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男性主役中心から女性作品も。韓国映画の「改革」で輝く、チョン・ドヨン

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2006年12月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

今、韓国映画界を代表する演技派女優といえば、この人、チョン・ドヨン。映画『スキャンダル』では、ペ・ヨンジュンの恋の相手に扮し、全裸となってのベッドシーンも大胆に演じて見せたのは記憶に新しいだろう。

映画界を背負って立つ女優と認知されてからもう約10年近くになる。ドラマの『若者のひなた』や『別れの六段階』でペ・ヨンジュンの相手役として共演したり、『星に願いを』で主人公の親友役で登場しているが、ドラマだけをやっていた時代は‘平凡で無難な女優’という感じで、そこまでの高い評価を得るような女優ではなかったという。それが、97年初めての映画『接続』に出てから周囲の認識が変わったのである。映画デビューにしてその年の韓国映画の観客動員数トップを飾る大ヒット作となり、新人女優賞を総なめにするなど演技者としての大きな転換点となった。

その後も着実に評価を高め、韓国映画を率いるトップ女優の一人となった。テレビ界から映画界へ転身して成功した例は珍しく、彼女は映画界の掘り出し物といわれたものだ。

しかし、悲しいかな韓国映画はスター俳優、それも男優中心の傾向が強いので、チョン・ドヨンでさえ、残念な状況に置かれることがあったという。


「多くの人は私に対して山ほどのシナリオが送られてきて、その中から選んでいるのではないかとすごくうらやましがられますが、実際は2、3しかない中で選んでいるということもありました。そんな状況はすごく落ち込みますし、こんなことが続くのならいい人と結婚してしまうのが幸せではないかと考えたこともありました」

きっとこのころだと思うが、5年ぶりにテレビの世界に復帰した。それが『星を射る』(02年)。結婚の夢破れた女が、マネージャーとしてスター志望の青年をサポートするうちに恋に落ちていくという物語で、どんなにひどい目に会おうとも、恋する男のために常に明るく頑張るチョン・ドヨンの姿は、水を得た魚のように生き生きして見えた。これはイ・ジャンス監督に、自分の魅力が引き出せる作品を作って欲しいとお願いして出来上がった作品だそう。そうこうするうちに映画界にも変化が現れたそうだ。

「男性中心の話も出尽くすとストーリー重視のものへ趣向が流れていくし、トレンドが変わってきました。そんな流れの中で、そのときに自分が必要とされる作品に出てみたいと思うようになりました。女優という仕事は今だけの仕事ではなく生涯かけてやっていく仕事なのであせることはない、ひとつひとつを一生懸命に、頑張れるまでやっていこうと思っています」

演技力があるだけに、演じたいと思うような役に巡りあえず、男優たちがいい役で活躍している姿を横目で見ているしかないという状況は辛かっただろう。だが実際、最近彼女が出演した『初恋のアルバム~人魚姫のいた島~』(04年)も、最新作の『ユア・マイ・サンシャイン』(05年)も女性が主役の映画だった。今後も彼女の魅力が輝くような作品がたくさん出てきてくれることを期待したい。そうでないと、韓国映画界も宝の持ち腐れとなってしまう。

延長戦コラム

韓国No,1ヒットの恋愛映画『ユア・マイ・サンシャイン』。チョン・ドヨンの渾身の演技に注目

チョン・ドヨンが主演した『ユア・マイ・サンシャイン』は韓国において、当時、恋愛映画というジャンルで最も観客を動員した映画だ。田舎の純朴な男性と、すれて生きてこざるを得なかった女性の愛。HIVに侵されてしまった女性を一心に愛しぬく男の純情が胸を打つ、実際のカップルを題材にした物語だ。主演のチョン・ドヨンは、「私はシナリオを最も重視するので、これまでに出た8本はすべてシナリオで選んできました。でも『ユア・マイ・サンシャイン』は実話に基づいた話ですが、あまりに強烈な内容なので信じられず、自分の中で受け入れることができなかったので容易に出演するとはいえなかった」と語る。

そんな彼女の考えを変えさせたのが2枚の写真だった。「健康そうな男性と、その彼が数ヵ月後に白髪交じりですっかりやつれてしまった写真を見せられ、彼をここまで変えた愛とはなんなのだろうと知りたくなった」のだという。

「監督がシナリオを書く時に私を念頭に置いて書いてくださった。特にあれこれ作り上げる必要はなくチョン・ドヨンらしく演じてくれればいいと言われ、たくさん愛されながら撮影できたので幸せでした」

名女優といい役との出会いは、観客にとっても幸せなことだと証明してくれる作品になっている。

 

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