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ロマンス時代劇ドラマ『王は愛する』ソン・ジナ脚本家インタビュー

※文章の転載はご遠慮ください

1月20日~22日、済州島で行われた、シワン、ユナ主演のドラマ『王は愛する』
の日本マスコミ向け撮影現場公開の際にインタビューした内容です。
このときはまだ2話を撮影中。撮影が始まったばかりの段階でのお話です。

 

ソン・ジナ脚本家といえば、韓国ドラマの金字塔といえる『砂時計』(95年)を始め、『太王四神記』(07年)『シンイ―信義―』(12年)『ヒーラー~最高の恋人~』(14年)などの人気作品でおなじみのスター脚本家。
そのソン・ジナ作家は『黎明の瞳』(92年)以外はすべてオリジナルで脚本を書いてきた脚本家さんですが、今回は珍しく原作小説がある作品を手掛けることになりました。

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――この作品を手がけることになった経緯を教えてください。

最初はスーパーバイザー的な立場でアドバイスしていましたが、題材が想像以上に難しく、とても大変な作品なんです。というのも、この作品は、登場人物の葛藤などの心理描写がとても多く繊細に描かれていて、まるで心理学の作品のようでした。これは直接自分が手掛けた方が早いと思い、携わることに決めました、というのは冗談ですが…(笑)、作品がとても魅力的だったので興味が湧き、1話からすべて自分が手掛けることにしたんです。最初の1話、2話は心理描写をどう表現するかでだいぶ悩みました。もう、魂を注ぎ込んで作品を書いている感じがしますね。


――具体的にはどのようなジャンルになりますか?。

私が得意とする題材は、たとえ時代劇であってもメッセージ性の強い内容、社会へ何かを訴える作品が多かったです。
最近書いた『ヒーラー〜最高の恋人〜』という作品も、社会へのメッセージが強い作品なんですが、この『王は愛する』という作品は、そのようなメッセージは一切なく、人々が愛しあう素直な気持ちや衝突しあう感情をありのまま描く作品で、私が人間にフォーカスした作品としてはまさに初めてになります。ある意味、日本にこういう作品が多いのではないでしょうか。

――監督から伺ったのですが、俳優さんにとっては心理描写をどう演じるかがかなり難しい作品なのではとのことですが。

今回は事前にキャラを作り込んでいくよりは、俳優ありきで脚本を書くことに変更しました。特にユナさんが演じるワン・サンの役は彼女に会う前と会った後ではだいぶキャラクターが変わりました。私が描くキャラクターを役になりきってただ演じるのではなく、俳優の中にあるすべてを出し尽くすためには‘俳優ありき’が必要でしたから。

――主演を演じるイム・シワンさんやユナさんはアイドル出身ですが、当初どのような印象を持たれましたか?

まずは、イム・シワンさんですが、『ミセン‐未生‐』で演じた役をとても印象深く見た覚えがあります。歌手としてもそうですが、俳優として人気が高く、演技に深みがあることに驚きました。同世代の俳優に中では断トツだと。あれだけの演技ができる俳優はあの世代では数少ない一人だと思います。

ユナさんに関しては当初偏見が少しありました。アイドルの彼女が果たしてこの役を演じられるか疑問でした。でも会ってみて、今の彼女は演技に対する葛藤や欲望がとても強かったので感心したんです。演技をやり遂げたい!という強い意志が最高潮にまで達しているようでした。私は彼女からそれをとても強く感じました。
昨日も彼女に “何も演じるな”と言いました。彼女は今まで歌も演技も常に全力投球で努力家です。それらの結果はきちんと残ってるでしょう?だから、「変に気張って演じようとせず、ありのままを出せばいい、私の脚本がそれについていくから」と言いました。
彼女から生まれたキャラクター、サン。彼女のありのままの演技に監督が絶賛しています。私から彼女に助言はせず、唯一頼むことは、“撮影を楽しんで!”これだけです。撮影が終わり打ち上げの時やSNSにアップするとき、“この作品、撮影が本当に楽しかった”こう言ってもらえたらうれしいですね。


――今まで悪役やアクが強い役が多かったホン・ジョンヒョンさんについては?

