映画解説

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タイトル 神機箭(シンギジョン)
韓国公開年 2008年
出演者 チョン・ジェヨン ハン・ウンジョン アン・ソンギ ホ・ジュノ
監督 キム・ユジン

【 映画紹介 】

『シンギジョン』は、朝鮮時代、新兵器の開発に命を懸けた人々を描いた娯楽大作です。

1448年、朝鮮4代目の王、世宗の時代。高圧的な中国、明から屈辱的な扱いを受けていた朝鮮は、大国の脅威から朝鮮を守るためひそかに‘シンギジョン’と呼ばれる画期的な武器を開発させていました。その動きを察知した明は、開発を阻止すべく圧力をかけてくるのでした。

シンギジョンとは、世界で初めて作られた火薬の力で飛ぶ多連発式のロケットのような実在した武器で、「神のような機械の矢」という意味で名前が付けられています。

実在した武器を巡るストーリーですが、武器開発の志に燃える気位の高い娘と俗物の商人が反発しながらも力を合わせて武器づくりに取り組んでいく面白さや、一刻も早く完成させるべく試行錯誤していく朝鮮の人々と、開発を阻止したい明の勢力の緊迫する対立構造。そして完成した武器の迫力、といったようにエンターテインメント色たっぷりに描いていきます。

実在した武器制作という歴史を再現する作品だけに、徹底した歴史考証や資料調査などを含めてシナリオ作業だけで4年半かかったという大作で、韓国の人たちのプライドを大いに満たす映画だけに、大ヒットしました。

パク・シニャン主演の『約束』や『ワイルドカード』のベテラン、キム・ユジン監督がメガホンを撮り大鐘賞の最優秀作品賞を受賞しました。

武術に秀で、ユーモアを備えた商人を演じるのはチョン・ジェヨン。ヒロインは『ソウル1945』のハン・ウンジョンで、たおやかながらも気の強い女性を演じています。

世宗にはアン・ソンギが扮しています。

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武器を開発しろと言われ、命がけでやっていたにも関わらず、政治情勢のために開発中止が言い渡されるくだりは、現場のやるせなさが伝わってきて、現代の政治情勢にも重なって見えました。
ところで、この作品は、それまで撮影許可が下りたことのなかった景福宮での撮影が初めて許可された作品でした。その場面は序盤の中国の使臣団がやってきて世宗王以下朝鮮の重臣たちが迎え入れている場面なのですが、王が4礼をする場面だけは別に撮影して合成しているんだそうです。というのも、それは歴史に記録されていることだったのですが、景福宮サイドは国民感情を損ねるという理由でその場面の撮影を許さなかったのだそうです。映画の中とはいえ、そこは厳格に気にするんですね。韓国の人のプライドの高さをうかがわせるエピソードです。