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『ブラックメリーポピンズ』日本版

 

世田谷パブリックシアターで上演中の
ミュージカル『ブラックメリーポピンズ』を
先週見てきました。

これは、韓国の創作ミュージカルを
日本キャストで上演している舞台ですが、
2年前の日本初演から好評を受けて、
今回再演となったものです。

韓国のミュージカルですが、
舞台は1920年代のドイツです。

著名な心理学者の屋敷で火事が起き、
博士は亡くなるのですが、
博士に引き取られて暮らしていた
4人の孤児たちが炎の中から助け出されます。
彼らを助け出したのは、家庭教師だったメリー。

大やけどを負いながらも子供たちを助け出したメリーは
人びとから女神と言われるのですが、
メリーは数日後、失踪してしまいます。
そして子供たちもその時の記憶をなくしていて
火事の原因はわからずじまいで真相は闇に葬られます。

それから12年がたち、
子供たちはそれぞれバラバラに暮らしていましたが、
一番年上のハンスのもとに、
当時の事件を担当した刑事から、
亡き博士の手帳が送られてきて
成長した4人の子供たちが再び
顔を合わせることで
封印されていたみんなの記憶がよみがえってくる~
というストーリーです。

‘心理スリラーミュージカル’と銘打ってあるので、
おどろおどろしい印象を受けるかもしれませんが、
これが、面白い!

子供時代と現在とを行きつ戻りつしながら、
家庭教師のメリーや4人の人間関係が
どんどん見えてきて、
過去の記憶の封印が解き放たれ、
徐々に火事の真相に近づいていくまでの
過程にゾクゾクさせられます。

もの悲しい歌のメロディーや
不安定な心理状態を表す金属音のような不協音が
不気味さを掻き立て、
知りたいんだけど、知らない方がいいかも~と
ドキドキしてしまうような感じでした。

演出・キャストは初演の時とほぼ同じで、
中川翔子さんだけが新しいメンバーでしたが、
中川さん、舞台初挑戦だそうですが、
不安にさいなまれている現在のおどおどした女性と
腕白な少女時代の演じ分けも鮮やかでしたし、
役にぴったりという感じ。
そして歌がうまかったですね。
全てにおいて初舞台とは思えないなじみっぷりでした。

5人の芝居だからこその、
キューッと締まった密度の濃い舞台で、
見終わった後の満足感が大きいです。

東京公演は5月29日まで。
そのあとは兵庫、福岡、名古屋と地方公演があります。

(2016年05月26日執筆)