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チョ・インソン

たまご形の顔につりあがった眼に整った赤い唇のウルトラマン顔。韓国の人にはエキゾチックな顔に映るようで、ついたあだ名がアラブの王子だ。

187センチの長身で、腰まわりというか、体のラインが細い流線型をしているのが、モード系体型というか、他の俳優とちょっと違う。きれいな顔立ちだが、‘花美男’という表現以上に、非常に独特な個性を放つ新世代スターだ。

『ニューノンストップ』という今や若手スターの登竜門のようなシチュエーションコメディーに純情男として出演し、パク・キョンニムという日本で言う久本雅美のようなコメディータレントと相思相愛になる不似合いなカップルで話題になった。

チョ・インソンが大きく飛躍するきっかけになった作品が『ピアノ』。ここで幼くして父母を亡くした姉弟の弟の役を演じている。再婚した義理の父親のせいで母親が死んだとの思いがぬぐえず、憎しみ、怒りのぶつけどころを求めてさまよっている若き魂。義理の父の愛を感じていながらも心ではそれを受け入れられず、腹いせにやくざの世界に引き込まれていくという退廃的な役どころだ。

常にイラついて顔は憤怒に満ちている。‘気’を吐き出すような強烈な激しさがあって、ひきつけられずにはおられないエキセントリックな魅力に満ちていた。

当初『ニューノンストップ』でのかわいい男の子というキャラクターイメージが強かったため、内面に深い悲しみを抱いたタフな役柄を任せて大丈夫かという心配の声があったというが、背筋が寒くなるような目つきという評価を得るほどに、そうした先入観を見事に裏切る演技を見せた。

一転『星を射る』では、細い目をさらに細めてフニャラーとした笑みをニコニコと浮かべてしまう、気のよさそうなうぶな青年として登場。俳優を目指してチョン・ドヨン演じるマネージャーと頑張っていくうちに年上のドヨンと恋に落ちていく。ひどい目にあっても相手を憎まず情にもろい守ってあげたくなる弟のような感じ。

このあまりの変化ぶりにまたまた驚かされた。だって全くの別人なのだ。若いのに1年のうちにここまで違うキャラクターを演じ分けられる実力に将来性を感じざるを得ない。実際には『星を射る』でのキャラクターが本人にとても似ているそうだ。似ているだけに演技するのがむしろ大変だったという。

2004年高視聴率を取った『バリでの出来事』で演じたのは遊び人の財閥2世。モデルのような派手な身なりで、金持ち特有のシニカルさを身につけた、一筋縄ではいかない複雑な役どころだ。好きな女性を二人とも同じ男と取り合うという屈折した愛情のもつれる4角関係に陥り、激情的でエキセントリックな部分が前面に出てくる男性像だった。

そうしたドラマでの強烈な印象とは打って変わって映画では心優しい好青年が続いている。

『マドレーヌ』は初の主演映画。昔の同級生と再会し、1か月だけの契約交際をする若い男女のゆったりとしたラブストーリーだ。共演のシン・ミナとは、雑誌モデル時代からの仲間で事務所も同じということで、息のあったところを見せていた。

母と娘の初恋を描いた『ラブストーリー』でも、娘が思いを寄せる大学の先輩役で出演。演劇部の部長らしく、周囲を引っ張る頼りがいと、不思議な運命を信じるロマンチィックな心を持つ青年になっていた。

『南男北女』では、もう少し遊び人の学生に扮し、北朝鮮の学生たちと共同で発掘調査を行ううちに恋が芽生えて愛に真剣になっていくというラブコメディーを楽しく演じていた。

 

※2004年7月発刊「韓国はドラマチック2」(東洋経済新報社)より
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