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決して順調なだけじゃなかった『冬ソナ』のヒロイン、チェ・ジウのブレイクまでの道

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2004年6月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

いよいよNHK地上波での放送が始まった『冬のソナタ』。3月には主演女優のチェ・ジウも来日して特別番組に登場し、放送を盛り上げた。

さて、読者の中にもこれだけ社会現象として取り上げられるようになった韓国ドラマのヒロインが一体どういう女性なのか興味が出てきたのではないだろうか。

チェ・ジウは現在韓国では視聴率女王と呼ばれるほど、出るドラマ出るドラマ高視聴率を獲得している。また清純なイメージで、強い個性が邪魔をしないせいか、スター男優との共演がスーッとはまるのだ。『冬のソナタ』ではペ・ヨンジュン、『美しき日々』ではイ・ビョンホン、『真実』ではリュ・シウォン、そして今年出演した『天国の階段』ではクォン・サンウと、続けざまにかっこいい大スターとばかり組んでいる。


『冬のソナタ』のユン・ソクホ監督も「はじめて見た時からいつか一緒に仕事をしたいと思っていた」と語り、今回の起用も「純粋なイメージの女性に演じてもらいたかった」ということでのキャスティングだった。そう、チェ・ジウは清純美人なのだ。化粧の濃い、きつい美女の多い韓国では、彼女の優しそうでしとやかそうな雰囲気は特に男性から支持が高いそうだ。

チェ・ジウは「涙のヒロイン」と呼ばれるほど悲しいラブロマンスの主人公を演じることが多い。やはり韓国ドラマは泣かせが多いので、男優女優を問わずに泣きの演技が決め手となるのかもしれない。チェ・ジウは特にさめざめと涙を流す姿が美しいといわれている。

今日までの彼女の歩みを振り返ってみれば、94年にMBCテレビ局のタレントオーディションに合格したのがキャリアのスタートだ。デビュー1年目に出た解放50周年記念ドラマの『戦争と愛』で、挺身隊の女性に扮して自ら命を絶つ悲運の女性を演じて好評を得た。そして96年には時代劇『帰天図』で主演映画デビューという好機に恵まれるが、撮影を少しした段階で途中降板の憂き目にあってしまう。監督の交代やシナリオの大幅な変更などの制作側の事情に加え、スクリーン演技に適応するのが難しかったためといわれているが、チェ・ジウにとってはこのときは虚脱感に見舞われ、何日も涙に暮れるほどつらい時期だったという。

だがこの経験が彼女を強くした。自分の実力不足を痛感した彼女は2ヶ月の間、映画を見まくり、鏡の前で一日2、3時間ずつ表情演技の練習に励んだという。そうした中で、再び新人として取り組むつもりで出たのが、ある映画のイベントで行われた韓国のイザベル・アジャーニ選抜大会だった。ここでチェ・ジウは大賞に選ばれ、これをきっかけにして再び巻き返しを図ることになったのだ。それ以降は96年から97年にかけて放送された『初恋』で注目され、今日の成功へとつながっている。

『冬のソナタ』の特別番組では、ドラマで演じているよりもかわいらしいしゃべり方で、ポワンとした雰囲気の女性だったが、演技にかけては努力の人。何の苦労もなくスターの階段を上ってきたわけではないのだ。

延長戦コラム

どんな不幸な状況でも凛とした強さ。韓国で愛されるヒロインの条件

チェ・ジウが注目を浴びることになった『初恋』は70~90年代を背景にした幼なじみの愛や二つの家族の葛藤などを描いたドラマ。この中で彼女が演じたのは助演だったが、堂々として、はっきりと意見を主張する独立心旺盛なお金持ちのお嬢様役だった。『冬のソナタ』のペ・ヨンジュンとの初共演作で、ここではペ・ヨンジュンに片思いするが、堂々としていてはつらつとした女子大生を演じて大いに注目された。

彼女の出演作の中で最も高い視聴率を誇るのが2000年放送の最高54%を越えた『真実』だ。議員の運転手の娘で、議員の邸宅の地下に住んでいる優等生の役。気立てがよく財閥の息子と恋に落ちるが、育ちの違いに相手の親から反対にあったり、交通事故の濡れぎぬを着せられたりと相次ぐ困難に見舞われる。『美しき日々』では孤児院出身の苦労人。今年韓国で放送され視聴率40%を超えた『天国の階段』では、記憶喪失になって、愛する男性と結ばれるも病気になって失明してしまうという薄幸な役。チェ・ジウはいつもこれでもかという事件や事情に振り回されるが、その中にあってもリンとした強さが感じられるのが魅力である。一見か弱そうでも自分の意見をしっかり言うのが韓国で愛されるヒロイン像なのだ。