映画解説

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タイトル 二重スパイ
韓国公開年 2003年
出演者 ハン・ソッキュ コ・ソヨン チョン・ホジン ソン・ジェホ リュ・スンス
監督 キム・ヒョンジョン

【 映画紹介 】

『二重スパイ』は、『シュリ』『JSA』に次いで、南北分断の悲劇を素材にエンターテイメントに仕上げたヒューマンサスペンスです。

南北の緊迫状態が続く激動の1980年代を背景に、北朝鮮のスパイ、イム・ビョンホ(ハン・ソッキュ)は使命を帯び、偽装亡命の末韓国の諜報部への潜入に成功します。そして同じく北のスパイとして潜入活動しているラジオ局のDJユン(コ・ソヨン)と接触し、工作活動を始めるのですが、結局は歴史の狭間で北からも南からも追われていくという悲しい宿命を描いた作品です。

映画の中では北から亡命した主人公はまず拷問を受け、常に監視下に置かれる生活を強いられます。誰を信じていいのか、すっかり人間不信になりそうな諜報合戦は、最後まで緊張感を持ったサスペンスとして描かれています。

長らく充電期間を取っていたハン・ソッキュが、3年ぶりにスクリーンに復帰。「いいにつけ、悪いにつけ、ひとつの信念を持ち続ける人物を演じてみたかった」として選んだのがこの『二重スパイ』でした。

また韓国で生まれ育った潜入スパイには『裸足の青春』『エンジェル・スノー』のコ・ソヨン。しっとりとした演技で悲劇のヒロインを演じています。また『冬のソナタ』のヨングク役のリュ・スンスが亡命者を監視する諜報員として、ハードな物語の中に唯一温かみを添えています。

tashiro

国のために命を駆けても、国はその思いに応えてくれないという現実が見ていてなんともやるせないですね。
『二重スパイ』で改めて考えさせられるのは朝鮮半島の南北統一の事。主演のハン・ソッキュも「朝鮮半島は、家族であるにもかかわらず、違う理念を持ってしまったがために離れ離れに暮らしている兄弟のようなもの。だからこの映画を世に問うことによって、統一の問題を、特に若い人たちに考えてほしい」と語っています。
理念や体制の違い、人間の欲で引き起こされる戦争が現実に世界を覆う今、我々の心にも深く響くメッセージです。
ちなみに、ハン・ソッキュが特に思い入れがあるのはエンディングで、様々な思いを込めた「虚無感漂うシーン」になったということです。