彼が演じる役柄ですが、キャストがなかなか決まらず何度もオーディションを繰り返し行って、メインキャストの中では一番最後に決まりました。
ホン・ジョンヒョンさんについては、今まで悪役が多くキャラが強すぎるのではと思っていました。彼に会う前に動画サイトなどで彼の作品を見て研究しました。若さゆえ肩の力を抜いた演技は彼にはまだ無理かなと思っていました。
でも監督が前作(『ママ~最後の贈りもの~』)で彼と一緒だったこともあり、彼を推薦してきたんです。監督曰く、彼は本来の姿を出しきれていない。まだ自分探しをしている最中なんだよと。実際会ってみたら監督の言葉の意味がよく分かりました。とてもシャイで繊細な感じでした。
私から彼に言ったことは、「肩の力を抜いてリラックスして演技してみてください」。すると彼の顔が仏のように柔和な顔つきになりました。7話では今まで見られなかった彼の悲しい表情がご覧いただけると思います。


――本作は事前製作だと伺いましたが、その点についてお聞かせください。

この作品は事前製作だと言われていますが、全くもって違いますね(笑)。私が理想と思う事前製作とは、20話全話すべて執筆した後、キャストが決まり、俳優のコンディションや現場の状況などを考慮したうえで修正した台本を俳優に渡すということです。しかし、そんなことは執筆活動をし始めて1度もできた試しがありません(笑)。死ぬ前までに一度くらいはしてみたいですね。


――放送中のドラマは視聴者の反響などを見て、意見などを取り入れながら執筆することもあると思いますが、放送前に執筆となるとそれすらもなく、色々と大変なのでは?

リアルタイムで執筆していると、視聴者の反応から私自身も知らなかったことに気付かされることがありますが、私は今まで視聴者の反応を見て脚本の内容を変更したことがないので、放送中でも放送前でも特に執筆するうえで変わることはありません。
以前、キム・ジョンハク監督とご一緒することが多かったのですが、彼も私と全く同じで視聴者の反応を全く見ないタイプだったので…。

私が一番怖いのは、スタッフと俳優です。作家として一番辛いのは、監督と俳優が脚本を見て、なぜここで泣かなければいけないのか?について納得してもらえないこと。そうなったら作家としては失格なのではと思います。また、自分が歳を重ねたからわかることですが、視聴率が高いドラマよりも、そこそこの視聴率(10%ぐらい)でも根強いマニアの方がついてくれるドラマの方が自分にとっては嬉しいです。10年、20年前の作品をマニアの方が覚えていてくれて、手紙をくれたりする、そういう作品を作れたら、と思っています。今思うと、視聴者の意見に流されて執筆していたら根強いマニアは生まれなかったと思います。


――監督がイム・シワンさんに禁じたことがあるようですね?

ウォン役を演じるイム・シワンさんは役作りに心配事があるみたいです。彼はこの話の中で性格がどんどん変わっていく役で最後はサイコみたいな感じになっていきます。監督は彼に、今撮影している台本以降は決して読まないでほしいと告げたみたいです。今の感情を最も大切にし、後先を考えず今の役に徹しろとアドバイスしているようです。普段ならラストまでのあらすじを理解してもらい撮影が進んでいくのですが、今回はそういかず、主人公たちが感情の赴くままに行動するので、次の展開が全く読めないようになっています。執筆している私自身もこの次がどうなるのか予想がつかないところがあります。


―― 一番の心配事は?

一番の心配事は、俳優たちの体力がもつかどうかです。予想以上にエネルギーを使う作品であることから、途中で全てのエネルギーを使い切ってしまいそうで…。私も本来なら決まった時間に仕事して夜には寝るのですが、今回はそうはいきません。今感じたことをすぐ執筆しないと忘れそうで、だから夜もうかうか寝ていられません。

この話は3人の男女の恋愛ものですが、顔が可愛いから好きになるとかそういうことではありません。一緒に生きていくこととはどういうことか、その価値をどう見い出すかを考えていく物語なので、3人の緊張感がとても心地よいし、それを作り上げていく過程に面白みを感じています。

この3人のバランスをどう保っていくかがとても大事で、どちらかにウェイトが傾いたりせず、まるでゴムを3つの方向に引っ張っているような均等感をどう保つかがこの話のカギを握ります。誰かが悪役になり、嫌われたりするのではなく、3人に対して視聴者が相手の立場を理解し共感がもてるドラマに作り上げることが大事ですね。


――本作のキーワードでもある“ブロマンス”ですが、視聴者がドキドキするようなシチュエーションなどは盛りこまれているのでしょうか?

