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‘カメレオン’‘水’が韓国のトップ俳優の条件!?

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2004年8月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

韓国ではトップスターが、出演する作品によってガラリと印象を変え、全くの別人として登場するのでよく驚かされる。例えば『冬のソナタ』では、ペ・ヨンジュンが一人二役で出ているが、同じ作品の中でも違いが出ているといういい例だ。まず1、2話の高校時代の孤独な男子学生と3話以降に出てくる明るく社交的で少々プレイボーイ的な男性の演技では放つ印象が見事に違う。ヘアメイク、身につける衣装といった姿かたちの作りこみも徹底しているが、高校時代の人生に冷めたような少年の目の色、少年特有の青さ、頑なさなどと、成人してからの余裕のある眼差し、満ち溢れる自信、屈託のない微笑など、取り巻いている雰囲気そのものが全く違って登場している。そして極め付けが初めて出演した映画『スキャンダル』での役柄だ。人々が抱いている‘微笑の貴公子’ペ・ヨンジュンのイメージを180度くつがえし、朝鮮時代の、危険な香りを放つ趣味人貴族を演じて、ファンを驚かせた。


また、NHKBSで現在放送中の『オールイン運命の愛』に出ているイ・ビョンホンも、そうした演技者の一人だ。映画の『JSA』で日本に初お目見えしたときには、泣いたり、笑ったり、感情豊かなごく平凡な韓国兵士というイメージだったが、『美しき日々』では大手レコード会社の御曹司として、前髪を長めに伸ばし、屈折した感情を押さえ込み、クールで耽美的な美しさが際立っていた。『オールイン運命の愛』では、社会の底辺で生まれ育ってきた男の荒っぽさをにじませ、切ない人生を生きざるをえない男の生き様をのびのびと演技している。また『Happy Together』では2軍落ちのプロ野球選手役で、直情型で単細胞の兄ちゃんだけに、喜怒哀楽が激しくて、時には情けなく、だらしなく、でも情に厚いという人間味たっぷりの男性を演じ、どれも、それぞれの魅力を出しながら別人格を作り上げているのだ。

イ・ビョンホンはデビュー以降タフガイ青春スターとして活躍していたのだが、演技について常に模索していたという。4年前にインタビューしたときには、ダスティン・ホフマンのように役柄に忠実で水のように姿を変える自然な俳優になるのか、アル・パチーノやトム・クルーズのように、個性がものすごく強くて、その人のキャラクターが前面に出るスターになるのか、どちらの方向でやっていくべきか葛藤した時期があったと語っていた。そのときの結論は、「俳優だったら少なくとも2つ以上のキャラクターを演じられなければいけない」ということで、いろんな役柄に挑戦しているのだという。

他にも‘カメレオン俳優’と呼ばれるソル・ギョングや‘水のような俳優’といわれるイ・ソンジェなどを始め、多くのスターがその時々によって顔も雰囲気も違えて現れるので、次はどんな風に変化するのか見るのが楽しみになってくる。

韓国スターたちはよくインタビューでも「また違った姿をお見せしなくては…」などと言っているし、常に違う自分、新たな魅力を出そうと躍起になっているところがある。そうした背景には、俳優は演技力で勝負しなくてはという役者魂が強いので、自分の魅力云々よりも役を消化することに全精力を注ぐ傾向にあるということと、韓国の人は飽きっぽいので、いつも同じようなキャラクター、役柄では観客、視聴者に飽きられてしまうという理由があるようだ。こうした厳しい環境が俳優を育てていくのである。

延長戦コラム

韓国の新・スターの条件 「モムチャン」とは…

最近の韓国で、スターを形容するときによく使われる言葉は、「モムチャン」だ。「モム」とは日本語で「身体」で、「チャン」は「最高」という意味で、「最高の身体」つまりナイスバディーのこと。一重まぶたでシュッとした細面の顔立ちのスターでも、脱ぐと筋骨隆々でひき締まった身体をしているので、そのギャップにびっくりするほど。

現在韓国で人気ナンバーワンのスターが、この代表的なモムチャンのクォン・サンウという俳優。DVDなどで発売中の映画『火山高』でその勇姿を見ることが出来るが、腹筋が王の字に割れていたり、胸襟がほどよく盛り上がっていて、あくまでも韓国風のバランスのよい身体が魅力的だ。

男が男らしくという儒教精神の強い韓国、ましてや兵役が義務としてあるので、タフガイというのは男としての重要な条件。趣味の欄にもボディービルなどと書く人も多く、ペ・ヨンジュンも週に6日、毎日2時間半づつトレーニングしているという。韓国では俳優である以上は、演技力だけでなく、美しい身体を維持し、鍛えることも求められているのだ。