映画解説

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タイトル 私は幸せです
韓国公開年 2009年
出演者 ヒョンビン イ・ボヨン キム・ソンミン ソン・ヨンスン
監督 ユン・ジョンチャン

【 映画紹介 】

『私は幸せです』は、苦しい現実を生きる男女が精神病院での出会いによって、つかの間、お互いの傷を癒していく過程を描いた作品です。

認知症の母親と、ギャンブルにハマってお金をたかってくる兄に悩まされ、ストレスで誇大妄想に陥るようになってしまった青年(ヒョンビン)は、精神病院に入院することになります。そこには、末期がんの父親を抱えて治療費に苦しみながら仕事と看病を続けている看護師(イ・ボヨン)がいました。お互いがまるでお互いを見ているかのような似たような苦しい境遇の2人は、何気ないやりとりを通して互いを気にかけるようになっていくのでした。

『シークレット・サンシャイン』『風の丘を超えて』など映画化された作品も多い小説家イ・チョンジュン作家の短編小説「チョ・マンドク氏」を原作にした作品です。
『鳥肌』『青燕』などのユン・ジョンチャン監督の作品で、2008年の釜山国際映画祭のクロージング作品に選ばれました。青年の入院している姿と、そこに至るまでの過程、そして看護師の疲弊しきった現状が交錯しながら描かれていきます。ふたりの置かれている状況があまりにも辛いので、見ていて息苦しくなるかもしれません。

主演はヒョンビンとイ・ボヨン。ヒョンビンは夢も希望もなく無気力な目にうつろな表情の親思いの青年と、誇大妄想に陥ってからは仲間とはしゃぐようになる姿の2つの面を交互に見せています。

イ・ボヨンも看病疲れで化粧っけのない、唇がひび割れたぱさついた女性として出てきて、美男美女の2人が、ドラマで見せるイメージとは真逆の姿で演じていることに驚かされるでしょう。ふたりともぜひとも演じたいと自ら買って出た役だけに、役にかける意気込みが伝わってきます。

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非常に重苦しく暗い内容だけに、ヒョンビンとイ・ボヨンがこの役を演じたいと申し出た時、監督は信じられなくて、事務所が演技の練習をさせるつもりで出ると言っているのではないかと訝しく思ったそうです。でも俳優たちの熱意を信じてキャスティングしたそうです。
ユン・ジョンチャン監督は厳しさに定評がある監督で、ヒョンビンもイ・ボヨンも大勢のスタッフの前で怒られながらの撮影で自尊心を大いに傷つけられながらも、監督の投げつける言葉に刺激を受け感情演技を引き出されていったそうです。それだけに、ヒョンビンにとってこの映画は学校のようで愛着のある作品になったそうです。