スター列伝・スターコラム

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略歴

チャ・スンウォン

絶対忘れられない濃い顔立ち。
その暑苦しさ(?)を十二分に生かし、かっこいいのか悪いのか、
もはや判断がつきかねる表情演技で今や韓国映画界のコメディーキングである。

高3の時、友人と演劇学院に行っていたが、
モデルに誘われたのがこの道に入るきっかけだった。
そして大学1年の時、4歳年上の恋人と結婚して、
なんと20歳の若さでパパになったという芸能界の中でも異色のタレントである。

モデルを始めて5年ほどは妻子を抱え、
経済的プレッシャーなどで苦労が多かったというが、
95年末から運が向きはじめ、
韓国のベストモデル賞を受賞するほどの
自他共に認めるトップモデルへと成長した。

そしてトークショーの中でコーナーMCをつとめ
本格的な放送活動をスタートさせたが、
トップモデルというすかした感じはなく、
ユーモアセンスのある話術と格好良さで
視聴者にも親近感を与える仕事ぶりだったとか。
これで人気を得た彼はその後ドラマ、CFと引く手あまたの存在になった。

最初の映画は『ホリデー・イン・ソウル』で、
いつもホリデー・イン・ソウルの部屋で
足モデルのチン・ヒギョンと逢い引きを重ねる謎の男で、
セリフはほとんど無し。
生活感の全くない、モデルをそのまま引きずってきたような役だった。

実質的映画デビューとなった『日が西から昇るなら』では
イム・チャンジョンの恋のライバルで、
スター女優となったコ・ソヨンにアプローチするラーメン会社の社長役だった。

次は『チャグイモ』で、
出世のためにキム・ヒソンを捨て社長の娘と結婚する
卑劣な証券会社のブローカーで、情け無い役。

極めつけは『身魂旅行』で、
新婚旅行で済州島に来た遊び人のしようもない金持ち男が
初夜に殺されてしまうという役なのだ。
こんなにもいまいちな役が続いていて、こんなんでいいのかなあ?
とよけいなお世話ながら心配していた。
トップモデルとして韓国でキャーキャー騒がれるような人気ぶりと、
映画ぐらいでしか彼のことを見る機会のない私などはギャップを覚えたのである。

しかしこうした役での出演も
「すっきりしていて感じのいい男性」
という自分の既成のイメージを破りたいという
彼なりの試みがあってのことだったようだ。

そんな彼の映画初主役は『世紀末』。
いくつかのストーリーが入っているオムニバス映画だが、
この中でチャ・スンウォンは、破格的な変身を遂げている。
彼が演じたのは教壇で社会批判をしながらも出世できない焦燥感から
妻のある身で他の女との情事におぼれる大学講師の役。
常に何かに不満を持っているようないらついた表情で、
まさしく演技者としてスクリーンに登場したのである。
監督からも「この映画で生まれ変わった」との評価を受けた。

2000年には、『リベラ・メ』でやってみたかったという悪役に挑戦。
子供の頃に虐待されたせいで火に執着を持ち、
誇大妄想に陥っている不敵な連続放火犯を演じている。
この映画のためにテレビやCFの仕事をセーブして撮影に臨み、
釜山での撮影時、自分の出番がない期間も毎日現場に顔を出して
映画の雰囲気にどっぷり浸かったという。
その意気込みが演技にも反映され、カリスマ性のある悪役ぶりで、
演技力が更に高まったとの評価を受けた。

これ以降はがらりと作風を変え、コメディーに連続出演。
そのどれもがヒットするものだから、
すっかりコメディースター、チャ・スンウォンというイメージが定着している。

久々にドラマ出演した『ボディーガード』でも、
クールなボディーガードではなく、
すぐカッとなる人情味たっぷりの兄貴という感じで人気を博した。

 

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より
記事の転載はご遠慮ください

略 歴

1970年生まれ。高校時代、演劇学校に通っていた時モデルに誘われたのがきっかけで芸能界に入りました。大学1年で結婚し、20歳の若さでパパになるなど、モデルとしては異色の存在でした。トップモデルとなってから俳優に転身。映画デビューは97年の『ホリデー・イン・ソウル』で、2000年の『リベラ・メ』での不敵な連続放火魔役で一気に注目の存在になりました。そして『風林高』で人間味たっぷりの体育教師を演じたのを機に、その後はまるで水を得た魚のようにコメディー作品に出続け、2002年の『ジェイル・ブレーカー』では、百想芸術大賞男子最優秀演技賞を受賞するなどコメディー・キングの異名をとるほどになりました。
2005年以降は時代劇ミステリー『血の涙』や『拍手する時に発て』の検事役などコメディー以外の作品でも次々とヒット作を出しています。
また『約束』では北朝鮮の青年に扮し初めて純愛演技に挑戦しました。無期囚人の父親を演じた『息子~my son~』には安いギャラで出演を引き受けるほどの思いいれを感じたそうで、この演技で春史大賞映画祭で主演男優賞を受賞しています。昨年は6年ぶりのドラマ『シティーホール』で女心をわしづかみにし、 今年は『雲から抜けた月のように』『砲火の中へ』と話題作映画に出演した後、現在はドラマ『アイリス』のスピンオフ作品『アテナ戦争の女神』の撮影中です。(2010年8月)