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『レ・ミゼラブル』ヤン・ジュンモ版

 

先週行ってきました、
『レ・ミゼラブル』。
韓国俳優ヤン・ジュンモが
ジャン・バルジャンを演じた日です。

世間的に『レ・ミゼラブル』という演目は
名曲ぞろいで大人気ですが、
私としては、この作品、
女性がひどい目に合ったり、
貧困や社会の底辺の悪どさがあったりして
そこまで好きなタイプの作品ではなかったのですが、
(同様に『ミス・サイゴン』もあまり…)
今回は感動しました。
もっとも、作品にというよりも、
ジュンモさんに感動したところが
大きかったと思います。

ジュンモさん、歌の上手さはもちろんですが、
心配していた日本語の発音も気にならず、
歌詞の内容がしっかり伝わってきました。
たま~に発音が流れがちなところもありましたが、
それはもう問題にならないレベルで、
いやあ、素晴らしかったですね。
いったいどれだけ努力されたのか。

これ、予備知識無しで見た人は、
元々日本語の話せない韓国俳優が演じているとは
とても思えないだろうなと思います。
なんとなく、日本語ネイティブの
在日の韓国人が演じているくらいに
思われているのでは?
と思ってしまいました。
それくらい自然だったので。
その努力を思った段階で
まず胸が熱くなってしまいました。

そして演技にも何かこう、
ほとばしる情熱が感じられて
胸を打たれました。
序盤は、人生の不条理に対する憤怒を
荒々しさと迫力で力強く歌い、
ドラマが進むにつれ、
繊細な感情を歌声に乗せてくるんです。

特に2幕の、
ジャン・バルジャンが青年マリウスに向けて歌う
「ブリング・ヒム・ホーム」は
相手を優しく抱きしめるような歌い方で、
本当に素晴らしかった。
切々と胸に迫ってきました。

またラストの天に導かれていく場面も、
ジュンモさん演じるジャン・バルジャンの、
穏やかな、やり遂げた感のある表情に
泣かされてしまいました。

 

ジャン・バルジャンといえば、
先日はロンドン、ウェストエンド初演『レ・ミゼラブル』の
バルジャン役だったコルム・ウィルキンソンの
コンサートにも行ったのですが、
コルムさん、それそれは素晴らしかったです!

これまで、どれだけ上手いと言われても、
西洋人歌手の ‘上手い’ には
落ちたことのなかった私ですが、
コルムさんは別格でした。

私は、失礼ながら、
「伝説の男」「神の声」と言われても、
さすがにもう70歳とお歳だしなあと
たかをくくっていたのですが、
いえいえ、レベルが違いました。
なんてドラマティックなんでしょう!

ただ上手いんじゃなく、それを超える何かが
声にも表現力にもありまして、
歌声からドラマが浮かび上がってくるような、
魂が揺さぶられるようなその深さに
ぐぁっと胸をつかまれた感じでした。

で、記事によれば、
そのコルムさんが、
ジュンモさんの『レミゼラブル』のプレビュー公演を
観に行ったみたいですね。
こんな素晴らしい歌い手のコルムさんから
称賛と激励をしてもらったそうなので、
ジュンモさん、
大いに自信も湧いたのではないかと思います。

そして、他の日本人キャストもレベルが高かったです。
日本のミュージカルも、
ミュージカルメインで活躍する俳優さんが
続々登場してきて、
相対的なレベルが上がってきたなあと感じています。

以前は映像やストレートプレイで活躍する
有名な俳優さんが、知名度を生かして
ミュージカルに出る~みたいな感じがあって、
正直、一握りの方々を除いて
うまいと思ったことがなかったんですよね。

だからずいぶんミュージカルもご無沙汰していたのですが、
韓国ミュージカルに目覚めてから
日本のミュージカルにも足繁く通うようになってみると、
ここ最近、結構レベルが高いです。

外国人のヤン・ジュンモさんのがんばりにも
刺激を受けているところがあるのではないかと
勝手に想像してしまいます。

『レ・ミゼラブル』は東京帝国劇場が6月1日まで。
その後、名古屋、博多、大阪、富山、静岡と
9月まで地方公演が行われます。

 

 

(2015年04月27日執筆)