映画解説

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タイトル 霜花店(サンファジョム)運命、その愛
韓国公開年 2008年
出演者 チョ・インソン チュ・ジンモ ソン・ジヒョ シム・ジホ ソン・ジュンギ
監督 ユ・ハ

【 映画紹介 】

『霜花店 運命、その愛』は、高麗時代を背景に、禁断の愛に身を投じた3人の男女の悲劇的運命を描いた歴史絵巻です。

元(げん)から政治的支配を受けていた高麗末期。王は美しい少年ばかり36人を集めて護衛武士として傍らに置き寵愛していました。そんな中、高麗の王(チュ・ジンモ)は元から王妃(ソン・ジヒョ)をもらいます。そして世継ぎを設けなければならない状況になるのですが、女を愛せない王は王妃を受け入れられません。そこで、こっそりと、自分が一番寵愛している護衛武士の隊長(チョ・インソン)を身代わりにしたて、王妃と夜を過ごさせるのでした。王に命じられるままに、いやいや体を重ねるようになる二人ですが、その夜から二人の間には微妙な感情が生まれていき、王は嫉妬に苦しめられていきます。

『マルチュク青春通り』『卑劣な街』のユ・ハ監督作品で、高麗31代王のコンミン王が名門子弟だけを集めて構成する親衛部隊を作っていたという歴史書の記述をモチーフに、大胆なフィクションを交えて禁断の愛の物語に仕上げました。

男同士のラブシーンや男女間での激しいベッドシーンといったセクシャルなところが強調されていますが、嫉妬や裏切りが渦巻き、3人の心の動きが濃密な緊張感の中で描かれていく心理劇で、シェイクスピアかギリシャ悲劇を思わせる人間ドラマになっています。ちなみにタイトルになっている「霜花店」とは、貴族階級の性道徳を風刺した高麗時代の歌のことで、劇中にも登場します。

『卑劣な街』のチョ・インソンがユ・ハ監督と再びタッグを組み、感情に混乱をきたしていく禁断の愛の演技に果敢に挑戦しています。チュ・ジンモが、抑えた感情表現の中にも威厳を感じさせる王を演じて百想芸術大賞映画部門の最優秀演技賞を受賞。元の姫君を『宮~Love in Palace』『朱蒙』のソン・ジヒョが体当たりで演じています。野心に燃える副隊長役には『ファム・ファタール』のシム・ジホ、そして美男子護衛武士の中には、イム・ジュファンやソン・ジュンギ、ノ・ミヌといったその後スターになった若手俳優たちもいますのでご注目ください。

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初めは王を巡る三角関係が、次第に護衛武士を巡る三角関係になっていき、王の嫉妬が燃え上がっていくわけですが、護衛武士にとっては幼い時から王しか見えていなかった閉じ込められた世界から、女性という新たな扉を開いてしまったことで湧き上がる感情の混乱。この気持の移りようは男としての本能がそうさせたのか、女性というものへの情欲ゆえか、それとも王妃への恋心ゆえなのか、本当に「愛ってなんだろう」と考えさせられる作品でした。