二人の男性と一人の女性の愛。しかしそれは男女としてではなく、一人の人間として描かれます。今までの男女の恋愛によく見られる、好きな異性を自分のものにする、といった展開ではなく、人としてどう愛するのかを重点に置き展開する予定です。したがって人を愛するということが美しく、かつ、痛みを伴うもの、また、視聴者の皆様が自分はこのような愛を経験したことがあっただろうかということを深く感じさせられる内容となっています。

アシスタント作家たちには、原作小説のストーリラインだけを説明してくれればいいと言ってます。
今回執筆作業のやり方が、つどつど会議して作り上げていくというものなので、あまり原作の影響を受けてしまうと描けないのです。小説は歴史に忠実だと聞いたのですが、ドラマは、原作とはまた少し違ったテイストで描かれると思います。人間関係などは同じで、歴史にない話はできませんけどね。
さいわい『シンイ‐信義‐』で高麗時代の勉強をしていたので助かっています。


――忠宣王(=ワン・ウォン)が主人公のドラマは今回が初めてだと思います。ワン・ウォンの魅力とは?

調べてわかったのですが、とてつもない人物だなと。一人の人物の中にありとあらゆるものが入り混じっているんです。聡明で、愛読家であり、百姓を救うため新たな施策を考案するなどの一面、その反面、凶暴でクレイジーな一面も持ち合わせています。資料を調べれば調べるほど、新たな一面が垣間見られて、研究しがいがある人物です。私は本作では彼の人生すべてを描くのではなく、頂点に上りつめたところまでを描こうと思います。しかし権力を握ったとたん、近くにいた側近や友達がすべて去っていってしまうんです。そう思うとなんだか可愛そうな人生ですね。


――イム・シワンと忠宣王(=ワン・ウォン)のシンクロ率は?

私が忠宣王をよく知らないこともあり、イム・シワンさんに合う忠宣王のキャラクターを作り出しています。
私は彼のいろいろな面を引き出すためにわざと気に障ることを言ったりして彼の反応を見ているのですが、その時に見せる彼の表情や態度には目を見張るものがあります。俳優としてのエネルギーが満ちあふれていて彼の魅了に引き込まれてしまいます。
ある時、共演者のユナさんの衣装コーディネーターさんに、「ジョンヒョンとシワン、ユナの相手にどっちがいいと思う?」と聞いたときのシワンさんのサッと変わった鋭い目つき。そして「ワン・ウォン(イム・シワン)」と彼女が答えた時の反応など、満ち溢れるエネルギーを彼から感じ取り、さすが感性が鋭いなと感じました。


――リンの魅力について教えてください。

そうですね。三角関係ですので…。今は何とも言えないですね。以前ユナさんに冗談で、視聴者の反応は、もしかしてこの三角関係からユナさんが抜けたらいいのでは?二人の方がお似合いなのではと言うかもねと。リンは決して三角関係のサブ的な存在ではなく、必要不可欠な存在になります。先ほども言いましたがみなさんが思っている怖くてアクが強い役が多いホン・ジョンヒョンさんではなく、彼が持つ本来のキャラクターそのままを演じれば、いままでとは全く違ったホン・ジョンヒョンさんが見られますし、そんな彼が演じるリンはとても魅力的でしょう。リンはどちらかといえば草食系(癒し系)、妖精のエルフみたいな感じでしょうか。計算することを知らない純真無垢な青年ですね。とは言っても可愛い感じではありませんよ(笑)。

 

ソン・ジナ脚本家の話を聞けば聞くほど、濃密な3人の人間関係と心理描写が緊張感をもって描かれそうで、『王は愛する』への期待が大きく膨らみました。

『王は愛する』はMBCで7月放送予定です。

 

2017.5.30 執筆

 

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