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創作ミュージカル隆盛の背景:韓国ミュージカルの現場その②

 

今、韓国はミュージカルが花盛りで、
その中でも創作ミュージカルがたくさん生まれているのが
日本との違いかなと思っています。

7月に韓国で行った取材では、
その最前線で活躍するCJ E&Mの公演制作部のプロデューサー、
イェ・チュヨルさんにお話を聞くことができました。

そもそも韓国では
2001年に『オペラ座の怪人』の初演が成功したことで
「ミュージカルは大衆的に親しんでもらえるし、
映画と違って生の舞台を楽しんでもらえる。
そういう客層が狙える」
ということがわかり、
海外で作られたミュージカルを韓国人キャストで制作する
“ライセンスもの”の上演が始まったそうです。

『ジキルとハイド』や『ラ・マンチャの男』を
日本でも上演したODカンパニーや
『GAMBLER~黄金の鍵~』の日本公演をした
シンシ・ミュージカル・カンパニーといったところが第一世代で、
大きく華やかなミュージカルを制作してきました。

そして、それらの作品を見て育った若手が、
今、ミュージカルの作り手となって、
自分たちの自由な発想で作れる創作ミュージカルを生み出し、
06年あたりから形になり始めてきたとのこと。

ただ、中小の規模のものは
だいぶクオリティが上がってきたけれど、
大劇場でかけるようなものは、
ライセンスものと比べると
まだちょっと興行的には厳しいとのことでした。

イェさんは
「でも、5年後くらいには、
ライセンスものに負けないくらいに育っていると思うよ」
と言ってましたね。

中小の劇場が建ち並ぶ韓国の演劇街である大学路では、
ストレートプレイを含めて年間200くらいの新作がかかり、
そのうちの半分が韓国オリジナルミュージカル。
200本のうち、興行的に成功するのは10本で、
そのうちの8、9本は創作ミュージカルだそうです。

CJは03年の『マンマ・ミーア』からミュージカル上演に参入して、
06年の『キム・ジョンウク探し』
(映画化タイトル『あなたの初恋探します』)から
創作ミュージカルの制作を始めたそうです。

イェさんが初演から担当してきた『キム・ジョンウク探し』は
ロングラン上演されていて、
毎回お客さんを呼び込むために
2年に1回は作り直しているということ。
現在はシーズン7が上演されています。

06年当時はクリエイターも仕組みもまだ整っていなかったので、
「小さな作品から作っていこう」ということで選ばれた作品で、
「キャストが3人だけなので長くやっていきやすい」
「テーマが初恋で誰にでも共感してもらえる」
「3人のうちの1人であるマルチマンは、23役もやるので、
おもしろみを提供できる」
という三つの理由が決め手となったそうです。

“マルチマン”という役割の人物が初めて登場したミュージカルで、
終演日を前もって決めずに上演を続ける “オープンラン”
という形式での興行を行ったのも初めてだったそうです。

初演の時には100人くらいだったオーディション参加者は、
最近は500人になり、
ミュージカル俳優を目指している人が増えていることを
実感しているようでした。

各大学にも10年ほど前から、
映画・演劇科だけでなくミュージカル科が
設置されるようになってきたといいます。

『キム・ジョンウク探し』以外にも、
創作ミュージカルのほとんどはロマンティック・コメディで、
女性の観客が男優を見にくるという図式になっているそうです。

 

 

(2013年7月23日執筆)