取材レポ・コラム
『宮廷女官チャングムの誓い』の敵役でおなじみの女優キョン・ミリ インタビュー
オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2007年10月号より(※掲載元の許可を得て載せています)
老若男女に広く人気を博したドラマ『チャングムの誓い』で、主人公チャングムの敵役として迫力たっぷりの悪役ぶりを披露したキョン・ミリ。そのインパクトは強く視聴者に印象付けられた。そんな彼女のインタビューをご紹介。
もともとは大学で韓国舞踊を専攻し、教授になるのが夢だったそう。それが母親の勧めでMBC放送局のオーディションを受けることになり芸能界入りすることになった。
「身体表現をするのが好きだったんです。舞踊もセリフのない演技のようなものですし、舞台に立ったときの緊張感については他の人よりは慣れがありましたから」
日本では『チャングムの誓い』での悪役がおなじみだが、彼女にとっては初めての悪役演技だったという。
「善の役は台本を読んでいても練習も楽しく臨めるのですが、悪役は誰かをおとしめたり、意地悪ばかりを考えなければならないのですごく疲れるし、実際何度も病気をしました。疲労度はいい役の3倍くらいありますね。しかも印象が強烈だったせいか、悪役イメージを払拭するのにもう4年以上かかっています。この10月に『チャングムの誓い』の監督の時代劇に出ます(※『イ・サン』のこと)。そこでは私は良妻賢母を絵に描いたような悲運の后を演じます。監督から、もうひとつの悪役とどちらかやりたいほうを選んでといわれ、私がこっちがいいですと選んだのですが、監督はやっぱりねって言いましたよ(笑)」
いまや演技派として監督から信頼される女優のキョン・ミリさんであるが、かつて大きなスランプに陥ってしまったことがあるという。
「演技を始めて10年ぐらいの時でした。そのときは40日間毎日舞台に立つ演劇の仕事をしていて、観客の目にさらされることにものすごく恐怖を覚えたんです。それで誰に言われたわけでもないのに、ある日突然、私の演技は嘘なんじゃないかと思いこんでしまったんです。そんなときに来た仕事が時代劇ドラマの『チャンヒビン』でした。自分自身が自分の演技に満足できなければもう女優はやめようという覚悟で臨んだ『チャンヒビン』をやり終えたとき、演技者としてやっと物心がついたというか、大人になったと思います。女優として器用な方ではないので、台本をもらったら肌身離さずに練習し、ワンシーンワンカット、誰にも恥ずかしくないようにやっていくんだという気持ちにやっとなれました。なので、不思議なことにこれ以前に自分がどんな演技をしていたか思い出せないんです。あのときの苦しみがなければ女優を辞めていたかもしれませんし、今よりもはるかに劣った演技者で留まっていたかもしれません。今でも視聴者に満足してもらう演技より自分が満足できる演技を目指してやっていますが、今まで一度も満足したことはないです」
ところで、韓国ドラマといえば過酷な撮影に、時代劇となると長い撮影期間がかかる。役を全うする上で大事にしていることは?
「一言で言えば‘約束’です。自分との、視聴者との、スタッフとの、監督との約束。引き受けますと返事をした以上、病気になっても体調を崩してもいけない。約束を最後まで守りきることを強く肝に銘じ、撮影期間のあいだ緊張をキープしようと努力しています」
キョン・ミリさんは気さくでよく笑うとても魅力的な人。韓服に身を包んでのインタビューだったので、「着るものによって心の持ちようが変わるから、この衣装を着ると、ついチャングムのときのしゃべり口調になるのよね」といいながら、茶目っ気たっぷりに楽しそうにお話してくれました。