取材レポ・コラム
韓国の芸能養成学校の現状は?
オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2003年3月号より(※掲載元の許可を得て載せています)
韓国では、前にもこのコラムで書いたように、大学の中に演劇映画科(大きく分けて演劇、映画、放送演芸科がある)が多く存在するので、俳優養成所の数は少ない。だが、そのなかでも韓国放送文化院は、現在活躍しているタレントたちのほとんどがここの出身のため、‘芸能人士官学校’と呼ばれている芸能人の養成所だ。
韓国放送文化院は1987年に国の許可を得て作られた教育機関。その当時10校ぐらいの小さな養成機関はあったが、純粋な演技の教育だけで、そこで学んだ生徒たちを芸能界に送り出すシステムが無かった。その状況を改善しようと、放送文化院では、MTMというマネージメント機関、いわば芸能プロダクションを併設して、養成から仕事の斡旋までの一元化を目指したという。そのためほとんどのタレント志望者がここで学ぶようになり、そのほかの養成所は3校ぐらいという、いわば放送文化院の一人勝ちに状態になっている。
日本で知られているところで言えば、『八月のクリスマス』『カル』のシム・ウナがここからMBCのオーディションに合格した。ほかにも『イヴのすべて』のキム・ソヨン、チェリム、ハン・ジェソク、『秋の童話』のソン・ヘギョや、歌手でもここで演技を学んだ経験者が多く、S.E.Sのシュー、ピンクルのイジ、SHINWHAのキム・ドンワン、元H.O.Tで現在ソロで活躍中のムン・ヒジュンなどなど、そうそうたる名前が挙がる。みなここで学んでオーディションを受けたり、大学の演劇科に行ったり、またはMTM所属になったりと、ここがスタートになっている。俳優だけでなく、MCも、リポーターも養成している。韓国のギネスブックに、「新人発掘としては韓国最大である」という項目で載っているそうだ。
ここの教育システムは、現場でどうやるべきかということを主に教えているということで、俳優コースを例にとって言うと、まず1段階1ヶ月と考えて、
1,2段階で基礎演技評価と能力の把握をし、3,4段階は演技の基礎固めから、場面練習、即興劇などオーディションの準備訓練を始める。5,6段階は身振りや感情表現を更に深め、現場さながらのVTR撮影など。応用実践で、現場に見学に行って学ぶと言うのもあるそうだ。7,8段階ではワークショップと制作。9,10段階はオーディションの練習など。そして終了後は、MTMが、ここで学んだ子供達をできるだけ外に出して、実践で活躍できるようにしてあげるという。最後まで課程を終えるのは、最初の4分の1程度の人数だそうだ。
力を入れて教育しているところは、ひとつは話術。セリフを読んで演技に合ったようにしゃべるということ。二つ目はカメラの前でどういうふうにすればいいかというカメラの前での適応訓練。後は表情と動作の訓練。これらに特に力を入れてカリキュラムを組んでいるという。
実際のドラマの本番で使っている台本を持ってきて、完全にそこで撮っているように、他の周りの人達は無視して、カメラだけを意識して演技をするという対カメラ演技をさせて、カメラを怖がるという恐怖心を取り去り、カメラに慣れることを念頭に置いて訓練をしているそうだ。
放送文化院の募集要項には、「顔がよくなくても、身長が低くてもかまわない。外見に自信がないなら闘志と個性のある‘気’で挑戦してください」と載っている。そしてどんな有名な偉い人が教えても、自身の努力が大切だと常に言って聞かせているそうだ。システムは違えど、この点は万国共通だ。
放送文化院の具体的なコース案内
募集時期は一年に4回。1月4月7月10月に募集があり、応募者数は1回に150人から200人ぐらい。
演技学科成人クラスは10ヶ月で週6日、一日4時間。
初めの月は登録料、教材費、受講料などで6~7万円。
2月目以降からは、受講料のほかにプロフィール撮影費、メークアップ実習などで6万円近くになる。
学生クラス(中1~高2)は2年で週3日、一日2時間。
リポーター学科は3ヶ月週3日一日2時間。
教授陣はいずれも大学の演劇映画科出身者なので、大学の演劇映画化で学ぶ内容と大差ないそうだ。また各界から現役の映画監督、ドラマのプロデューサーなどの芸能関係者を招いて講義をしてもらう。
4歳から45歳まで入学可。一応大韓民国の国籍を持つ人なら資格があるということだが、放送文化院のファン理事によれば、韓国語ができれば日本人でも入れますよと言ってくれた。ちなみにすべての放送局で子役として出ている子供達の80,90%はこの学校の子供たちだそうだ。