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『ルドルフ』アン・ジェウクの初日

 

先週末からソウルにミュージカル観劇に
行って来ました。
6本見た中で、とっても良かったのが、
『ルドルフ』でした。

私が見たのはアン・ジェウクの初日です。
2年前の初演の時には
パク・ウンテさんで見ていたのですが、
何の予習もせずに、一度だけしか見ていないので、
記憶の中にしっかり定着していなかったんですよね。

私は、これまでの経験上、
言葉の壁がある韓国ミュージカルは、
一度見ただけでは感想を言えるレベルの思いが
湧き上がってこないタイプでして、
その時は、2幕が歌い上げ系の曲が多い歌合戦状態で、
ウンテさん、ものすごく歌がうまかったなあ
という印象しか残っていませんでした。

で、今回はメロデイーもちゃんと聴きこんで
予習をして臨んだところ、
とっても良かった~という感動を受けました。

特に、アン・ジェウクがとても魅力的だったのです。
冷えきった妻の前で見せる冷たいイラついた表情と、
愛しいマリーに向ける優しくて愛おしそうな眼差しの対比。
世の中を変えたいという正義感と革命の心、
父親と信念の違いで葛藤する苦悩や挫折感など、
硬と軟、明と暗の魅力が十二分に表現されていて
魅せられました。

歌も、堂々たる声量で、
演技力に裏打ちされた歌は素敵でした。
特に「平凡な男」という曲の時などは
絶望感を抱きながら切々と歌うので、
ルドルフの感情がずっしりと伝わってきて、
見ているこちらの胸も苦しくなったほどです。

予習をしていったこともあり、
アン・ジェウクもとっても良かったということもあり、
見ているあいだじゅう大満足でした。

 

そしてこの日は初日で、
アン・ジェウクにとっても
第1回目のステージだったので
アンコールで挨拶がありました。
この挨拶がまた良かったのです。

客席はすぐにスタンディングオベーションだったのですが、
その客席を嬉しそうに見つめながら、
アン・ジェウクが観客にお礼を伝え、
再演なので初演よりも良くしようと
みんなでより準備をした、ということなどを言い、
1月まで無事に公演を終えられるように応援して下さい
という挨拶をしたあとで、
客席にいた演出のロバート・ヨハンソンを呼びこみました。


ロバートさんが、まずアンサンブルの一人を指して、
彼は、この舞台の最中に子供が生まれたんですよ。
だから、ここにいる場合じゃない、早く行ってやりなさい!
とけしかけて、
実際に彼は舞台から引っ込んでいました(笑)。

そのあと、アン・ジェウクのところに来て彼の手を取り、
「彼は2年前の公演の後、病に倒れたから
本当に心配して再び舞台に戻れるのかと思っていたけど、
見事に復帰してくれた~」みたいなことを言って
そのことについての挨拶をアン・ジェウクに促したんです。

もうそのへんからアン・ジェウクはグッときていた感じで、
「こんな話をするつもりじゃなかったけど~」と切り出して、
初演のソウル公演の数日後に倒れてしまって、
地方公演に行けなかったので
彼はこの作品には借りがあると思っていたんですね。
なので、誰よりもこのルドルフの公演を
期待して待っていたようで、
心を砕いて準備をしたようでした。

なので、この初日は
特に思い入れが強かったのだということがすごく伝わってきて、
「こうして舞台でまたみんなと一緒に出来る機会を頂けて
本当に有難うございます」
と、声をつまらせながら、涙ぐみながらの挨拶で、
会場中もウルウルでした。

そして、気持ちを切り替えるように
舞台上全員で挨拶すると、
舞台にはアン・ジェウクとヒロインの
チェ・ヒョンジュさんだけになり、
2人はまた役柄のルドルフとマリーに戻って、
雪が降る中を幸せそうに空を見上げ、
見つめ合い、キスをして、
余韻を残して幕が閉まりました。

はぁ~素敵でした~。

なので、この日は、舞台に感動し、
その後の挨拶でも感動して
2倍においしい舞台でした。

 

(2014年10月14日執筆)