取材レポ・コラム
日本人の俳優志望者が韓国の映画、ドラマでデビューするには―!?日韓エンタメ交流事情
オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2003年10月号より(※掲載元の許可を得て載せています)
ワールドカップサッカーの日韓共催をきっかけに、韓国映画に日本人俳優が出演したり、また日本のドラマに韓国人が出たりという交流が盛んである。目立つところで言えば、NHKハングル講座でおなじみの笛木優子が韓国に渡り、テレビドラマで韓国デビューした。当時はまだ韓国語がうまく話せないということで、話さなくてもすむ聾唖の韓国人少女の役を演じたのはデ・ビューの読者なら既にご存知の話だろう。日本では認知度の高くなかった彼女だが、韓国で人気者になり、逆輸入という形で今日本でも注目を集めている。
今年春に日本で公開された畑山隆則主演の『round1』における韓国女優のソン・ソンミの存在も面白い。韓国のやくざを絡めただまし合いを軽快に描いた作品の中で、彼女は詐欺一味の女性を演じている。だが、特に在日とか、日本人などという言及もなく、流暢な日本語を話している。つまり、わざわざ韓国女優がやる必然性は全くないのだが、魅力的な素材だから起用したというスタンスが見て取れる。日本人と韓国人は顔立ちが似ているので、こうした抜擢も全く違和感がない。
合作では有名人が起用される場合と、新人が抜擢される場合とがある。例えば韓国と日本両方で封切られた『純愛譜-じゅんあいふ』では、韓国側からは若手のトップスター、イ・ジョンジェが出演する一方で、日本の主人公はオーディションで選ばれた新人の橘実里だった。映画自体は残念ながら韓国でもそれほどヒットはしなかったが、なにせ相手役がトップの人気スターなだけに彼女は韓国で注目され、日本人女優として初めて有名映画雑誌の表紙を飾るに至った。橘実里は日本ではまだCMやドラマの助演としてしか認知されていない存在だったが、この作品一本で、韓国では多くの人が知る有名日本人という地位を築いたのだ。新人にもこうしたチャンスが待ち受けている。
有名人が出た例としては、日本でも公開予定の『ロストメモリーズ』が挙げられる。この映画には日本も資本提供をしているが、設定自体が、「1909年に伊藤博文の暗殺が失敗に終わり、2009年の韓国はいまだに日本の統治下にあって日本の第3都市となっていた」という大胆なもので、韓国人俳優たちも韓国系日本人という設定なので日本語を話しているのだ。この作品には仲村トオルをはじめ多くの日本人俳優たちが出演しているが、特に仲村トオルはこの作品で韓国のアカデミー賞にあたる権威のある大鐘賞で外国人俳優として初めて最優秀助演男優賞を受賞するという快挙を遂げている。
また、合作でなく、純粋な韓国映画に日本人が登場するということで日本人俳優が起用される例もある。『爆裂野球団』は朝鮮で最初の野球団が出来た頃の物語で、日本占領軍が出てくるため、伊武雅刀や鈴木一真がキャスティングされた。日本の映画会社が間に入ってキャスティングを手伝ったそうだが、韓国の新聞報道によれば、二人ともキャスティング依頼を受けて、『JSA』で素晴らしい演技を披露していたソン・ガンホが主演する映画ということで快く引き受けることにしたと書かれていた。このように韓国映画の魅力が日本でも十分に知られてきている今では、俳優たちも韓国映画に対してリスペクトし、オファーを受けやすいのだろう。
一方のテレビでは、このところ日本人役が登場するドラマが相次いでいる。ひとつは去年から今年にかけて人気を集めた『野人時代』だ。これは日本占領下の韓国の英雄的人物を主人公にしたストーリーだけに、日本人がたくさん出てくるが、いずれも韓国人が演じている。だからどうしても日本語のセリフがおかしいし、何をしゃべっているんだかよく聞き取れないこともある。また今年春から放送された『千年の愛』というSFロマンチックラブストーリーでも日本人の華族の青年が出てくるが、これもやはり韓国人俳優が演じているため日本語がぎこちない。こうした場合、韓国語が得意な日本人俳優がいたら出演依頼が来る可能性は高いだろうなと思うのである。
タレントとしてグローバルな活躍を望む人は、英語も大事だが、これからは韓国語を話せるようになっておくというのも価値が高いと思う次第なのである。