『壁抜け男』劇団四季版 – 田代親世の韓国エンタメナビゲート

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『壁抜け男』劇団四季版

劇団四季の『壁抜け男』見てきました。

もう何度も上演されている人気のフレンチミュージカルで、

韓国でもけっこう再演されている印象があります。

 

私は韓国版を2013年と昨年の2回見ているのですが、

ほぼ歌で進んでいくソングスルーミュージカルなので

歌詞の内容がきっちりわかるといいなあと思い、

日本で上演することがあったらぜひ見たいと思っていたのでした。

 

 

内容は、

郵政省の苦情処理係という公務員の独身の中年男性が

ある日突然、壁を抜けられるようになります。

最初は戸惑っていた男ですが、次第にその力を生かして

庶民の英雄になっていき、密かに思いを寄せていた女性にも

勇気を出して近づくのだが…という物語です。

 

ファンタジックで、遊び心があって、

クスクスっと笑わせられるのですが、

愛らしくもほろ苦く、もの哀しさ漂う作品なんです。

【撮影:阿部章仁】

 

人生で大きく一喜一憂することもなく、

日々ささやかなことに楽しみを見出して

地味~に暮らしていた中年の少々冴えない男に

ふともたらされた壁を抜ける力。

壁に守られているという安心感の中で

ずっと生きてきた男にとって、

そんな能力なんて煩わしいだけだと最初は思ったものの、

日常からの逸脱のスリルと喜びを知って

どんどんはじけていくんですね。

その姿が可愛らしいというか、愛おしいというか。

主人公の男を演じたのが飯田洋輔さんで、

韓国俳優のチョン・ジェヨンに似てるんですよ!

ハンサムな顔なのに

背中を丸めた生真面目な小市民になっていて、

途中からちょっと得意になって

飛び跳ねたり軽やかに愛に向かったりしていく姿が

とってもチャーミングでした。

【撮影:阿部章仁】

 

下町のご近所さんたち、仕事場の人々、

アル中の医者や警察官といった

個性豊かなモンマルトルの街の住人たちと主人公のやり取りも

一見面白いのですが、随所にペーソスがにじむんですよね。

 

派手でドラマチックな激情マックスな作品ではないですが、

多くの人が共感できる平凡な人物像が主人公で、

そんな普通の人間がちょっとしたきっかけで人生が輝きだすサマが

いいんですよ。

そんな主人公が、自分の平凡な人生を「人生は素敵~」

と歌い上げるこの作品のテーマ的な曲を歌うと、

温かさと同時に鼻の奥がつーんとなる感じで、

歌詞の内容がじんわりと胸にしみるんです。

なんかこう、大切にしたい作品だな~って思わせてくれるというか。

 

『シェルブールの雨傘』で知られるミッシェル・ルグランが

音楽を担当しているのですが、

曲がすごく印象的で、

軽快で、音が忙しく上がったり下がったりして、

けっこうクセになるメロディーです。

 

切ないラストですが、なぜかほっこりするという

不思議な感覚にとらわれる、

きらりと光る珠玉の作品ですね。

この日は中学生が団体観覧で入っていましたが、

果たして中学生にわかるのかなあと。

この作品のおかしみと悲しみ、ペーソスが

じわじわ来るのはもっと大人になってからなのかもと思うのですが。

なので、この日の中学生たちの感想が気になります~(笑)。

 

この『壁抜け男』、韓国でも人気演目なので、

今後も再演があるかもしれません。

昨年は、ドラマ『応答せよ1994』や

『幸せのレシピ~愛言葉はメンドロントット』などのユ・ヨンソクや

イ・ジフンが主人公を演じていましたので、

いつか自分のお気に入りの俳優さんが出演することもあるかも。

その時のためにもぜひこの機会に日本版を見ておくといいと思います。

 

(2016年09月30日執筆)