ドラマ解説

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タイトル 初恋
韓国放送年 1996年~1997年 全66話
演出 イ・ウンジン
脚本 チョ・ソヘ
出演 チェ・スジョン ペ・ヨンジュン イ・スンヨン チェ・ジウ

【 ドラマ紹介 】

<ドラマ概要>

『初恋』は、ドラマ王国韓国で
最高視聴率65.8%という脅威の数字を叩き出し
歴代視聴率ナンバーワンという栄光に輝いている作品です。

韓国経済の成長期の70年代から
88年のソウルオリンピックに至る
活気とエネルギーが溢れていた時代の市民の暮らしと、
人々の心などを描いていて、
貧しい家の少年が裕福な家のお嬢様に恋をしたばかりに、
20年の長きに渡って双方の家族を巻き込んだ因縁が
繰り広げられます。

貧乏なチャニョク(チェ・スジョン)と
チャヌ(ペ・ヨンジュン)の兄弟が、
裕福な少女ヒョギョンを好きになったがために
運命を狂わされます。

チャニョクは1人の女性を愛したがために、
絵の才能も生かせず、高校中退を余儀なくされ、
無理やり軍隊にも行かされ、果ては足までも不自由になってしまう。
一人の女性を愛した代償にしてはあまりにも大きすぎる犠牲。
それでも恋うる思いは断ちがたく、
そこまで人を愛せて幸せなのか、不幸なのか、
考えさせられてしまうくらい、全身全霊を初恋に捧げた物語です。

 

<見どころ&感想>

愛のために苦難を強いられる主人公をチェ・スジョンが演じ、
ペ・ヨンジュンは、その弟役で、兄の悲哀、
家族が味わった無念、全てを背負って復讐に燃えていきます。

反抗的でちょっとワイルドな姿から、
苦学生を経て冷徹なビジネスマンに変貌していく様が見られ、
ペ・ヨンジュンはこの作品で、
ナイーブさと反骨心をあわせもつ、
韓国のジェームズ・ディーンという高い評価を受けました。

またチェ・ジウが、ペ・ヨンジュンに片思いする
お金持ちのお嬢様役で登場し、
そのはつらつとした印象が好評で、
このドラマで大きく飛躍しました。

チャニョクとチャヌの一家は暮らしぶりこそ質素ですが、
ふがいない父を子どもたちは尊敬し、
心を通わせあいながら、懸命に美しく生きています。

そんな彼らに対して金持ちのヒョギョンの父は、
「身分をわきまえろ!」と侮蔑の言葉を平気で投げつけ、
チャニョクは数々の屈辱的な思いをさせられる。

これはきっと当時の多くの韓国民の姿だったに違いない。
いわれなき屈辱に耐え、
いつか力を持ってやると恨を抱いて生きている。
韓国ドラマにどうしてこうも強い成功欲がよく描かれるのか、
このドラマを見ているとわかる気がします。

 

こうしたメインの初恋と復讐の流れに沿うように、
貧しくとも心を通い合わせて懸命に生きるあるべき家族の姿、
我が身を犠牲にしても相手を思いやる友情などが
丁寧に描写されていきます。

ちょっとトロいけど家族のために一生懸命に働く
姉チャノクの健気さと明るさ、
そして何があっても幼い頃からの変わらぬ友情を見せる
ドンパルの存在は、このドラマのオアシスになっていますし、
ちょっとはすっぱで情に厚い幼なじみのシンジャも
チャニョクへの初恋を貫き通します。
このドラマは様々な人間の‘変わらぬ心’が
集約されていく物語でもあります。

最後、復讐心から解き放たれたかのように、
やっと自分のために生きよう、勉強しようと思えるようになった
チャヌの気持ちが救いで、
家族の一員になった気分でドラマを見ていた私にとっては、
ひとつの時代に終止符が打たれるのを見届けたような
感動に包まれました。