取材レポ・コラム
『ほえる犬は噛まない』の個性派女優ペ・ドゥナ
オリコングループ発行「月刊デ・ビュー」2003年9月号より(※掲載元の許可を得て載せています)
これまでの日本では『シュリ』『JSA』といった南北分断の悲劇を取り扱った作品のヒットが目立っていた。そのため韓国映画といえば、劇的で、濃いというイメージがあるかもしれないが、そうした韓国色の強い作品の一方で、今年初めに公開された『猟奇的な彼女』のように、特別韓国らしさにとらわれない、等身大の男女のラブコメディーといった、日常を面白く描いた作品も続々紹介され始めている。
その中で、また一味違った魅力を放つ作品がこの10月に公開予定の『ほえる犬は噛まない』だ。ごく普通の人間たちが持つささやかな望みや鬱憤を、団地で起きた犬失踪事件を媒介にしながらあぶり出したブラックコメディーとでも言おうか。こうした作品を見るにつけ、韓国映画の可能性はまだまだ広いということが強く感じられる。
とらえどころのない不思議な魅力で映画界からのラブコールが絶えない若手女優が『ほえる犬は噛まない』のペ・ドゥナだ。実は演技よりも演出や評論に興味があって大学の演劇映画科を受験。その入学直前に街で買い物をしていたところをファッションブランドのモデルにスカウトされ芸能界入りしたというラッキーガールだ。どこか不機嫌な顔つきの中性的な少女という異色の存在感で10代からの人気が沸騰した。そんな彼女の女優にかける意気込みを聞いた。
デビュー以降は好奇心で仕事をしていたという彼女が、『ほえる犬は噛まない』を機に女優に目覚めたという。
「それまでの私はいわゆるアイドルスターで、新世代のシンボルのような存在だったんですが、そんな自分のイメージを打ち壊し、俳優というイメージを得られたということが大きかったですし、映画俳優としての心構えを得ました」
実はお母さんが演劇の女優さんで、母親からのアドバイスを肝に銘じているという。
「常に自信を持って、ひどい非難を受けてもそれに胸を痛めないこと。またテクニックを考えるよりも心を動かすような演技を考えなさいということです」
『ほえる犬は噛まない』では共演のイ・ソンジェから、「化粧っ気もなしに壊れた演技にも果敢に挑戦して感心した」、と言わしめ、またその後の作品では若手の人気スターには珍しくベッドシーンにも取り組んでいる。
「演技をする上で何も恐れていることはありません。自分がどう写るかということよりも、演技について正直に、役割にあった演技をしようという気持ちのほうが強いんだと思います。私自身は、韓国人が好む、お人形のような、か弱い美しい女性という万人の恋人タイプにはなりたくないと思ってます」
この明快な潔さが彼女の魅力なのだ。
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