ミュージカル
『ドクトル・ジバゴ』(ミュージカル)あらすじと感想
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『ドクトルジバゴ』、プレビュー含めて4回見ました。
6年前の初演を一度見ていますが、
あまり印象に残ってなくて(^-^;
映画と宝塚で予習していきました。
1回目は、
映画と宝塚との比較に終始してしまいました。
設定をちょいちょい変えていて
不倫色を弱めてるなぁということや、
すべてがさらさらと流れていく感じで、
なんか盛り上がりに欠けて地味だな〜
と思ってしまいましたが、
2回目は比較することもなく、
この舞台で描かれていることに寄り添えるようになり、
3回目でようやく、
ジバゴとラーラを中心とした5人の人物たちの愛の形に
じんわり感動できました。
曲が頭に入ってきたのもこのあたりから。
私の周りの人もそんな感じだったので、
『ドクトル・ジバゴ』は良さがわかるまでに
時間がかかる作品かもしれません。
ただ3回以上見る人はそんなに多くないのが問題なのですが(^^;
以下、感想を交えながらざっとあらすじを書きます。
ネタバレしますのでお気を付けください。
ただ、内容がわかっていた方が、
より早く感動できるようになれると思います。
(あらすじ中の感想部分は青字で書いています)
●『ドクトル・ジバゴ』あらすじ
<1幕>
早くに親を亡くし、親切な父親の知人に引き取られ
幸せに成長したユーリ・ジバゴ。
医学博士でもあり詩人でもあるジバゴは
その家の娘トーニャと穏やかに愛を育み
結婚することになっています。
その結婚披露のパーティーの日、
パーティー会場で銃の発砲事件を起こしたのが
ラーラという女性でした。
ラーラは洋装店を営む母親のパトロンだった
コマロフスキーに貞操を奪われ、
コマロフスキ―を撃とうとして別の人を傷つけてしまったのでした。
ジバゴはコマロフスキ―には
自分の父親も裏切られた思いがあるので
実際に行動に移したラーラに対して特別な感情を抱きます。
彼女はいったい誰なんだろうと心に残りますが
そのまま時が流れます。
♪Who is she? こちらへ
一方のラーラは
かねてからの恋人パーシャと結婚することになります。
でもその初夜に、
お互いに隠し事はやめて向き合おうというパーシャの言葉に、
自分がかつてコマロフスキ―の女だったことを打ち明けて、
衝撃を受けたパーシャはそのまま家を飛び出して行ってしまいます。
戦場で軍医として働くジバゴ。
そこに、行方不明の夫を探すために
看護師としてやってきたラーラ。
ジバゴはあの時の女性だ!と思って内心嬉しく思っています。
戦場で一緒に働くうちにお互いに好意を抱き合う2人。
でも戦争が終わって家に帰れるということになります。
このとき他の看護師たちも一緒に
皆でダンスをするのですが、
ジバゴは何人かと踊ったあと、
思い切ってラーラの腕を取ってダンスに誘います。
楽しげに踊っていたのに、
ジバゴがすっと手を握り直して
眼差しがふっと真剣になり愛が宿った瞬間、
2人の間にだけただならぬ熱い空気が漂うのですが、
すぐに我に返りパッと離れるところ。
この一連のシーンがツボでした!
リュ・ジョンハンの、
想いを込めて握り直す手と熱き眼差しに、
ラーラでなくてもドキッとする場面です(笑)。
想いを隠していた二人ですが、
それぞれの場所に戻ることになり
「良い友達になれてよかった」と言って別れようとしていた時、
かつて二人で手当てした兵士が瀕死の状態で駆け込んでいて
2人の前で亡くなってしまいます。
その彼が手にしていたのが、
戦争から戻ったら好きな女性に渡そうと書いていた恋文でした。
その手紙を読みながら、
自分たちの心情に想いを重ねていくジバゴとラーラ。
それが2人のデュエットで表現されるところが
大きな見所聴きどころのシーンです。
♪Now こちらへ
歌いながら気持ちが高まりあい、
そして歌い終わってたまらずに固く抱き合ってしまう2人。
ようやく想いを確かめ合うのでした。
でもお互いに妻も夫もいる身。
ジバゴはモスクワへ、
ラーラはユリアチンという地方にそれぞれ帰ります。
ジバゴがモスクワに戻ると革命のため体制が変わっていて
裕福だったジバゴの家は共産党の管理下に置かれていました。
大勢と一緒に住まわされ、
配給物資だけで暮らさなければならないひもじい毎日でした。
このままではどんな目にあわされるかわからないと
危険を察知したジバゴたちは
家族にゆかりのある土地に移り住もうとします。
その場所はユリアチンでした。
最初その場所を聞いた時、ラーラがいる場所だけに
ジバゴはそこはダメだ!と叫ぶのですが、
他に選択肢はなく、
家族のために一家でユリアチンへ向かうことになります。
ここで、
どうしたらいいだろうか苦悩しながらも、
自分は家族を守らなければならないから行かなければ!
