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『ジキル&ハイド』リュ・ジョンハン&チョ・スンウ

 

先月末から1週間ほど韓国に行っていました。
今回の旅のメインは
ミュージカル『ジキル&ハイド』を観ること。

韓国で『ジキル&ハイド』が初演されたのが
2004年7月。
韓国の観客はこの作品が大好きだそうで、
これまでに繰り返し上演されてきました。
それから今年が10周年になるんですね。

なので、初演からしばらく出演してきた
リュ・ジョンハンとチョ・スンウは、
一旦はこの作品から卒業していましたが、
今回再び記念の舞台に臨むとのことで
いやがおうにも期待感は高まるのでした。

※ここに今回抜擢のパク・ウンテが加わります

私は2006年にこの『ジキル&ハイド』が来日公演した時に
お二人の舞台を見ていますが、
それ以来なんですよね。

その時初めてリュ・ジョンハンという俳優を知り、
その歌の上手さにぶったまげ、
映像で活躍していたチョ・スンウの
幅広いエンターティナーな能力の凄さを
見せつけられたわけですが、

でも、当時はミュージカルを
見慣れているわけでもなく、
さら~っと観劇した感じでしたので、
韓国のミュージカルってとっても上手いのね~
という印象だけは残りましたが、
内容はおぼろげでした。

今回は音楽の予習もして臨み、
お二人の舞台を2回づつ、
全部で4回観ました。

チョ・スンウは
ちょっと調子が悪かったのか、
それともそういう声になってきているのか、
ところどころハスキーな声になっていて、
それが哀愁を掻き立てるんですよね。
西城秀樹が「傷だらけのローラ」を歌うときのような。
この喩えが分かるでしょうか(笑)

一回目観た時はおそらく本調子じゃなかったようで、
この作品最大の名曲「チグミスンガン」のとき、
ラストがちょっと詰まったような
気がしました。

なので、初回、
昼チョ・スンウ、夜リュ・ジョンハンで観た時は、
リュ・ジョンハンは絶好調な感じで
いつもと変わらず艶のある声で
圧倒的な声量で、素晴らしかったので、
正直チョ・スンウが霞んで見えたのですが、

でも、中二日置いて2回目に観た時は、
昼リュ・ジョンハン、夜チョ・スンウで観まして、
この時はチョ・スンウ、声量も素晴らしく
前回よりもずっと良かったので、
やっぱり調子が悪かったんだなと思いました。

ただ、ジキルからハイドに変身するところは、
リュ・ジョンハンのあの黙っていると怖い鋭い顔つきが、
悪人ハイドになってから更に引き立って、
周囲の人間をいたぶる感じが
色悪でセクシーでかっこいい!!!
ひゃぁ~❤という感じです。
その変身前と後のメリハリの差が大きいので
舞台映えするというか、派手なイメージです。

あとは、おそらく、ハイドになってからの
役に対するアプローチが
二人それぞれ違うのですね。

リュ・ジョンハンは、完全に狂気ばしって
イッちゃった人っぽく‘悪’を演じてますし、
チョスンウは、
踊り子のルーシーにキスを拒否されて
傷ついたように見えたので、
彼女に対する思いとか、
複雑な胸の内というものを、
深めて演じようとしていたのだと思います。

でも舞台では、バシッとジキルとハイドのあいだに
メリハリがあったほうがわかりやすいし、
見栄えがするような気がしました。

※歴代のジキル&ハイドを演じた俳優たちの写真パネル
ここに今回抜擢のパク・ウンテが加わって10人!

名曲「チグミスンガン(=邦題「時が来た」)」
のときには、
もう会場中が待ってました!の空気になるので
これはさぞかし歌いにくいだろうなあと思いました。

韓国の人は本当にこの歌が好きで
俳優さんもファンミなどでよく歌いますが、
こうして劇中で歌うことを許されたのは
この10年で10人だけなんですね。
やっぱり劇中で聞くこの曲は格別で、
ソフトな歌い方から始まって、
だんだん高まっていく感じが
もう最高ですね。

他にも、
ハイドとルーシーという踊り子が
色っぽく歌う
「デンジェラス・ゲーム(=邦題「罪な遊戯」)」が超セクシー。
ハイドがルーシーの身体を
まさぐるまさぐるという感じで
エロチックで大人のムード満点。
ここ、特にリュ・ジョンハンの
サディスティックな感じがたまりません~。
チョ・スンウは独特の湿り気のある声で
ルーシーに迫ります。

