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海外タレントも韓国CMとミュージックビデオで存在をアピール!

オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2003年4月号より(※掲載元の許可を得て載せています)

韓国でスターとしての存在を知らしめる手段として、映画、ドラマのほかに、CMや、ミュージックビデオがある。この二つはしゃべらなくても成立するため、韓国語がそんなに上手じゃない日本人タレントにも活路が見い出せる媒体だ。

CMでは、これまでは日本人と言うことに抵抗感を覚えてスポンサーも日本人を使うことを控えていたかもしれないが、そんな意識も徐々になくなりつつある。日本人で初めて韓国企業のCMに出たのは、1999年、当時Y2Kとしてデビューし、韓国で大人気だった松尾光次(現DOGGY BAG)だ。チョコレートのCMに出て話題になった。

2001年にドラマで韓国デビューしたユミン(笛木優子)も去年からCMに出始めている。飲料やシャンプーのCMにチャン・ドンゴン(『チング 友へ』『イヴのすべて』に出演)、イ・ビョンホン(『JSA』に出演)といういずれも韓国の大スターとカップルで出演し、その後芳香剤のCMに今度は単独で起用されるようになった。また昨年秋には松下電工のドライヤーの韓国、中国、台湾、香港といったアジア地域のCMのモデルにも抜擢された。CMは、ある程度の認知度や人気があったほうが有利なため、日本の新人タレントにとってはまだ難しさもあるかもしれない。しかしもうひとつの媒体、ミュージックビデオはこの限りではない。


韓国のミュージックビデオは日本と比べ物にならないくらい露出が高く、しかも芸術的にも認知されていると言っていい。地上波を始め、ケーブルテレビの音楽専門チャンネルなどで繰り返し流され、ミュージックビデオの出来がCDの売り上げを決めるほど影響力がある。近年主流となっているのは、歌っている歌手が出ずに、スター俳優たちが映画のような物語を演じるというミュージックビデオだ。バラードにあわせ、4,5分に凝縮された完成度の高い映像世界が繰り広げられる。

有名歌手の新曲の場合、発表する前からミュージックビデオ自体に注目が集まり、今度は誰がどんな物語を演じるのだろうと期待される。上にも挙げたイ・ビョンホンや、チャン・ドンゴンといったトップスターもミュージックビデオに出演している。日本で言えば、ほかの歌手のミュージックビデオに織田裕二や木村拓哉が出るようなものだ。有名スターが出る場合、その相手役は新人が多い。有名スターが出演するという段階でそのビデオの成功は約束されたようなもの。自然と一緒に出る新人にも注目が集まり、いきなり知名度が上がるのだ。最近はこのミュージックビデオというツールでブレイクする新人はCM以上に多くなっているかもしれない。

韓国人以外の出演では、香港系のスターが目立つ。『花様年華』でカンヌ映画祭最優秀男優賞を受賞したトニー・レオン、『天使の涙』『漂流街』のミッシェル・リー、『グリーンディスティニー』の台湾俳優チャン・チェンという、そうそうたるメンバーが出演している。それだけ韓国のミュージックビデオに対する信頼感があると言うことだ。

日本人では私の知る限り、1999年にモデルの畦地令子がヒップホップユニット、タシャーニのミュージックビデオに、次に2001年久我陽子がロック歌手キム・ギョンホの作品に出演している。韓国人と日本人は顔が似ているので彼女たちが日本人だと言うことに気づかずにミュージックビデオを見ている人が多いだろう。だからこそ、日本人タレントにとって、ミュージックビデオは韓国の新人タレントたちと張り合える分野なのではないだろうか。

延長線コラム

韓国のミュージックビデオがこれほど注目を浴びるようになったのは98年ごろからだ。チョ・ソンモという歌手のデビュー曲「To Heaven」というバラード曲に、ドラマ作家を起用し、スター俳優を配して、「父を殺した悪人たちに復讐を誓う男と花屋の女性との悲恋」をドラマチックに描いたのが始まりだった。これでイ・ビョンホンと共演した新人女優のキム・ハヌルが脚光を浴びた。

またこれ以降チョ・ソンモは曲を出すたびに映画のようなビデオを発表し続け、これと共にチョ・ソンモも国民歌手へと成長していった。3枚目のアルバムの「アシナヨ(知ってますか)」ではベトナム戦争を題材にフィリピンロケを敢行し、このビデオで『火山高』のシン・ミナが大きな注目を浴びた。

日本で撮影している作品も多く、特に韓国で日本映画の『Love Letter』がヒットしてからは、北海道の小樽がミュージックビデオのロケ地として人気になった。『JSA』『春の日は過ぎ行く』のイ・ヨンエや『燃ゆる月』のキム・ソックン、そしてミッシェル・リーなども小樽でロケをしている。このため小樽は韓国人の旅行者が3倍に増加したほどの効果を生み出しているそうだ。