ミュージカル
イム・テギョンにインタビュー
『ウェルテルの恋』で赤坂ACTシアターに行った際、
会場に置いてあったチラシを見つけて
「うぁお!」と狂喜乱舞したイベントが、
K-Musical Stars Concert 2013 です。
今をときめく韓国のミュージカルスターの
イム・テギョンさん、オク・チュヒョンさん、
『ウェルテルの恋』でも熱演したチョン・ドンソクさんに、
『エリザベート』のルドルフ皇子役などで知られるイケメン
キム・スンデさんの4人が来日するミュージカルコンサートです。
イム・テギョンさんは2005年の12月だったと思いますが、
ミュージカル『冬のソナタ』を小説にするという仕事で
舞台稽古を観に行ったとき、
チュンサン役を演じる彼を一目見て、一声聞いて
魅了されてしまったのでした。
上川隆也さんを可愛くした感じの華のある外見に加え、
歌声がハンサムで素晴しかったのです。
もともとクロスオーバー・テナー歌手として
歌には定評がありましたが、
当時はまだ2本目のミュージカルでした。
それ以後メキメキと実力をつけ、
今や韓国を代表するミュージカルスターの一人です。
『ハムレット』『モーツァルト』『皇太子ルドルフ』
などといった多くの作品に出演して評価が高く、
チケットパワーもある俳優です。
とても素敵な人なので、
日本のファンにもとても好かれそうな気がします。
そんな彼に加えて、いま最も輝いているミュージカル女優
と言ってもいいいでしょう、
オク・ジュヒョンも来るのです!
今月初めに韓国で、彼女の出る『レベッカ』を観ましたが
それはもう素晴らしくて力いっぱい拍手してしまいました。
彼女は『エリザベート』もものすごく良かったけれど
『レベッカ』はまた凄みがあって、
頭から焼き付いて離れません。
そしてチョン・ドンソクさんに
昨年インタビューしたキム・スンデさんという、
若きミュージカル界の次世代プリンスたちが揃い踏み。
これは興奮しますね。
というわけで、先日来日したイム・テギョンさんに
インタビューして来ました。
『冬のソナタ』の時にもインタビューしたことがあったので、
「あの時と比べて変わったことは?」と聞くと、
「『冬のソナタ』は2本目のミュージカルだったので、
本当に初心者でした。
今は『舞台での演技はこんなに自由なのか』と思えるようになった」
とのこと。
俳優としてすごく変わったそうです。
最初は覇気と情熱だけでやっていたのが、
今ではお客さんと意思疎通している
と感じられるようになり、
ようやくミュージカル俳優になったと思えるとのことでした。
「『冬ソナ』の時は “演技をしてソロ曲を歌う” 段階だったのが、
“歌で演技をする” というところにたどり着いた」そうで、
「当時は俳優として頼りなかったので、
歌をうまく歌うことしかできることがなかった。
階段を上るように1作品ずつできるようになってきた」
ということです。
「『ハムレット』に主演した時に、
自分が俳優のように演じられていると意識するようになった」
ということだったので、
「それがターニングポイントですか?」と聞くと、
むしろ、その一作前、
初めての助演で、悪評が一番多かった
『スウィーニー・トッド』への出演が大きかったそうです。
その経験を経て演技の勉強もして、
『ハムレット』で主演を演じた時に、
「見てくれ! 僕の演技を」という気持ちでやれて、
みんなからも「別人になった」
という評価を受けたと言っていました。
「特に伸びたということではないけれど、
演技のやり方が間違っていない」と確認できたし、
それを感じるために『スウィニー・トッド』は
欠かせない作品だったということのようです。
また、
「今は主役だから、公演に責任を感じている。
演技は自分1人がやるのではなく、
お客さんが見ているのは、
私と出演者、スタッフの力が結集したもの。
すべての共演俳優と呼吸を合わせ、
みんなのことを温かい目で見るということ。
主役の経験を重ねながら、それがわかるようになった」
とも話していました。
「私が主役だから見て!」ではなく、
みんながバランスよくこなせるように気を配り、
「すべてすばらしかった。おもしろい作品だったな」
と思ってもらうのが目標だそうです。
体を鍛えたいけれど時間がないそうで、
練習の時も本番のように歌って動くので、
朝起きて、しっかり食べて、
しっかり動くことだけで体が鍛えられると言っていました。
「むしろ、公演を終わって休むとコンディションが悪くなるので、
仕事ばっかりしている」とのことでした。
4月のコンサートについては
「皆さんがよく知っているおなじみのナンバーを
僕の歌声で聞いてもらいたい。
今、韓国で最も愛されている3人の俳優と一緒に
どれくらいのエネルギーが生まれるのか見てほしい」
と意気込みを語ってくれました。
韓国でもこんなに豪華メンバーが揃って歌うことはないので、
韓国のミュージカルファンが嫉妬しているくらいだそうです。
4人とも家族のように仲がいいので、
歌うナンバーも譲り合って選んでいるとのこと。
「2回公演なので、韓国から見にきてくれるファンのためにも
ちょっと違うことをするかもしれませんよ」
と言っていました。
韓国のミュージカル界はここ数年、
お客さんの目が肥えてきて
「一人一人が評論家のよう。マナーも成熟してきた」とのこと。
日本のミュージカルは『ルドルフ』を見たそうで、
俳優の演技について、
韓国は情熱的で、整理整頓ができていない荒さがあるのに対し、
日本は冷静で、きれいで整っていると思うと話していました。
「韓国では80%の出来の時もあるけど、
時には120%の出来の舞台に当たって
『なんだ、この感動は!』と思うことがあるかもしれない。
日本の場合は99~100%を維持して、
お客さんとの信頼関係ができているけれど、
その代わりプラスαにはあまり出会えないかな」
と言っていました。
そして最後に、
「パッション溢れる俳優たちの舞台となる今回のコンサートを見て、
奇跡の瞬間の証人になってください。
『すごい!』と言っていただける舞台になりますよ」
とのメッセージをくれました。
【イム・テギョン プロフィール】
1973年生まれ。幼い頃から声楽を学び、ボストン音楽大学院の声楽科に進む。
ジャンルを飛び越えた、クロスオーバー・テノール歌手として
04年に1stアルバムを発表。
05年『炎の剣』でミュージカルに進出。
近年は『モーツァルト』『皇太子ルドルフ』などの大舞台に立つ、
ミュージカル界を代表するトップスターの一人。
ソフト、かつ力強い秀麗なハンサムボイスの抜群の歌唱力で
多くの女性を酔わせ、素敵な佇まいと合わせて
‘ミュージカル界の皇太子’と呼ばれるスター。
日本には06年に『冬のソナタ』で来日公演をしたこともある。
11年~12年までTV番組「不朽の名曲2~伝説を歌う」に出演。
(2013年2月12日執筆)