映画解説

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タイトル 破壊された男‐誘拐犯との死闘‐
韓国公開年 2010年
出演者 キム・ミョンミン オム・ギジュン パク・ジュミ キム・ソヒョン
監督 ウ・ミノ

【 映画紹介 】

『破壊された男』は、娘を誘拐された父親と誘拐犯の8年後の死闘を描いたサスペンス作品です。

神へのゆるぎない信頼の元で、愛する妻と5歳の娘と幸せに暮らしていた男(キム・ミョンミン)でしたが、ある日、娘が誘拐され、切実に神に祈ったものの、結局返ってきませんでした。それから8年後。神への信仰心を無くし、かたくなに娘を探し続ける妻(パク・ジュミ)とも別居して堕落した人生を送っていた男の元に、死んだと思っていた娘が生きているとかつての誘拐犯(オム・ギジュン)から電話があります。男は、今度こそ絶対に娘を取り返してみせると、犯人との凄絶な戦いを始めるのでした。

『あいつの声』『復讐者に憐れみを』『シークレット・サンシャイン』『セブンデイズ』などなど、誘拐を題材にした韓国映画は数々ありますが、本作品は、誘拐されてから8年が経過しているというのが目新しいところで、誘拐犯と父親とのスリリングな戦いだけでなく、誘拐が、いかにその家族にダメージを与え、親の人生を破壊してしまうのかという、被害者家族の苦痛と後遺症も色濃く描かれています。監督は新人ウ・ミノ監督です。

キム・ミョンミンが、誘拐事件を機に破壊されてしまった男の破壊の過程、変化や、屈折した父親の心情を見事に表現しています。彼と相対するサイコパスな殺人者には『彼らが生きる世界』『ドリームハイ』などのオム・ギジュン。一重の目が不気味に恐ろしく感じられます。そしてパク・ジュミが、『女人天下』以来、8年ぶりに俳優復帰しました。誘拐された娘役で、『会いたい』『戦おう、幽霊』のキム・ソヒョンが出演しています。

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刑務所で娘と対面するエンディングシーン。最初はシナリオになかったそうですが、キム・ミョンミンのアイデアで、付け加えられたそうです。
「私を忘れたことはなかったの?」という娘からの問いは、正直、娘が生きていることをあきらめていた父親にとってはつらい質問だったでしょうが、良心の呵責を感じながらも、うなずいて涙を流す。それが、娘のためにも父親としてするべき最善の答えだったということなのでしょう。