映画解説

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タイトル 春夏秋冬そして春
韓国公開年 2003年
出演者 キム・ギドク キム・ヨンミン オ・ヨンス
監督 キム・ギドク

【 映画紹介 】

『春夏秋冬そして春』は、1人の男の人生を、美しい四季の風景に重ねて描いた作品です。

山あいの湖に浮かぶ小さな庵。そこには老住職と幼い子供の僧が暮らしています。その無邪気な幼な子が成長し、17歳になって恋を知り、寺を去って、青年となって戻り、そしてまた年を重ねた大人となって庵に住み着きます。

一人の人間が年月を経ていく中で、転機となる出来事を、春、夏、秋、冬といった四季の移ろいと重ね合わせて描き出していきます。

キム・ギドク監督といえば、それまでの作品は、人間の奥底に潜む欲望や怒り、残酷さをフィルムに映し出し、過激とか衝撃的と評されることが多かったのですが、本作では、ドロドロとした垢のようなものをそぎ落とした、穏やかな季節と人の営みの中に、哲学的な思想、東洋的な美しさを込め、新境地に挑んだといわれました。

少年役を『トンマッコルへようこそ』のソ・ジェギョン。青年役は、キム・ギドク監督の『受け取り人不明』でデビューしたキム・ヨンミン。老僧を演劇界の実力派俳優オ・ヨンス、そして冬の場面を、キム・ギドク監督自身が演じています。

 

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tashiro

早撮りで有名なキム・ギドク監督ですが、この作品では、四季をカメラに収めるために、1年をかけました。この映画の主役といってもいい、忘れがたいロケ場所は、韓国の東側に位置する慶尚北道にある周王山国立公園の山の中にある池です。半年の交渉の末に、韓国で初めて国立公園の中に映画のロケセットを作ることが許可され、伝統芸術の匠たちと美術家たちの3ヶ月にわたる作業でセットが完成しました。ただ残念ながら映画終了後は自然保護のためにセットはかたずけられてしまったので、実際には浮かんでいません。
 そして監督が自ら出演したことについては、演じてもらいたい俳優はいたものの、肉体的に大変な場面が多かったために自分で演じることにしたということでしたが、春、夏、秋のシーンを自分なりに体験してきて、冬編に、まさに今の自分が重なる気がしたそうです。