もう韓国が誇る
超一流ミュージカルスターの
競演ですから、
見比べるのも甲乙つけがたく見応えがあります。

ただし、私はリュ・ジョンハンのほうが好みなので
どうしてもそちらに軍配が上がりますが…、
チョ・スンウファンの方すみません、
そこは個人の嗜好なので~。

アンサンブルもすごくて、
一幕序盤に出てくる「嘘の仮面」や、
2幕序盤の「muder muder!(邦題「事件、事件」)」
の歌の迫力など、
やはり最高峰の舞台だから、
アンサンブルも良い人材が揃うせいか、
素晴らしくレベルが高いです。

そして韓国の舞台は
いつもカーテンコールが粋で楽しみなのですが、
今回は、挨拶したあと
一人舞台に残った主役が後ろ向きで髪をしばったゴムを外し、
振り向きざまにゴムを投げシュッと去っていくという感じ。

私が見た時は、
チョ・スンウは一回目はただ去っていった感じでしたが、
二回目はそこに丁寧なお辞儀を入れて投げ去っていった印象でした。
リュ・ジョンハンは、ゴムを投げたあと、
振り向きざまにニヤリと笑って
客席に向かって親指を立てシュッと消えるという
キザっぷり。
キャー、なんなの~!? 今の~❤という感じで
場内の女子大興奮でした!
二度目は振り向きざまにペロッと舌を出して
またニヤリと笑って去った感じ。
この、舞台の最後の最後まで、
去り際のかっこよさにまで気を使ってくれるところが、
さすがエンタメ力の高い韓国です。

ところで、
チョ・スンウの『ジキル&ハイド』はレジェンド舞台。
もうブランドみたいなもので、
チケット入手はかなり困難です。

そんな中、私の周り(18列目と20列目)は
2回ともカップルが多くて、
普段はそんなにミュージカルに興味ないけど、
彼女にいいかっこしたいからチケット取りました~
みたいなカップルが多く、
その分、
歌い終わりなどの拍手のタイミングが遅かったり
盛り上がりが今ひとつな気もしました。

で、リュ・ジョンハンの時は、
私の周囲(2回とも5列目)は
女子が圧倒的に多かったです。
まあ、席の違いもあるのでしょうが…。
反応もそれはそれは熱かったです。
キャ~という歓声が響く感じ。
そんな中、私の隣はむくつけき、
体格のいい男性だったので、
きっと彼女の付き添いかなと思ったら
どうも一人で来ているようで、
しかも、5列目なのにオペラグラスを使って観ているのです。

私は一列目だったとしてもオケピの奥のほうで演技されると
思わずオペラグラス(というか、もはや双眼鏡です)で
観てしまう人間ですが、
韓国の人はあまりオペラグラスを使わないので
前の方の席で使うのはちょっと恥ずかしいのです。
でも隣の男性は私と同じタイミングで
オペラグラスを覗きこんでいて、
この人もリュ・ジョンハンをガン見してるんだなあと
思いました(笑)。

※左下がリナ

 

主役男子のことばかり書きましたが、
女性ではジキルの婚約者エマはすべてイ・ジヘで、
踊り子ルーシーを、
リサとリナという紛らわしい二人の
ルーシーで観ました。

イ・ジヘは前回の『ドラキュラ』が
とても良かったですから、
安定のヒロインという感じ。

リサは前回の『レベッカ』では
ダンバース婦人はまだちょっと
貫禄不足かなと思いましたが、
このルーシー役はとても良かったです。

で、驚いたのはリナです。
甘いアイドル顔で、
というか、そもそも天上智喜という
アイドルグループのメンバーですしね。
ミュージカルで活躍するようになってから
私が見たのは『太陽を抱く月』でのヒロイン役でした。
歌も安定していて
清純可憐な役どころが似合う人だわと思っていましたが、

ルーシー役を見て、
この人こんなにうまかったのね~と思わせられました。
10日前にミュージカル俳優さんと結婚したばかりの
新婚さんですが、甘い色香が漂ってました。

 

今回は、リュ・ジョンハンとチョ・スンウでしたが、
来年行った時には今回この役に初の抜擢となった
パク・ウンテさんの舞台も見てこようと思います。
あと、やはり『ドラキュラ』で素敵だった
チョ・ジョンウンさんのエマも楽しみです。
こうして『ジキル&ハイド』リピートが
止まらないのです~。

 

(2014年12月15日執筆)