映画解説

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タイトル 四月の雪
韓国公開年 2005年
出演者 ペ・ヨンジュン ソン・イェジン チョン・グックァン
監督 ホ・ジノ

【 映画紹介 】

四月の雪』は、配偶者に裏切られた男女が陥いる切ない愛の物語です。
妻が事故にあったと知らせを受けて駆けつけた男に突きつけられたのは、妻が見知らぬ男と旅行中に事故にあったという事実でした。
最も信頼していた相手の、裏切り。そしてそれは、相手の男性の妻にとっても同じショックでした。残酷な現実を前にして戸惑い、怒りやむなしさをおぼえる二人。彼らはお互いが被害者であり、やり場のない気持ちを唯一さらけ出すことのできる相手同士でもありました。
2人は意識不明のお互いの伴侶を看病するために、ソウルから遠く離れた地方の病院そばのモーテルで時を過ごすうちに、お互いに対する憐憫の情がやがて愛に変わっていきます。
しかし、それはやはり不倫と呼ばれてしまう感情でした。

『八月のクリスマス』『春の日は過ぎゆく』で、人物の心のひだを繊細に映像に写し取ることに定評のあるホ・ジノ監督の3作目の作品です。
不倫に傷ついた者同士が、皮肉にもやはり不倫と呼ばれてしまう恋に陥ってゆくというドラマチックな状況ですが、淡々と日常を過ごす中で見せる人物たちの細やかな気持ちの動きを丁寧にすくいとって見せていきます。

この主人公の男女をペ・ヨンジュンと、ソン・イェジンが演じていますが、ペ・ヨンジュンが、ドラマで見せる、何かを抱えたような人物像ではなく、普通に生きる等身大の男を演じているのが新鮮で、ときおりあどけない表情も見せています。
オリジナル版とディレクターズカット版がありますが、ディレクターズカット版は、最初に劇場公開されたものに未公開シーンを30分あまり加えて再編集したもので、人物たちの心の動きがより丁寧にわかるようになっています。

 

tashiro

オリジナル版では、2人の関係はどうなるのか、どうとも取れる結末でしたが、ディレクターズカット版では、より明確に表現されています。ホ・ジノ監督の演出スタイルは、設定だけを与えて、俳優たちに、その設定に合わせて自由に演じさせるというものなんですね。なので、ほとんどすべてのシーンで、みんなが話し合いあいながら、その瞬間瞬間で人物が感じていることを、そのまま演技しなくてはいけなかったそうで、役作りをするというよりも、役になりきって演じることが要求されました。それだけにペ・ヨンジュンにとっては、この作品は、まるで自分が体験した事を公開してしまうような気分だと語っていましたし、またこの不倫愛を演じてからは、愛にも多数の形が存在することを知って、愛や人生に対して理解の幅が深まったということでした。