映画解説

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タイトル 風の丘を越えて ソピョンジェ(西便制)
韓国公開年 1993年
出演者 キム・ミョンゴン オ・ジョンヘ キム・ギュチョル
監督 イム・グォンテク

【 映画紹介 】

『風の丘を越えてーソピョンジェ(西便制)』は韓国の伝統芸能パンソリに携わる旅芸人一家の、芸にかける生き様を描き出した作品です。

題名の「西便制」は「東便制(ドンピョンジェ)」と並ぶパンソリの一流派のことです。韓国全土で300万人を越える観客動員数を記録した大ヒット作品です。今でこそ韓国映

画は国民に愛され300万人を突破する映画は数々出てくるようになりましたが、公開された93年当時、それほどの大ヒットは初めてのことでした。この作品をきっかけにして伝統芸能復興の動きが盛り上がったり、若者の間にパンソリブームが起きました。

舞台は1940年代から60年代。貧しいパンソリ芸人が孤児に厳しく芸を仕込みながら家族のような絆で旅回りをしていくのですが、パンソリを極めようとする、すさまじいまでの芸人魂が韓国の田舎の自然を背景にひしひしと伝わってきます。

韓国の文化を語るとき‘恨(ハン)’という言葉がよく遣われますが、この作品はその韓国人のハンがテーマになっています。

主演の旅芸人を演じるキム・ミョンゴンは映画、舞台で活躍する俳優ですが、実際にもパンソリの名手として知られていますし、少女を演じたオ・ジョンヘもやはりパンソリの歌い手で、二人とも劇中で吹き替え無しで見事な歌声を披露しています。

監督は2年前、『酔画仙』でカンヌ映画祭監督賞を受賞した韓国映画界が誇る名匠イム・グォンテク監督です。

これを見ずして韓国映画を語るなかれとも言われる名作中の名作です。

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最後、様々なことを乗り越えて歌い上げるパンソリの歌声は圧巻でした。また途中でつらい旅のなか、唯一3人が楽しそうに歌いながら歩く場面で流れるパンソリのリズムが、印象的なこのシーンと共にいつまでも頭に残ります。
イム・グォンテク監督はその後もパンソリの調べに乗って全編を描いた『春香伝』も撮っています。今日の『風の丘を越えて』でパンソリに興味が出たという方は是非その作品もご覧になってみてはいかがでしょうか。