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『マタハリ』その後…

 

3月のプレビュー公演の時は、
見どころが多い割には
何かが足りない~と思った作品でしたが、
本公演に入って5月中旬に観た時、
面白くなっている!
と思いました。

ってことをもっと早く書きたかったのですが、
締め切りが続いていて
書くタイミングを逃したまま
『マタハリ』は日曜日に終わってしまいました~。

というわけで、自分の覚え書きとして
感想を書いておきます。

 

5月に観た時面白く感じたのは、
実際に改良されて面白くなっていた面もあるでしょうが、
自分がすでに3回目だから面白く感じられるようになったのか、
その辺はもうわからないのですが。
でも、明確にプレビューと違っていたところがいくつかあって、
覚えている範囲で言えば、
1幕で結構歌がカットされていました。

例えば、ラドゥー大佐の妻がマタハリに会った夫を疑って
チクリと嫌味を言ったあとで歌う歌や、
衣装係のアンナが、スパイになるなんて危険だから
やめてちょうだいと言ったあとでマタハリの前で歌う歌。
あと、アルマンが、「ダメだとわかっていながらもう恋に落ちてしまった~」と
歌う場面の前にアンサンブルが歌って踊るシーンが
確かあったのですが、それもなくなっていました。
リヨンでマタハリとアルマンが落ち合って愛を確かめ合うシーンも
もうちょっと長かったですし…。

あとはちょこちょこ演技を足している感じがあり、
また演じる俳優さんたちの感情表現も深まっていて
より引き込まれたのだと思います。

こんな風に、気持ちの流れが途切れるような余分なシーンが
カットされたことで、すっと感情移入がしやすくなったんでしょうね。
ちょっと手直ししただけでもずいぶん良くなるものなんだなあと思いました。
またワイルドホーンの音楽も3回目にして曲が頭に入って来て
いい曲だなあと楽しめるようになったのも大きいですね。

全部で6回鑑賞。
シン・ソンロクとレオは見られませんでしたが、
他のキャストは見ました。

キム・ジュンヒョンの大佐も、
プレビューの時は全編、力で押してくる感じで
表情も堅かったのですが、
それもすごくよくなっていて、
自分の感情に苛立ち、嫉妬し、
マタハリを思って涙を流すシーンなどはぐぐぐっと
惹きつけられました。

キム・ソヒャンのマタハリは女らしく、
もろい感じが際立っていて
とっても良かったです。
が、やっぱり私はオク・チュヒョンの顔と声が好きでして、
堂々とした強いマタハリが、
恋をしてか弱い女の部分を見せていくあたりのオク・チュヒョンが
お気に入りでした。

 

そして先週末、大千秋楽の一日前、
リュ・ジョンハンの千秋楽公演を見たのですが、
この日、マタハリの恋の相手アルマン役のソン・チャンウィの歌が
すごくよくなっていて、プレビューの時に
「彼は歌は普通だし~」とか言ってごめんなさい!って感じ。
安定していて伸びがあって素敵でした。
なのでリュ・ジョンハンと対立する「男対男」の歌合戦場面は
もう相乗効果ですごいことになってました。
加えてオク・チュヒョンがやっぱりもう素晴らしくて。

身体を張った見事な官能ダンスから始まり、
数々のパワフルな歌を歌いこなす圧倒的な情熱、
甘くささやくような蠱惑的なセリフ回し、
うるんだ瞳で必死にアルマンの愛を求める表情、
運命に翻弄され利用され、ただ一つの愛を失って
生きる希望を失ってしまう呆然としたマタハリの演技。
どれもこれも本当に素敵で、
もうマタハリになっている彼女を見ていると、
この女優はすごいなあと、
その存在がありがたくて泣けてくるような感じでした。

そしてリュ・ジョンハンは、
もう安定の声の伸びとつやでした。
ああやっぱり声がいい~と思いながら、
マタハリが予定通りに戻ってこないのでイラついて、
でもその怒りを抑え込みながら、
(それが返って怖いのですが)、
衣装係のアンナを追い込むように問い詰めていくシーンなどは
セリフの声が艶っぽいだけにゾクゾクしました。

冷静な仕事のできる男、しかも大佐という重責にある男が
マタハリという女性にどうしようもなく惹かれて、
アルマンに嫉妬して、
公私混同のようにアルマンを死地に赴かせてしまう。
男の美学を誰よりも重視していたであろう男が
マタハリに気持ちを拒まれて、
感情崩壊してしまうところが、もうたまりませんでしたね。

私、仕事のできるいい男が
恋のために崩れていくの大好きなんですが(爆)、
リュ・ジョンハンの、
この場面での、自分でもどうにもならない感情に
身もだえしながら歌ういい意味での女々しさ加減がすごくよくて、
結果的にマタハリを利用した悪いやつなのに、
大佐に気持ちを持っていかれちゃうんですよね。
おいしい役どころで、
またそれを苦み走った男の危険な魅力で演じていて素敵でした。

また、衣装係のアンナを演じた
キム・ヘウォンが包容力とユーモアがあって
マタハリへの情を感じさせるシーンがどれも
じんわり来てよかったです。

こんな風にいろいろとすっきりとしたストーリー構成に加えて
俳優たちがそれぞれ素晴らしい演技と歌を
披露してくれたので、
とても良い舞台になっていて、もう大満足でした。

『マタハリ』は好評を受け、
来年にはもう再演が決まったとか。
やはり舞台は終わりに行くにつれて
尻上がりによくなっていくんですね。

(2016年06月13日執筆)