・シウォンの方から言ってくれたのだ。
この人は、こういうところが一度会った人の心をつかんで離さない。
イベント自体は彼お得意の、ジョークを交えながらお客を喜ばす話しぶりに会場中が
酔わされた。それでも本人的には日本のファンを前にして、ちょっと緊張していたらしい。でも交流会が上手くいって本人もほっとしていた。
ところで、このとき私の母が実家の静岡から上京して来ていた。
私の影響で早くから韓国ドラマのファンだった母親をイベントに招待していたのだが、私の控え室の隣がリュ・シウォンの控え室だったこともあり、本番前の打ち合わせをするときにちらりとリュ・シウォンに母を紹介した。
すると彼は座っていた席をスッと立って、「お母さまですか?」と言って手を差し出し、うちの母の手を握って、「いつも娘さんにはお世話になっています」と言ってくれたのだ。
そんなうれしいことを言ってくれるなんて……。
当然のごとく母は感激し、舞い上がって、いつまでも彼の手を離さなかったので、「ほら、いつまで握ってるの、離して、離して」といいながら私も思わず笑ってしまった。

その三カ月後、今度は済州島でのファンイベントでお会いした。
女性を喜ばせることにかけてはピカいちのプリンス、リュ・シウォンは、私に向かって、「今回来られると聞いて楽しみにしていたんです。遠いところまでこうして僕を手助けしに来てくれてどうもありがとう」
と、こそっと言ってくれたのだ。
思わず腰が砕けるようなお言葉。「とんでもないです」の世界である。
加えて、「お母さまはお元気ですか?」と聞いてくれた。この言葉を伝えた日、「えー、私のことを覚えていてくれたの?」と母が喜んだのはいうまでもない。
リュ・シウォンのおかげで私は二度にわたって良い親孝行ができたのである。
こういう人だから、リュ・シウォンのことはつい力を入れて褒めてしまうのだ。

※2009年1月発行「恋する韓流」(朝日新聞出版より)
記事の転載はご遠慮ください

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