と歌うジバゴの歌は最後力強く歌い上げてくれて
聴きどころの一つです。
♪Yurii’s Decision こちらへ
ここまでが一幕です。
2幕に入るとジバゴとラーラの愛が本格的に始まります。
<2幕>
ジバゴはラーラが近くにいるのを知りながら
会わないようにしていたのですが、
詩を書いていない夫のことを心配した妻のトーニャから
図書館に行ってきたら~
と送り出されて行ってみると
そこには働いているラーラがいて
2人は再会してしまうのでした。
お互いに一度は思いとどまった想いでしたが
これまで精一杯我慢していた分、
もうどうにも制御がきかず、抱き合いキスをしてしまいます。
ここ、ジバゴは一瞬後ずさりますが、
引力に引き寄せられるようにラーラに向かっていって
抱き締めます。
ラーラもジバゴの姿を目にしてすぐ前を向いて、
信じられない気持ちで
「もし振り返って彼がいなかったらどうしよう」
と言ってもう一度振り返って、
やはり彼女も惹き付けられるようにジバゴに抱きついてしまう。
ここの表現は抑え気味でも心に火花が散っているのがわかります。
最初はここもっとドラマチックに演出してくれてもいいのに
と思った場面でもありますが、
このくらいの方が伝わるのかもなと今では思えます。
ここで歌われる曲が
いい曲なんですよね。
この曲はジバゴとラーラが歌っているところに
コマロフスキ―もストレリニコフ(パーシャ)もトーニャも加わって
5人の愛の想いが交錯するのがいいです。
♪ Love finds you こちらへ
でも、愛を確かめ合ったのもつかの間、
ラーラのことを監視していた
パーシャことストレリニコフによってジバゴは拉致され
パルチザンの医者として働かされることになってしまいます。
帰ってこない夫を心配して妻のトーニャは
ラーラを訪ねて図書館にやってきます。
ここで歌われる二人の女性のデュエットがとってもいいです。
同じ男を愛する女たちが、
憎しみ合うでもなく、ただただ切ない想いを交換する。
劇中1、2を争うくらい印象に残る場面でした。
パルチザンのもとで2年過ごしたジバゴは
身も心も過酷な生活を強いられていましたが
隙を見て脱出します。
そして疲れ果てて倒れたジバゴをラーラが発見します。
自分の家で目覚めるジバゴ。
家族の安否を尋ねるジバゴにラーラは
トーニャから託された手紙を渡します。
ユリアチンにいては命の危険があったためにパリへ亡命したこと、
ジバゴを残していくのが心残りだけど、
あなたのそばにあなたを支えてくれる人がいてくれると思うと
少しは気持ちが軽くなるわ~ということが書かれていました。
ここの場面、
手紙を読むジバゴの後方で、
文面をトーニャ自身が語る演出なのですが、
ジバゴとラーラの愛を認めて自分の気持ちを昇華させ、
涙を浮かべて手紙の文言を語るトーニャの姿に
こちらも胸打たれます。
家族のような穏やかな愛に生きてきたジバゴが、
ラーラに出会って胸に火花が散ってしまった。
詩人でもある夫の自由な魂をも愛するトーニャは、
きっと自分もちゃんと愛され大事にされている実感もあったからこそ、
そんな夫の魂が向かってしまう女性のことを
切ないけれど認めたのだろうなと思える場面でした。
まさに献身的な大きな情愛です。
そして、何度別れようとも、
何度引き裂かれようとも再会してきた運命の二人は、
いつ果てるとも知れぬ危険と隣り合わせの中、
やがてくるその日まで二人で過ごしましょうと覚悟を決め、
ようやくジバゴとラーラは結ばれます。
ここは映画も宝塚版でも、
まだ妻と暮らしていながらベッドインしているので、
どうしてもおいおい!って思ってしまったのですが(^^;
このミュージカル版では
「妻が亡命してから不倫した」感じになっていて、
受け入れ易くなっていました。
あ、でも直接的な描写がないだけで
実はその前から結ばれていたのかしら?
