取材レポ・コラム

コラム・取材レポ一覧に戻る

行ってきました、映画『ブラザーフッド』の撮影現場!

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2003年8月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

行ってきました韓国映画『ブラザーフッド』の撮影中のロケ地見学ツアー。今まで、公開された映画のロケ場所を巡るツアーはあったが、現在撮影中の実際の現場にお邪魔してその様子を見学するというのは韓国では初めてのこと。メガホンを取るのが『シュリ』のカン・ジェギュ監督、そして日本でもおなじみの主演俳優のチャン・ドンゴン、ウォンビンにも会えるとあって、SARSの心配も何のその、日本から4歳から77歳までの328人が集まった。めったにない撮影現場を覗いてきたので、今回はその様子を紹介してみたい。

映画は、朝鮮戦争を背景にした家族愛、兄弟の絆を描いた物語で、今回私たちがお邪魔したのはその戦闘シーンの現場だった。火薬を何万発も使用するという大掛かりなもので、現場は韓国の南、慶州の山の中。元牧場だったところを改装して撮影に使っていた。1ヶ月はこの現場で連日夜の戦闘シーンを撮影しているということで、監督以下スタッフ、キャストは夜通し朝の7時ごろまで撮影し、午後3時ごろに起きてまた夜の撮影に臨むというスケジュールで動いていた。

この日は私たち日本のツアー客と共に、韓国のマスコミにも現場が公開される日とあって、現場の近くで記者会見を開いてから撮影となったわけだが、山の中だけに個室の控え室などあるわけもなく、スターもスタッフも全員同じところで休憩。また夕食も、現地の記者たちも混じってチャン・ドンゴンやウォンビンは同じ場所で一緒にお弁当を食べていた。韓国では主演俳優もスタッフらと一緒にご飯を食べると言うのが普通で、特別扱いはあまりないという。以前見たドラマの現場でもやはりそうだった。日本との合作経験のある韓国のスタッフらに言わせると、日本では俳優たちへの配慮がものすごいなあということを感じたそうだ。それだけ、日本では特別扱いをしているのだろう。


私たちが記者会見場から近くの現場に移動したのが夜8時ごろ。傾斜のある原っぱを掘り起こし、戦場を再現してあるだだっぴろい現場だ。撮影ライトが煌々と照らされた現場には既に数百人規模のエキストラがスタンバイしていた。監督用のモニターがあって、そのすぐ後ろに主演のチャン・ドンゴン用の簡易パイプ椅子が置かれていた。またすぐ横にはそれぞれの俳優たちが移動に使っているワゴン車が置いてあったが、チャン・ドンゴンらはもう外に出てきてスタッフらと談笑している。5月とはいえ山の中はかなり冷えるため、戦闘服の衣装の上からダウンコートを羽織っていた。見学者たちもあまりの寒さに震えている。その状態は9時すぎごろまで続き、いよいよスタンバイとなった。

緑の葉っぱを体につけてさらに山の上へと登っていくチャン・ドンゴン。下には温かいコーヒーなども用意してあるが、上にはそんなものはないだろう。だからすぐに撮影が始まるのかと思いきや、そのままさらに様々な準備に時間がかかった。ちなみにこのシーンは火薬などを大量に使うため、6000万ウォン(日本円で約600万円)がかかっているシーンだそうで、失敗は許されない。2度ほど入念な動きのリハーサルをして本番となったのが11時。つまりチャン・ドンゴンらは寒空の下、そのまま山の上で待機していたわけだ。

以前チャン・ドンゴンにインタビューしたときに、「寒風吹きすさぶ中、自分は撮影準備が整うまで車の中で待っていたのだが、そのとき大先輩のアン・ソンギさんというスターは、これから演技をするその現場の空気を肌で感じるためと言って、ずっと外でスタッフらと立っていた。それを見て俳優としてのあり方を教わった」と言っていた。私はこの言葉を思い出した。本番は一発OK。様々な面で熱いものが伝わってくる現場だった。

延長線コラム

今回、『ブラザーフッド』のロケ見学ツアーに同行取材して、これぞスターの振る舞いだと感じたことがある。

韓国ではトップスターのチャン・ドンゴンだが、日本からわざわざやってきたファンたちに対しての気配りに感じ入った。彼がファンの前に姿を現したのは決して多い時間ではなかったが、それでもツアー客との合同写真撮影会や記者会見を終えた後、横断幕を持ちながらずっと立って見守っていた日本のファンたちの前に自ら歩み寄り、後ろの人にも聞こえるように両手をスピーカーのようにして叫んだのだ。「せっかく来てくれたのに短い時間しか会えなくてごめんなさい」と。そしてその後、撮影現場に移動するときも、ワゴン車が用意されていたのに、ファンに姿が見えるようにと、ファンの前をわざわざ歩いて通り、握手にも応えながら坂道を移動していった。この一連の行動で更に株を上げたことは言うまでもない。撮影現場での姿勢だけでなく、ファンに対する思いやりにもつくづく人間できた人だなあと感心してしまった。