映画解説

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タイトル クロッシング
韓国公開年 2008年
出演者 チャ・インピョ シン・ミョンチョル チュ・ダヨン チョン・インギ
監督 キム・テギュン

【 映画紹介 】

『クロッシング』は、北朝鮮から脱北せざるを得なかった父親と、残された息子の姿を描いたヒューマンドラマです。

北朝鮮の炭鉱村で働くヨンス(チャ・インピョ)は元サッカー選手で、家族の日々の食べ物を心配しながらも平凡に暮らしていましたが、妻の病気が重くなり、その薬を得るためにどうしても北朝鮮を出て働きに行かなければと脱北を決意します。でもその間に妻は亡くなり、息子は過酷な収容所生活を余儀なくされ、ヨンスも中国で身を潜めて危うい生活を送り続けます。お金を手にしたらすぐ戻るはずだったのに、いつかはまた家族で一緒に暮らすはずだったのに、皮肉な出来事ですれ違ってしまう父と息子の物語が描かれていきます。

監督は、『オオカミの誘惑』『百万長者の初恋』などのキム・テギュン監督。若手スターを起用してスタイリッシュな映像で見せていくというそれまでの作品とはずいぶんと毛色の違う本作品ですが、10年前に脱北者のドキュメンタリーを見て、実情を知らなかった自分が恥ずかしく、いつかは映画化したいと思っていたそうです。そして微妙な題材だけに、企画、製作の4年の間、徹底して秘密裏に準備して制作に当たりました。また、北朝鮮の普通の人々が暮らす田舎の村を緻密な事前調査を通して再現することに力を注ぎ、リアルな風景を見せることに成功しています。

主演はチャ・インピョ。北朝鮮の子供たちがかわいそうで、脱北者に対する関心を集めるきっかけになればと出演を決意し、過酷な撮影にも映画の意義を感じて積極的に取り組んだそうです。その息子役は、5カ月にわたるオーディションを勝ち抜いて役を射止めたシン・ミョンチョルが演じています。

アカデミー映画祭の外国語映画賞の韓国代表に選ばれた作品です。

tashiro

過酷で胸の痛む内容でしたが、この悲しいラストが現実なんでしょうね。これ、主人公の設定が、脱北するつもりではなかったのに結果的にそうなってしまったという設定になっていましたが、監督いわく、いろいろ調べたそうなのですが、北朝鮮は想像以上に閉鎖的で、そこに住む人々は自由の価値さえ知らない人が大部分で、あまりの空腹に河を渡って国を出て、初めて違う世界が見える人が多いから、そうした現実を設定にも反映させたということでした。この映画の苦しい撮影を耐え抜いたメインスタッフの中には、実際の脱北者が複数含まれていたそうで、そんな彼らの経験と“伝えたい想い”が詰まった作品でした。