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『ウェルテルの恋』プレスツアーリポート、キム・ダヒョン編

もう一人のキム・ダヒョンさんには、
取材の前から驚かされました。

まず、彼はこの日の出演者だったので、
初日の本番前に取材を受けてくれたことにびっくり。

さらに、遅れて取材会場にやってきたんですが、
その理由が
「地方でドラマの撮影をしていたから」
だったんです!
舞台の初日に他の仕事、
しかも地方で入れるってことあるのね…とびっくり。

ダヒョンさんは
ミュージカルそのものには慣れているベテランだけど、
03年にミュージカルデビューした作品の再演という
大事な舞台なのに……、韓国恐るべし、
というカルチャーギャップを感じました。

同じ日に取材した演出のキム・ミンジョンさんにも
途中で何度も舞台監督から
「今、どこですか?」と電話がかかってきていましたが……(笑)。
そりゃそうです、
初日の幕開き3時間前というようなタイミングだったのですから。

キム・ダヒョンさんはドラマにも出ていて、
私は『乾パン先生とこんぺいとう』で演じた、
ヒロインの初恋の人役で初めて知りました。
そのほか、
『1年に12人の男』『王と私』『ペク・ドンス』
などにも出ています。
今は主にミュージカルで活躍していますが、
デビューは、
ビジュアル系のロックグループYADAのメンバーとして。
ただ、高校時代に『オペラ座の怪人』や
『ジーザス・クライスト・スーパースター』といった
有名な曲を聴いて戦慄が走って以来、
夢はミュージカルに出演することだったそうで、
当時も、ポップスではなく、
ミュージカルの曲ばかりを聞いていたそうです。

歌手としてデビュー後、
2003年の『ウェルテルの恋』で
念願かなってミュージカルに出演。

「その時は本当に演出家に言われるままやっていた。
でも、それから9年たって、
20代から30代になった僕の演技を見てもらえると思う。
僕なりに9年間、培ったノウハウもあるのでお楽しみに」

と語っていました。

2003年の公演を見たファンが
“純粋な情熱のキム・ダヒョン”
というキャッチフレーズをつけてくれて、
それがファンカフェの名前になっているそうなんですが、
今はまた、それとは違う、
「純粋さを越えた何か」を見せたいそうです。
「愛は嫉妬や怒りなど、
多様なものをもっているからそれを表現したい」
と話していました。


キム・ダヒョンさんの話はすごくクレバーで
表現力も豊かだったので、
引き込まれて「彼の舞台を見たい」と思わされました。
彼は「ミュージカル界のF4」
「ミュージカル界のウォンビン」と言われているそうで、
これまで何かと “花” という修飾語をつけて
評されることが多い美形俳優なんです。

私も見た今年の『ラ・カージュ』の舞台でも、
彼の女装姿がとても美しくて評判になりました。

でも本人は「もう、花はいいかな(笑)」と言っていて、
最近は細やかな演技を評して、
ファンから「ディテール、キム」と呼ばれているそうで、
その呼び方をすごく気に入っているようでした。
そして、
「(実際の姿は)観客のみなさんが日本で見て判断してください」
と言っていました。
韓国のミュージカルの魅力はエモーショナルなところということ。
特に『ウェルテルの恋』は
韓国の創作ミュージカルの中でも最高のものだと思っているので、
「その作品で日本に行けることは本当にうれしい。
日本のファンに会いたかったです」と言っていました。

この作品の後は『ロック・オブ・エイジズ』に出るということで、
激しいものから切ないものまで多彩に活躍していますね。

演出のキム・ミンジョンさんは
キム・ダヒョンさんについて
「美しく、繊細。だけど、一瞬にして燃えるように情熱的になる。
とにかく、2人ともとても美しいです。
ウェルテルというキャラクターはとても美しい。
彼を拒絶することは難しいです」
と話していました。

今まで日本に入ってくる韓国のミュージカルは
集客のこともあって、
K-POPの歌手が出演する作品が主流でしたが、
今回は
「それだけではお客さんが離れてしまう。
ぜひ、一流の人たちの出演するものを見てほしい」
ということで招聘が企画された来日公演です。

値段も極力抑えていて、
「日本にはまだ知られていないけれども、
実力あるこの人たちを見よ!」
という主催者の心意気に拍手を送りたいです。

私自身も日本で公演されるものを見ては
「まだまだこんなものではない!」
という忸怩たる思いを抱いていたので、
韓国ミュージカルが日本に根付くためにも、
とても期待しています。
2人のキャストの違いも楽しみたいですね。

1月11日(金)から26日(土)まで
赤坂ACTシアターで行われるミュージカル
『ウェルテルの恋』は、
韓国ミュージカルの実力を知るいい機会なので、
韓流ファンだけでなく、
ミュージカルが好きな方にもぜひ見てもらいたいです。

 

(2012年11月15日執筆)