映画解説

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強力おすすめ

タイトル ノートに眠った願いごと
韓国公開年 2006年
出演者 ユ・ジテ キム・ジス オム・ジウォン
監督 キム・デスン

【 映画紹介 】

『ノートに眠った願いごと』は、恋人を亡くした男性が、彼女が残したノートに沿って美しい自然の中を旅していく、切なくも美しい、しっとりとしたラブストーリーです。

結婚をまじかに控えた恋人同士。でも、彼女が待っているはずのデパートに着く直前、男の目の前でデパートが崩れ落ち、恋人は帰らぬ人となってしまいます。それから10年。彼女を失った喪失感と罪悪感にさいなまれ、人間味の欠けた検事となってしまった男のもとに、彼女が残したノートが届きます。そこには、旅番組のディレクターだった彼女が新婚旅行に行こうと書き綴っていた数々の名所が書かれていました。彼はそのノートに従って旅を始めますが、行く先々で、ある女性と顔を合わせるのでした。

『バンジージャンプする』のキム・デスン監督だけに、美しく叙情感あふれる作品となっています。登場人物たちの運命を変えた事件として、95年に起こった三豊(サンプン)百貨店の崩壊事故が出てきます。この崩壊場面が結構生々しく描かれるので、この部分は恐くもあるのですが、それと対比するように、旅の風景はどこまでも美しく心にしみてきます。消えゆく運命にある砂丘や紅葉の見事な景勝地など、秋の透明な空気感が感じられる画面の中で、次々に美しい風景が現れ、ゆったりとした時間の中でそれを見ていくうちに、登場人物たちと同じように気持ちが癒されていくことでしょう。

心に傷を抱えてしまった青年にユ・ジテ、恋人役に、はかなげな美しさが印象的なキム・ジス、そして訳ありの女性をオム・ジウォンが演じています。

tashiro

主人公たちと一緒に旅をした気分に浸れたことと思います。美しい景色はそれだけで、傷ついた心を優しく癒してくれるものなのだということを改めて感じさせてくれました。この映画において、主演3人に次ぐ4番目の主人公が、まさに、この自然の景色だったわけです。韓国で最も美しい道といわれるのが国道7号線だそうですが、その街道沿いの60箇所以上の絶景をカメラに収めたそうです。ただでさえ秋は短い季節なのに映画は10ヶ月も撮影しなければならず、どの季節でもすぐに秋の雰囲気にセッティングできるように、トラックに色づいた葉っぱや木を積んでロケ地を回って撮影したのだとか。