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Netflixオリジナル映画『オクジャ/okja』

6/29(木)より全世界オンラインストリーミング

https://www.netflix.com/jp/title/80091936

Netflixオリジナル映画『オクジャ/okja』は、『殺人の追憶』『母なる証明』『グエムル 漢江の怪物』『スノーピアサー』など、骨太な社会派ドラマを躍動感あふれる映像と緻密な人間心理で描き、いつも鑑賞後にただならぬ後味を残す、韓国が誇る世界的な映像作家ポン・ジュノ監督による脚本・監督作品。『スノーピアサー』以来、実に4年ぶりとなる新作です。

 

<ストーリー>
韓国の人里離れた山間の家で、オクジャと呼ばれる巨大な動物を世話する少女ミジャは、オクジャを親友のように大切に思いながら10年もの間のどかに暮らしていた。しかし突然、アメリカニューヨークに本社がある多国籍企業のCEOがオクジャを利用する計画を企てたことから、オクジャがニューヨークへ輸送されることに。オクジャを連れ戻すために無謀な救出作戦を決行するミジャは、次第にオクジャを巡る激しい争いに巻き込まれていく。

 

<感想>
2007年のNY。
多国籍企業ミランダ社の女性CEOによる大々的な記者会見から幕を開けますが、もうのっけからこのCEOうさん臭い~と思わせるティルダ・スウィントンの妙なテンションの高さ。そこで華々しく語られたのが、世界の食糧不足を解消するため、奇跡的に発見された究極のスーパー豚を10年かけて世界各地の農家で育てて最高のスーパーピッグを選ぶというもの。

そこから舞台は10年後の韓国の山奥に移るのですが、ここは宮崎駿監督の世界観を実写で見せてくれるような、少女が巨大動物オクジャとのどかに暮らす寓話のような世界。オクジャは、豚とカバが合わさった造形ですが、ずば抜けた巨大さやのっそりした姿が愛らしくて、見ていて和みます。

そんな2人、というか一人と一匹が自然と共に優しく生を育んでいく様や、命がけで守り守られる間柄なのだということが描かれるのですが、その関係の美しさが、後に予想される出来事を思って既に胸が痛くなります。
そしておとぎ話のような世界から一転、オクジャがミランダ社によって連れ去られ、オクジャを取り戻すために、ミジャも、残酷で人間の欲望がギトギト渦巻く世界に放り込まれることになるのですが、ここから本映画はそれまでの仕掛けがうごめきだし、ミジャを演じるアン・ソヒョンが少女戦士のように燦然と輝きだします。

子供だからと軽くあしらう大人たちに業を煮やし、肝が据わった目になって、たすき掛けのカバンをくいっと直して気合を入れて立ち向かう。山育ちなので走りは早いし、まるで特殊部隊の訓練を受けた男のような判断力と俊敏な身のこなしで、振り回されてもぶつかってもくじけない。このあたりは見ていて『アジョシ』におけるウォンビンを彷彿させるストイックな頼もしさが感じられました。
ポン監督は「『未来少年コナン』の少女版だと思ったことがある」と記者会見で述べていましたが、まさしく宮崎アニメの主人公のような純粋さと凛々しさを兼ね備えた少女像になっていてすごく良かったです。

登場するキャラクターやセリフにクスクスっとしてしまう程よい抜け感もありながら、そうこうするうちに動物解放戦線ALFも現れて、大企業の遺伝子操作にまつわる計画が明らかになっていき、資本主義のブラックな面が浮き彫りになって社会的な風刺が表現されます。


でも全体を見て一番感じたのは、離れ離れになってしまったミジャとオクジャが互いを求め合うラブストーリーなんだなあということ。もっともオクジャはメスだそうですが。ミジャの声や気配に敏感に反応するオクジャと、何があってもオクジャを助けるのだというミジャの熱い想い。呼応するような二人の魂。大切な者を命を懸けて救い出すというそのまっすぐな想いが胸を打ちました。

そうだ、最後クレジットが出ても最後の最後にちょっとした後日談が出てくるのでお見逃しなく。

 

<参考までに>
実はこの映画は一般的な劇場公開はなく、Netflixでオンラインストリーミング配信という形で見る映画です。
それが韓国では映画館封切日と同時に配信するのは映画界の商習慣を崩すということで大手3社のCGV・ロッテシネマ・メガボックスが上映拒否。それ以外の映画館でのみの上映になるなど、何かと物議をかもしていました。カンヌ国際映画祭でも、映画館のスクリーンで見られない映画はコンペから外すべきではと議論の的にされていましたし。
日本でも映画館での上映はないのですが、そもそもなぜポン・ジュノ監督は今回Netflixをパートナーに選んだのかについて、6/22日に行われたポン・ジュノ監督と主演のアン・ソヒョンが登壇しての記者会見で語ってくれました。

「既存のスタジオ、映画会社では自由ではないのに比べて、Netflixは大予算映画にもかかわらず監督に100%自由が与えられ、クリエイティブコントロールができる環境です。だから巨匠監督たちも創作の自由に対する渇望があるからこそNetflixの創作条件に惹かれるのだと思います。
でも監督にとっては創作の自由と同じく大きなスクリーンで上映してほしいという思いがある。これに対してもNetflixは寛容で、映画祭や一部の劇場でも見られるので監督の気持ちとしてもそこは満たされます。
映画は一本できあがると長い寿命を持ちます。映画館での上映はそのうちの短い期間です。大きなスクリーンで見た映画はタブレットで見ても美しいというのが私の考えです。
監督として一番傷つくのは、映画の途中でぶちっと途切れてCMが入ったり次の番組予告のテロップやクレジットが入ることです。1シーン1シーン精魂込めて作っているので、そんなことをされると汚染される気持ちです。でもNetflixはそれをきちんと守ってくれるのです。創作者の立場をすごく尊重してくれてきちんと保存してくれるのがとても良い点だと思っています」
ということで、クリエイターにしてみたらこの上なく恵まれた制作環境が与えられ、出来上がった作品を大切に尊重してくれるNetflix。個人的に『オクジャ/okja』は大きなスクリーンで見たかったなとは思うものの、でも監督も言っていたように、多くの映画にとって、映画館で見られる期間はほんの一時的なもので、その後はDVDやテレビ、ネットで見ることになるのだから、そこにこだわるよりはポン監督はクリエイティブの自由を優先したのだなあと感じましたし、今後もNetflixを選ぶクリエイターは増えてくんだろうなと思いました。

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