映画解説

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タイトル ピーターパンの公式
韓国公開年 2006年
出演者 オン・ジュワン キム・ホジョン チョ・ソンハ オク・チヨン
監督 チョ・チャンホ 

【 映画紹介 】

『ピーターパンの公式』は、大人になる一歩手前の少年が成長過程で経験する、苦くて痛い青春映画です。高校3年生、19歳の少年ハンスは将来を嘱望されている水泳選手でしたが、ある日突然泳ぎをやめてしまいます。そんな時母親が自殺未遂をはかり、その後遺症で寝たきりになってしまうのですが、母が残した手紙で父親の存在を知らされます。突然一人残され、母親の世話に入院費に借金の取立てと苦しい現実がハンスに襲い掛かってきます。そんな時、隣に高校のピアノ教師が越してきて、ハンスは美しい人妻であるこのピアノ教師に心惹かれていくのでした。人生の悩み、そして性の悩み、母親のことに父親のこと。ハンスの中で鬱積したものが隣の人妻へと向かわせます。19歳という大人になりきれていない少年をピーターパンに見立て、数学のようにわかりやすく解ける公式をなかなか探せないもどかしさ、思春期に通過する成長の痛みを描いています。チョ・チャンホ監督は、『悪い男』でキム・ギドク監督の助監督を務めたこともあり、本作が長編デビュー作です。「19歳の少年の成長を敍情的かつ美しく描いた秀作」との評価を受け、海外映画祭の関係者から多数のラブコールを受け、ベルリン映画祭の国際フォーラム部門で正式上映されたほか、サンダンス映画祭、上海国際映画祭などに出品され、フランス、ドーヴィル・アジア映画祭では審査員賞に輝きました。オン・ジュワンがこの時期の少年の複雑な胸のうちを繊細に演じ、黄金撮影賞新人男優賞を受賞しました。相手役の人妻には、『春が来れば』などのキム・ホジョンが、また水泳コーチには『ファン・ジニ』のチョ・ソンハが扮しています。

tashiro

この作品では主演のオン・ジュワンが高い評価を得ましたが、この作品は実は彼の仲間の俳優たちにも主演のオファーがあったそうです。全身ヌードでのセクシャルな場面もあるし、繊細な表現力が要求される難しい役どころだけに、仲間たちが出演を断るのを見ながら、だからこそ、そんな役を自分がやってみようという冒険心が出て、歯を食いしばって挑戦したのだとか。それだけに、やり遂げた後は、これから自分にはできないことがない。撮れない映画もないと自信がついたそうです。