韓流ソムリエ 田代親世の韓国エンタメナビゲート

『あの青い草原の上に』は、身分違いの大ロマンスをメインに描きながら、幸せの意味や、希望を与えてくれる作品です。タイトルからして地味で、しかも５２話という長編ドラマなので見始めるのがためらわれるかもしれませんが、これが実にいいドラマで、鑑賞後は胸の中にじ～んと温かなものが広がります。

「あの青い草原の上に絵のような家を建てて家族と一緒に暮らしたい」そんな素朴なことが夢だと語る男。彼は実直でお人よしのサラリーマンで、貧しく苦労のたえない中で、弟や妹の面倒を見ながら、それでもいつも笑顔を絶やさず暮らしています。そんな彼がある日恋に落ちました。相手は才色兼備の小児科医で婚約者もいるお嬢様。自分の置かれている境遇とはあまりにも違う相手を前にして、彼女の迷惑になるからと、好きな思いを決して口に出してはいけないと気持ちを押し殺そうとしますが、次第に彼女も彼の誠実な人柄に惹かれていきます。

多くを望まず、日々を懸命に生きてきた男の愚直なまでに真っ正直な愛が胸を打ち、どうか彼に幸せになってもらいたいと思わずにはいられません。

身の丈を知り、今あるものを大切に守りながら日々を誠実に生きる人間が出会うささやかな幸福の形に、私は、日本映画の名作『たそがれ清兵衛』を見たときにも似た心地よい感動を覚えました。

このドラマの核となる大ロマンスを繰り広げるのは『初恋』のチェ・スジョンと『イヴのすべて』『四姉妹物語』のチェリムです。中盤までは、この２人が周囲に反対され、身を引き裂かれんばかりの、涙涙の切ない思いが描かれ、終盤は家族愛へと広がっていきます。マニアファンを生み出したドラマ『復活』を手がけた監督と作家による作品です。