映画解説
強力おすすめ
タイトル | ラブ・レター~パイランより~ |
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韓国公開年 | 2001年 |
出演者 | チェ・ミンシク コン・ヒョンジン セシリア・チャン |
監督 | ソン・ヘソン |
【 映画紹介 】
『パイラン』は、浅田次郎の短編集「鉄道員(ぽっぽや)」の中に収められている「ラブ・レター」を原作に、舞台を韓国に置きかえた作品です。日本でも中井貴一の主演で映画化されましたが、この韓国版は原作をベースにして、ヒロインとなる中国人女性の職業設定や、結末などをアレンジしています。
主人公は40歳を過ぎたというのに、アダルトビデオを売っているしがないチンピラ。ある日、警察から妻が亡くなったという連絡が入ります。このチンピラは1年前に身寄りの無い中国人女性パイランの偽装結婚相手となって不法就労を手助けしていたことを思い出します。そして田舎町に住んでいたという彼女の元へ、遺体を引き取りに行く旅に出るのでした。
現在と過去とを行き交いながら、汚れてスレ切った中年男と、決して希望を失わない若い純粋無垢な女性のエピソードをたくみに織り交ぜて物語りは進んでいきます。
主役を演じるのは『シュリ』で北朝鮮の特殊部隊員の役でおなじみのチェ・ミンシク。やさぐれた孤独な中年男性ぶりは絶賛されました。そしてパイラン役には『星願あなたにもう一度』や『喜劇王』などの香港女優セシリア・チャンを迎えています。
原作ではヒロインが水商売をするところを、地方のクリーニング屋に住み込みで働くという設定に変えてありまして、これによって、じめじめとした暗さがなくなり、青空の下で大きな桶に洗濯物を入れて足で踏み洗いをするなど、パイランが明るく健気に働く様子が後半へのアンチテーゼになっていて、見る者によけいに人生の不条理を感じさせ、彼女の儚い人生が物悲しく目に映ります。
主人公がパイランの手紙によって、初めて自分も他人から必要とされる存在だったことを知り、もう一度生き直そうとしたときに残酷な結果が訪れてしまう…というあまりにも救いのない終わり方が個人的にはちょっと残念で、びっくりしてせっかく出ていた涙が引っ込んでしまったほどでした。でも、泣かせる話が好きな韓国だけあって、涙腺の刺激の仕方が非常に巧みでした。
二人の人生が交わる瞬間はただ一度だけ、でもひと目見せるだけにとどめ、すんでのところで二人を会わせずに余韻を残す。こうした切なさを積み上げていきながらクライマックスに向かっていく描き方には、否応なく心揺さぶられてしまいます。