映画解説

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タイトル ロスト・メモリーズ
韓国公開年 2002年
出演者 チャン・ドンゴン 仲村トオル ソ・ジノ シン・グ チョン・ホジン
監督 イ・シミョン

【 映画紹介 】

2009年の近未来を舞台に、韓国が日本の植民地のままだったという奇想天外な設定の世界で、歴史を揺るがす謎を巡って対立する男たちの人間ドラマ、SFアクション大作です。

1909年、伊藤博文の暗殺が未遂に終わっていたら世界はどうなっていただろうか。その間の100年の歴史が今とは全く変わって、原爆もベルリンに投下され、日本は第二次世界大戦で戦勝国となり、ソウルオリンピックのかわりに名古屋オリンピックが開かれ、韓国は日本の支配下のまま、ソウルは日本の第三都市として栄えていた。このような歴史を辿った近未来で、朝鮮独立を掲げる組織のテロ活動が活発化していました。警察組織JBI所属の朝鮮系日本人坂本(チャン・ドンゴン)と日本系日本人の西郷(仲村トオル)がテロ対策に当たりますが、坂本は次第に自分のアイデンテティーに目覚め、歴史をゆがめた巨悪に立ち向かっていくのでした。

坂本を演じるのは、『ブラザーフッド』などで、韓国のトップ俳優に成長したチャン・ドンゴン。全体の8割近くのセリフが日本語で、共演の仲村トオルにセリフをテープに吹き込んでもらい、必死に発音練習に取り組んだということです。

その仲村トオルは、坂本の同僚で親友という立場から敵対していく関係性を渋く演じ、この演技で韓国のアカデミー賞といわれる大鐘賞で外国人として初めて助演男優賞を受賞しました。女戦士として登場するソ・ジノは、この作品が2作目となる新人です。

他にも『うなぎ』などで知られる世界的な巨匠今村昌平監督も俳優として特別出演しています。

tashiro

一歩間違えば漫画チックな設定を、よくぞここまでしっかりしたエンターテインメントに仕上げたなあと、その手腕に感心してしまいました。
映画の冒頭、ぱっぱっぱっと違う歴史に塗り替えられていく場面では、光化門にある李舜臣(イ・スンシン)像が豊臣秀吉像に変わっていたり、サッカー選手のイ・ドングク選手が日本の国旗をつけていたり、韓国のあれこれを知った上で見ると、その映像がいかに韓国人に衝撃を与えるものかがわかるでしょう。
また、車の運転についても、本来韓国は日本と逆で、車は左ハンドルの右側通行なのです。ですから日本の占領下という設定のために、車を走らせる場面はわざわざ日本に来て撮影をしていました。