でも幸せは束の間、
ストレリニコフことパーシャが処刑され、
ジバゴとラーラにも危険が及びます。
それを助けようとやってきたのがコマロフスキ―でした。
ジバゴはパルチザンに強制されたとはいえ
2年も共に過ごしているし、
ラーラはパーシャの妻だからという理由で
それぞれ命が危ない状況だと言われます。
2人の逃亡の手助けをするからすぐにここを出るのだ
というコマロフスキ―の申し出を、
ジバゴはお前の助けなど借りたくないと一度は突っぱねますが、
ラーラも道づれにするわけにはいかないと思い直し
自分も一緒だとより危険度が増すから
ラーラを連れて先に行ってくれとコマロフスキ―に頼みます。
そして自分だけ行くのは嫌だというラーラに、
自分もすぐにあとから行くからと説得し、
ラーラを心配させないように笑顔を浮かべて、
でも内心はこれが今生の別れだと覚悟して
万感の思いを込めたキスを交わしてラーラを送り出すのでした。
ラーラを見送ったあと、
ジバゴはラーラへの想いを詩にしたためます。
ラストは数年後。
ジバゴの墓の前にラーラとジバゴとの間にできた娘が立っています。
娘がジバゴの詩を読み上げるとかつてのジバゴに思いを馳せるラーラ。
そんな彼女の前には若き日のジバゴが現れるのでした。
幕
ジバゴとラーラの愛を見ながら
突然ドラマの『ホ・ジュン』を思いだしてしまいました(爆)。
ホ・ジュンは、
身分違いを乗り越えて結ばれたヤンバンのお嬢さまと結婚し、
人格者でよき夫でもありながら、
医女のイェジンお嬢さまと惹かれ合ってしまう。
彼らはあくまでも
直接的な愛の確認表現もないようなプラトニックなものでしたが、
やはり、同じ魂が惹かれ合うのは誰にも、
本人たちですら止められないんだなぁと思ったんですよね。
そしてこのときも、妻とイェジンお嬢さまは
お互いをリスペクトし合っていたので、
そんなところの共通点で思い出したんでしょうね。
ロシア人は情熱的だそうだし、
過酷な時代にあっていつどうなるかわからない状況下では
ジバゴたちのように肉体的にもお互いを求め合ってしまうのも
むべなるかなだなと思ってしまいました。
パーシャの屈折した愛も印象的でした。
愛する女性がブルジョワ貴族にもてあそばれたと聞かされて、
ブルジョワもラーラのことも許せなくて、
ラーラと関係を絶って赤軍の将軍になり
血も涙もない行いをしていく。
それでもラーラへの思いは絶ちがたく監視し続け、
ラーラからジバゴを遠ざけさせ、
でもラーラを悲しませないために
ジバゴを傷つけないように命令してるし、
やることなすこと屈折していて痛々しくもある。
あげくに、最後はラーラに会いに行ったのであろう途中で逮捕され
裁判で死刑宣告を受けて自殺しちゃうし。
潔癖すぎて正義感が違う方向に行ってしまった、悲しい人です。
コマロフスキーは映画よりもミュージカルのほうが
わかりやすくゲスな男に描かれている印象ですが、
彼は彼なりにりラーラを愛していて
最後はラーラのためにジバゴとラーラを救おうとします。
愛する女性のために、
彼女が愛する男と一緒の逃亡に手を貸そうとするのですから、
彼は彼なりの愛を貫こうとしているのだなあと思いました。
こんな風に、時代の大きな変革期を背景に
5人の愛が交錯していく作品でした。
2018年3月14日執筆