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キム・ジェウォン

コラム① 花がほころぶような殺人微笑

笑顔の魅力的な男優が多い韓国にあってもこの人の微笑みはまた特別なものがある。目を細めてまぶしそうに微笑む甘やかな笑顔は、まるで花がほころぶような輝きを放ち、「殺人微笑=キラースマイル」の異名を取っている。

なんといっても『ロマンス』で、年上の女性教師と恋を育んでいく高校生役が魅力全開だった。外見だけを見れば女の子みたいにかわいいだけという感じがして、正直最初は特に関心も向かなかったのだが、ドラマの中の彼の姿を見始めたら、背が高いし、積極的な、程よいふてぶてしさがあって、声も低音で、男らしい好青年。しかもヒョロンとしているようでいてスポーツで鍛えた体は骨太だ。そうしたギャップにすっかり心をつかまれてしまった。6歳年上の先生といてもしっかりと男の人になっていたので、違和感なくラブロマンスを楽しむことができた。

しかも役どころというのが、裕福な家だったのに父親の自殺で貧乏のどん底に追い込まれ、長男だからとバイトに精を出しながら学校にも通うという頑張り屋。そんな苦しい状況でも一目ぼれした先生のことを一途に思い続けていく。

怖いもの知らずで、逆境にもくじけず、でもやるせない。そうした役がキム・ジェウォンの華やかな外見も手伝ってこの上なく素敵に消化され、一人の青年の成長物語と共に、ひたむきな恋心が後味のすがすがしいドラマになっていた。

このドラマで人気急上昇したキム・ジェウォンにはオファーが続き、なんと連続ドラマを同時にこなすという掛け持ちをすることにもなった。

ただでさえ過酷な韓国ドラマの制作現場なのに、それぞれで主役級の役をこなすというのはかなり大変で、寝る間もないほどの忙しさにファンからも心配の声が上がるほどだった。

チャン・ナラ、キム・レウォンら若手俳優たちと共演した『いとしのパッチィ』では御曹司の役。スーツを着て眼鏡をかけて、ちょっとインテリ風になって登場。これはこれでナイーブな感じがよかったけれど、本人としては立ち居振る舞いに気をつけなければならない御曹司役はちょっと大変だったそうだ。

そうしてもうひとつのドラマ『ライバル』ではチンピラ男に扮して恋する女を見守る男の純情を切なく演じて見せた。

2作品では髪型も雰囲気も極端なぐらい変えて登場し、頑張ってるなあーと感心した。

3本もの作品で大活躍し、番組のMCやCFにも引っ張りだこ。街のいたるところに彼の微笑む写真が張り出されるようになるなど、2001年にドラマデビューしたばかりの新人が2002年、一気にドラマ界を席巻したのである。

しかし、そんな人気者の彼も、翌年充電を経て出演した『酒の国』では、物語、キャラクター設定などに難点があり、途中で脚本家も変わってしまうほどの迷走を見せ、残念な結果に終わってしまった。ここが韓国芸能界の厳しいところだ。

だが、デビュー映画となるロマンチィック・ラブコメディー『いとしのサガジ』で金持ちのボンボン大学生に扮してスマッシュヒットを飛ばし、巻き返しを図った。

キム・ジェウォンは肌が白いだけに、ちょっと油断するとぽっちゃりと見えてしまう。『いとしのサガジ』の中でも、キム・ジェウォンの水着姿が女性たちを悩殺するという場面があるが、引き締まった体の韓国俳優たちを多く見ている目にとっては、冷静に見ても「うーん、これは微妙な裸かも…」と感じてしまった。

2004年は韓国・中国の修交10周年記念企画のドラマ『北京わが愛』を撮影中で、この春中国全土で放送予定。キラースマイルが中国大陸をとりこにする日も近い。

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より
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コラム② 第2の俳優人生を歩み始めたキム・ジェウォン

元祖‘殺人の微笑み’といえば、キム・ジェウォンだ。彼の人気が大ブレイクしたのが韓流ブームよりちょっと早い2002年のドラマ『ロマンス』で、ここ5年は軍に入隊していたこともあり韓国のドラマに出ていなかったので、最近の韓流ファンにはあまりなじみがないかもしれない。『ロマンス』では女性教師に一直線に思いをぶつけていく高校生を演じ、こちらの顔がとろけてしまいそうななんともいえない笑顔と、青年らしいふてぶてしさも持ちあわせていて、思いがけない低音の声も魅力的だった。『ファン・ジニ』(06年)にも大人の愛のかたちを表現する役で出演しているが、それ以降お茶の間から遠ざかっていた。そんな彼が今年1月に軍を除隊して戻ってきた。2月には大阪で、そして8月には東京で軍除隊後初のファンミーティングを行ったのだが、全体にすごくスリムになって、大人びた雰囲気が漂っていた。私はずいぶん以前に何度か彼のイベントの司会やインタビューをしたことがあるのだが、当時から、どんなに大変な状況でもニコニコと穏やかな笑顔を絶やさない姿やものの考え方、行動などを見て、「若いのに人間の出来た人だな」と感動する場面が多かったのだが、それでも本人いわく、入隊前は人間として深さがなかったのだという。それで軍にいる間に本を300冊読んだり、軍の中でいろんな人たちと付き合うことで成長したのだと語っていた。また、以前はドラマのスタッフにお酒好きが多いと自分も飲んでしまうという、周囲の状況に流され易いタイプだったそうだが、そんな自分を「前はプロ意識に欠けていた」として、軍を除隊後はダイエットで8~9キロ減量し、「プロになりました」と笑いながら語っていた。

良い人なのに、デビューしてすぐにブレイクした後はなかなか自身を大きく打ち出せる作品に巡り合えていなくて残念だなと思っていたが、除隊後にすぐ主演したドラマ『私の心が聞こえる?』では、耳に障害を持つ御曹司を演じて、彼の演技が大好評。彼の第2の俳優人生が華やかに幕を開けたのを嬉しく思った。

 

※2011年12月号「私の時間」(ヒロ・コミュニケーションズ)より
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