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リュ・ジョンハンインタビュー in『ジキル&ハイド』

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2006年4月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

韓国ミュージカル界の新星、リュ・ジョンハンが来日した。
3月13日から日本で公演が始まるミュージカル『ジキル&ハイド』で、
映画俳優でもあるチョ・スンウとダブルキャストで主役を演じる、
ミュージカル俳優である。

リュ・ジョンハンは歌のうまさに定評がある。
昔から教会の聖歌隊に所属し、声がいいので、
先生から声楽科を受けてみろと薦められたのがきっかけで
ソウル大学の声楽科に進学した。
なんと受験に当たって声楽のレッスンを3ヶ月受けただけで
受かってしまったという才能の持ち主だ。
そんな、クラシック音楽の道を進もうとしていた彼がミュージカルと出会った。

「『ウェスト・サイド・ストーリー』のオーディションがあって、
皆に薦められて受けてみたら500倍の倍率を受かってしまって、
主役のトニーを演じることになったんです」と、
なんともまあうらやましい話である。

外国からスタッフが来て上演するにあたり、
音楽面を重視しようとの意図があったようで、
歌唱力を評価しての抜擢だったようだ。

「それまで全く演技の勉強をしたことがなかったので
とても苦労しました。既存のミュージカル俳優は、
演技面でもアンサンブルから段階を経て
這い上がってきた人が多いのに、いきなり新人で主役ですから。
もちろん周りの目は冷ややかで、
どうせ一回やったらクラシックに戻るのではないか
という陰口も後になって聞きました。
そんな中で練習しながら一生懸命努力しました。
そのあともストレート芝居に3、4作出たり、
先生について演技を学んだりしました」

デビューの翌年にはミュージカル大賞の新人賞を受賞し、
以降もクラシックに戻らずにミュージカル界で活躍している。

「実はクラシックに面白味が感じられなかったんです。
ミュージカルを始めたら、もちろん最初は演技が下手でバカにされたけど、
内心、演技ができるんだ、踊っていいんだと面白く思えました。
90年代半ば当時、学校の先生や周りが
大衆演芸に落ちぶれてという目で私を見るんですが、
それに抵抗があって、見返したいとも思いました。
でも今は逆にうらやましがられます。
私はいい選択をしました。
ただ、ミュージカルと声楽とでは歌い方が違うので、
自分としては勉強したものを排除する努力が必要なんですけどね」

舞台に立つ上でいつも心がけていることは?

「デビューからずっと思っていることは、
絶対に真実でなくてはいけない、嘘はバレるということです。
お客さんは毎回違うので、
今日は体調が悪いから力を抜こうということは絶対にしない。
喉の調子が悪くても気分が優れなくても、倒れても最善を尽くす。
それが私の変わらないスタイルです」

延長戦コラム

韓流ミュージカルはダブルキャストが主流

『ジキル&ハイド』は主役がダブルキャスト。
『冬のソナタ』のミュージカルもそうだった。
日本でも『レ・ミゼラブル』『エリザベート』など、
大きな大作舞台はダブルキャストが組まれることがある。

韓国では、喉に負担が多くかかる難度の高い歌の場合だったり、
もしくは2人を順番に使ってそれぞれの魅力を見てもらおう
という公演効果を高める意味で
ダブルキャストにする場合が増えているという。
同じ役を互いにどう演じるのか、
競争意識が働くのは無理からぬことだが、
当事者はどう思っているのだろうか。
リュ・ジョンハン氏に聞いてみた。

「プレッシャーが全くないといえば嘘になります。
同じ役を違う人間がやれば、違う結果が出たり解釈も違うし、
いろいろと神経も使います。
でもそちらにばかり神経が行くのはつたない考え方だと思います。
相手が持っていて自分にはない魅力を得ることもできるし、
相手の役の解釈を見て、より深くその役を向上させることもできる。
つまりは相手の良い面を学べ、その役を深く学べる機会と捉え、
良い風に活用していけるようにしています」

やりたい作品がある度にそのつどオーディションを受けて
勝ち抜いてきたというリュ・ジョンハン。
彼の演じる『ジキル&ハイド』が楽しみになってきた。